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2019/01/28

パラオ共和国ベラウ国立病院における草の根医療ボランティア活動

医療法人社団 葵会 AOI国際病院 歯科口腔外科の田島聖士氏と防衛省海上自衛隊 歯科医官の小澤幹夫氏らは、2017年からパラオ共和国のベラウ国立病院を支援するために、草の根医療ボランティア活動を行っています。これはまだ個人の有志レベルで実施されている草の根のような小さな活動を意味していると彼らは言います。活動実績は2017年3月5日~10日と2018年1月7日~11日の2回ですが、事業継続拡大の意欲は高く、2019年3月に3回目の医療ボランティア活動を計画しているとのことです。

ボランティア診療の経緯

小澤氏は2016年8月に行われたパシフィック パートナーシップ16*において、パラオ共和国での医療活動計画(歯科診療支援も含む)を防衛省で担当していました。計画・調整・準備から医療活動までの全般を通じてパラオ共和国に継続的な医療支援が必要だと感じ、培ったパラオの人々との縁を繋げて個人的な医療ボランティア活動を行いたいと考えたとのことです。
田島氏は小澤氏の医療ボランティア活動の趣旨に賛同し、2017年から二人で医療ボランティア活動を開始しました。現地には多くの患者さんがいること、日本の医療従事者がパラオの困っている人に貢献できる可能性が大いにあること、そして活動を通じて喜ぶ患者さんやスタッフの笑顔を見ることにより日本での日常臨床でつい忘れてしまっているもの、医療の原点を感じることができると言います。今後、多くの日本の医療従事者に参加して貰えるように取り組みたいと考えています。2018年の第2回からAOI国際病院整形外科の吉田氏も参加しています。
(*防衛省・自衛隊は、平成19年からパシフィック パートナーシップ(PP)と呼ばれる活動に参加しています。PPは米海軍が主体となり、米国と協調関係にある国が人員を派遣して実施する医療、施設補修、文化交流活動です。1年に1度、約3ヶ月間を通して米軍艦艇又は参加国艦艇を派出して、東南アジア地域の各国を訪問します。
参考:http://www.mod.go.jp/j/publication/net/shiritai/pp/index.html 防衛省ホームページ)
【パラオ共和国】
面 積:459km²
首 都:マルキョク
人 口:21,503人(2016年)
公用語:パラオ語、英語
医 療:国内に医師は30名弱しかおらず、医師不足が問題となっている。
その他:太平洋上のミクロネシア地域島々からなる国で日本との時差はない。

【パラオの歴史】
1885年:スペイン領東インドの一部となる。
1899年:ドイツ領ニューギニアの一部となる。
1914年:日本の委任統治領になる(第一次世界大戦後のパリ講和会議により)。
1922年:コロールに「南洋庁」を設置する。
1945年:終戦により日本の統治が終了する。
1947年:国連からアメリカ合衆国の信託統治を受けることとなる。
1981年:自治政府「パラオ共和国」が発足し、内政・外交権はパラオ共和国、安全保障はアメリカ合衆国が担う。
1994年:「パラオ共和国」として独立する(主要貨幣は米ドル)。

ベラウ国立病院


▲ベラウ国立病院の正面看板

▲ベラウ国立病院の内部の様子


▲手術室

▲歯科診療室

ベラウ国立病院は、米国から出資されたコロール島にある唯一の国立病院で、パラオ国民の健康管理、緊急治療、入院治療等を行う総合病院です。病院には内科、外科、小児科、産婦人科、歯科以外のドクターがいないため、疾患によっては十分な検査や治療が受けられないという課題があり、高度な医療が必要な場合は、フィリピン(マニラ)等の海外の病院に移送しています。また、24時間の救急もオープンしており、病床数は約100で、手術室、CTを含むX線なども装備され病院内に薬局も存在します。

