4,000冊の紙のサブカルテが“未来の不安”になっていた
宮城県仙台市北部・泉ニュータウン。
落ち着いた住宅街の一角で開業10年を迎えた 大久保歯科 は、診療チェア6台・医師3名・スタッフ11名で、近隣住民の幅広いニーズに応える総合歯科です。
院内のアンティーク調の空間には柔らかな光が入り、患者が自然とリラックスできる雰囲気が漂います。しかしその裏で、長年の課題が院内のオペレーションを圧迫していました。
診療日数の増加とともに、院内に積み上がっていった紙カルテは 約4,000冊。厚みのあるカルテは探しにくく、戻す手間も大きい。災害の多い地域で紙のまま保管しておくリスク──そうした複数の不安が重なり、
「今のうちに運用を変えなければ未来はもっと大変になる」
と院長先生・大久保宏彌先生は感じていたと言います。
一方で、スタッフの業務は多岐にわたり、いきなりのデジタル化には抵抗もありました。
その中で採用したのが、iPadで直感的に手書きできる MetaMoJi Dental eNote でした。
導入の決め手は「実際に使っている人の声と手軽さ」
転機は、院長先生が別業種で使われていたアプリを偶然見かけたことでした。調べていくうちに、それが歯科にも応用できる MetaMoJi Dental eNote に繋がります。
ちょうど同期の歯科医師がDental eNoteを使用しており、そのリアルな評価が導入の後押しになりました。
「直感的で使いやすい」
「紙より早く記録できることもある」
「とにかく迷わない設計になっている」
レセコンや予約システムを入れ替える必要がなく、iPadだけで導入できる手軽さも大きな決め手でした。
導入に際しては、院長先生・副院長先生だけでなく、衛生士チーフ、歯科助手の狩野志帆さん、受付スタッフが参加する DX検討チーム が立ち上がり、自院の運用に合うかどうかを慎重に検討したといいます。
最大の壁：4,000冊のサブカルテをどう移行するか
運用を変えると決めた大久保歯科は、
「紙カルテは全件スキャンし、今後の記録はすべてDental eNoteへ」という方針を掲げました。
とはいえ、1日60〜70名が来院する中でスキャン作業を進めるのは容易ではありません。スタッフからは率直に「時間が取れない」という声もありました。
ここで院長先生は、現場との“温度差”を埋めるために徹底して対話を行います。
「なぜ紙をやめたいのか」・「なぜ今やるのか」・「将来どうなるのか」等、
院長先生が丁寧に説明を重ねることで、少しずつスタッフの理解が深まり、医院全体でスキャン作業に取り組む体制が整っていきました。
まずは“メモ共有”から──小さな効率化でも確実に変わる
導入直後の約1年間は、紙カルテの代わりにDental eNoteへメモを残すだけという控えめなスタートでした。
ここで中心的な役割を果たしたのが、歯科助手の 狩野志帆さん。紙中心の運用に慣れていたスタッフが戸惑う中、狩野さんは 「まずは触って慣れていくこと」 を大切にし、院内でのメモ共有や写真貼付の実践を次々に試しながら、現場での使い方を自然に広げていきました。
- カルテを取りに行く往復がなくなる
- 紛失リスクがなくなる
- 全スタッフが同じ情報にすぐアクセスできる
こうした小さな変化を、狩野さんが現場で“実感できる形”にしDXの中核メンバーになっていったことで、「iPadにメモするだけでも便利だ」という空気が院内に浸透していきました。
写真・音声・スタンプ活用で“紙とは別物のサブカルテ”に進化
使い続けるうちに、「画面上で写真を直接貼れる」「音声ファイルのリンクも付けられる」といった機能に気づきます。よく使うスタンプやテンプレートをワンタップで呼び出せるようにし、「触れれば触れるほど効率化が進む状態」を作っていきました。
例えば、治療計画書ではレントゲン写真や口腔内写真を簡単に貼り付け、必要な情報はリストから選ぶだけで入力できます。次回予約表のテンプレートも、当日の処置内容や次回必要な項目を選択肢からタップするだけで記入できるように設計。
手書きでは時間がかかっていた場面も、「選ぶ」「押す」動作が中心になることで書き漏れ・伝達ミスが減り、受付との連携もスムーズになりました。治療終了から会計・次回予約までの流れが早まり、患者さんをチェアでお待たせする時間が短くなったことも現場の実感として大きかったそうです。
特にスタンプ機能は、他院から譲り受けたスタンプを参考に、院内の診療スタイルに合わせてツールボックスをカスタマイズ。数分かかっていた手書き作業を数秒へ短縮する効果があり、受付業務の抜け漏れや、スタッフ間の情報共有ミスを大きく減らしました。
狩野さんはこう語ります。
「使えば使うほど、“もっと効率化できる”ポイントが見えてくる。スタンプやテンプレを育てるほど、院内全体の仕事の質が揃っていく感覚がありました。」
“小さな時短の積み重ね”が、診療時間短縮と残業ゼロを実現
Dental eNoteの浸透とともに、
- 治療計画書の作成スピード向上
- 次回予約表が数タップで完成
- 書き漏れや記入ミスが減少 等、
医院全体のオペレーションが滑らかに変わっていきました。
この結果、診療終了時間は19時→18時へ、昼休憩は90分→60分へ短縮。それでも残業はほぼ発生しない。という、働き方改革につながっていきます。
これは「働く時間を減らすと生産性が落ちる」という一般的な考え方を覆す成果でした。
“紙ゼロ”が患者満足度の向上にもつながった
紙カルテがデジタルに置き換わったことで、患者情報を探す手間がなくなり、説明時にすぐ画像やメモを表示できるようになりました。
その結果、説明の一貫性が保たれ、待ち時間が短縮されることとなり、患者満足度の向上につながっています。
さらに最近では、コンサルテーションの際にAI録音ツールを併用し、会話内容の要約PDFをDental eNoteに貼り付けて管理する試みも始まっています。
「コンサル中は書くことよりも患者さんの話を聞くことに集中したい。録音データは文字起こしと要約までしてくれるので、全部を読み返す必要もなくなりました。Dental eNoteは、そうした情報を集約する“ハブ”としても使えるようになっています」と大久保先生は話します。
次の10年は「一人ひとりがイキイキと働ける場」に
「この10年は、正直なところ“無理やり走り切った”ところもありました。
次の10年は、スタッフ一人ひとりがイキイキと楽しく働ける環境を整えたい。クリニックの中で『自分にしかできない、しかも楽しく続けられる役割』を見つけてほしいし、経営者としてはそれを伸ばしていける10年にしたいと思っています」と大久保先生は語ります。
紙カルテ4,000冊をゼロにし、診療時間を1時間短縮しても残業が出ない体制を作った大久保歯科。
大掛かりなシステム入れ替えから始めなくても、Dental eNoteのようなツールで「メモ共有」や「紙カルテのデジタル化」から一歩を踏み出すことは可能です。
小さな時短の積み重ねが、働き方や診療時間を見直し、自院らしいDXを進める結果となるのではないでしょうか。
動画もご視聴可能！
大久保歯科の大久保院長先生、狩野様へのインタビューの動画も掲載しております。ぜひご覧ください。
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