歯科診療部門

▲2018年のボランティア診療の様子
歯科医師4名、歯科衛生士9名、歯科技工士2名、歯科ユニット6台、デンタルX線装置はありますが、パノラマX線装置はありません。病院内にある医科用CTは歯科でも使用可能です。診療内容は主に保存修復処置と抜歯処置です。歯科技工に関しては院内で有床義歯は作製していますが、クラウン・ブリッジの作製は行っていません。しかし、希望患者で費用を支払える方にはパラオで印象を取って、フィリピンへ送り、作製し、ベラウ国立病院でセットしています。歯科診療部門に対して十分な予算手当はなされておらず、これまで米国や日本を含めた諸外国からの支援により、歯科治療が維持されています。このためパラオの人にとっては草の根のような個人的な小さなボランティアでも重要です。

ベラウ国立病院での歯科治療は、う蝕歯は抜歯せざるをえない場合が多く、日本と比較してまだ低い歯科治療水準にあることは否めません。ボランティアとして単発的に現地の患者を治療するだけでなく、継続的な活動や現地スタッフの歯科治療のレベル向上を目指すことが、パラオ国立病院の歯科治療水準を高めるために必要であると彼らは考えています。 そこで、2018年のボランティアではC2は修復治療、C3は根管治療、C4は抜歯という標準的な歯科治療を行うように啓蒙していくことを検討し、診療だけでなく現地スタッフに対する教育も行いました。

▲現地歯科医師に治療の指導を行う様子




▲現地スタッフに座学を行う様子

▲2018年はAOI国際病院整形外科の吉田拓氏も参加した

そして横浜都筑ロータリークラブからドネーションされた「ルートZX」(根管長測定器)を寄贈すると同時に、その使用方法、根管治療の方法を現地スタッフにレクチャーしました。抜歯せずに歯を保存できるような歯科診療の支援を考えているのです。
▲2017年のドネーション
横浜都筑ロータリークラブと田島氏の知り合いから寄付された歯科診療材料

▲2018年、歯科チーフにドネーションを寄贈している様子
横浜都筑ロータリークラブから根管長測定器や口腔衛生補助器具等を寄贈した
また、パラオ国民の成人の多くは、ビートルナッツ*を口に入れる習慣があり、これにより口腔衛生状況に悪影響を及ぼしていると考えられます。この習慣からの脱却が必要であり、口腔がん予防も含めた更なる口腔衛生に関する啓蒙活動が必要です。
(*ビートルナッツ:ビンロウ、ビンロウジとも呼ばれ、太平洋・アジアおよび東アフリカの一部で見られるヤシ科の植物。ビートルナッツをキンマ(コショウ科の植物)の葉にくるみ、少量の石灰と一緒に噛む。場合によっては紙タバコを混ぜることもある。噛んでいると、アルカロイドを含む種子の成分、石灰、唾液の混ざった鮮やかな赤い液が口腔内に溜まる。この赤い唾液は吐き出すのが一般的であるが、ビートルナッツには依存性があり、国際がん研究機関(IARC)はヒトに対して発癌性を示すとしている。)

▲ビートルナッツ

▲ビートルナッツを嗜む習慣がある人の口腔内写真

診療に関するテンポラリーライセンス

ベラウ国立病院での診療は、事前に日本における歯科医師免許証や大学卒業証明書等の英訳版をパラオ保健省に提出し、パラオ保健省からテンポラリーライセンスを発行してもらい診療を行っています。
▲テンポラリーライセンス証

今後について

これまでの活動でスタッフの歯科技術は確実に向上していることが伺えました。しかし、彼らが行っている内容はまだ一部に過ぎないため、今後もパラオの医療に貢献できるようなボランティア支援および医療支援態勢の整備に努力していくとのことです。
「打ち上げ花火」形式ではない継続的なボランティア活動の方策を考える必要があり、そのためにも多くの日本人医療ボランティアを募り、定期的なボランティア活動を行える支援体制を実現することが彼らの目標です。


▲2018年、パラオ保健省大臣から感謝状をいただいている様子
2019年3月に第3回の医療ボランティア活動が行われる予定で、次回以降も現地での診療、スタッフへの教育を通してパラオ共和国の医療の発展に貢献していきたいと意気込みを語りました。
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