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2013/10/24

第28回:日本歯科理工学会学術講演会から

4月26日〜27日、鶴見大学で開催された日本歯科理工学会学術講演会に出かけてみた。27件の口頭発表、87件のポスター発表があったが、その中から筆者の興味を引いたものを少し紹介することにしよう。

もっとも印象に残ったのは「デジタル画像相関法を用いた光重合型コンポジットレジンの収縮変位場評価」という九州大学応用力学研究所からの発表である。直径3 mm、深さ2 mmの牛歯の窩洞にクリアフィルトライエスボンドとクリアフィルマジェスティを用いて充填し、光照射前後でマイクロフォーカスX線CT 装置によりX 線CT画像を取得した。そのデジタル画像を解析し、レジンの硬化前後での変形方向と変位量からレジン内部の収縮挙動を調べている。その結果、レジンの自由表面付近で大きく変位していること、窩底部付近では底面から離れる方向に変位していること、変位は左右対称ではなく、変位は窩壁に向かうところと離れるところがあることなどが判明した。変位の起きかたが非対称であることから、光照射強度およびレジン充填密度の分布が不均一である可能性が示唆されている。この結果は、光重合の特徴をあまりにもよく表わしているのに驚かされた。マイクロフォーカスX線CT装置は歯や骨などの3次元構造の非破壊的観察、根管形態観察、根管充填後の封鎖評価などに活用されつつあるが、歯科領域での新たな活用法が増えたということができよう。なお、本装置を利用してシリコーンゴム印象を形状計測し、3次元モデルを構築して臨床応用しようという報告もあった。

これは“面白い”と一瞬思った発表があった。二酸化チタンは光の作用により有機物分解性や抗菌性を示すことはよく知られている。ところが、その発表で検討したリン酸チタン化合物は光遮断下でもそれらの性質を示すというのである。しかし、ポスターを見ながら発表者に質問してみると、どうもデータの解釈に問題があり、残念ながら、筆者にはこの研究は夢物語に終わりそうな気がした。新しい試みはぜひ進めてほしいのだが、データは欲目で見ることなく、慎重に解釈することが望まれると思う。

二酸化チタンは光(紫外線)が当ると、有機物の分解作用のみならず表面の親水化作用も示すが、この性質の利用を狙った発表があった。それは、付加型シリコーンゴム印象材での印象採得や石こう注入時のぬれ性向上を図ろうというものである。二酸化チタンを0.5〜5%添加すると、無添加の場合にくらべ水の接触角が有意に低下したことから、ぬれ性のよい印象材ができることが示唆されたという。この改良印象材を実際に用いての結果が楽しみではあるが、二酸化チタンが親水性を発揮するには表面に光が当る必要があり、使い方には多少工夫が必要ではないかと思われる(本発表の接触角の測定に用いた試料面は蛍光灯に多分曝されていたであろうと思う)。

ファイバーポストについていくつかの発表があり、今後まだ改良される余地がかなりありそうに感じた。現在市販されている7種類のガラスファイバーポストの構造を走査電子顕微鏡により調べた報告によると、ファイバーの太さおよびその配列の均一さはかなり多様であること、多くのポストではファイバーは直線状であるが、2種類では編んだ構造であること、1種類は中心部に金属製ワイヤーが組み込まれていること、などが明らかにされている。7種類のポストの中では、中心部に金属ワイヤーがあってファイバーが編んだ構造であるというi-TFCが最も特異なものであったが、このシステムではさらにスリーブも併用可能となっており、スリーブの効果を検討した発表もあった。漏斗状ポスト孔に対しては、ファイバーポスト併用の場合と支台築造用コンポジットレジンのみでの支台築造とで曲げ強さに差は認められなかったが、スリーブを併用することにより曲げ強さは向上しており、スリーブ併用システムでの補強効果が期待し得ることが示唆されたという。

新しいタイプのファイバーポストとして、パイプポストが提案されている。ファイバー製の中空なポストを根管に挿入後、パイプの中からレジンを充填するという新しい支台築造システムの構築をめざしている。市販のファイバーポストは、ガラスファイバーとそれを束ねるためにおもにポリエステルのマトリックスレジンで成形されているが、そのマトリックスレジンを改良しようという試みがあった。メチルメタクリレートやウレタンジメタクリレート系ポリマー、エポキシ樹脂をマトリックスレジンとし、シラン処理したガラスファイバーと組み合わせてファイバーポストを作製し、曲げ強さを測定したところ、ポリメチルメタクリレートの場合が最もすぐれていたという。

レジン添加型グラスアイオノマーセメント(RGIC)とレジンセメントをそれぞれ6種類ずつ用いてチタンを接着し、5℃と60℃の水中に各1分間ずつ交互に浸漬する熱サイクル試験を1万回行い、熱サイクル試験前後の接着強さを比較した報告があり、その中にRGICで興味あるデータがあった。すなわち、熱サイクルの負荷により、レジンセメントではすべて、RGICの半数で接着強さが低下したが、RGICの半数では接着強さが増加していたのである。この接着強さ増加の理由はまったく定かではないが、レジン部分がまずよく硬化し、その後の熱サイクル試験の過程で吸水と加熱の影響を受けてグラスアイオノマーセメントに由来する硬化反応が十分に進んだためと考えられる。

(2008年5月25日)

発表「デジタル画像相関法を用いた・・・・」についての補足:
レジンの硬化前後でデジタル画像を取得し、レジンに含まれるX線造影性フィラーを利用してその移動および全体の変形を計算する。硬化前の画像中のある小領域を選び、その領域ともっとも良い相関を示す領域を硬化後の画像より探し出し、変形量と方向を決める。この処理を全ての小領域で繰り返すことにより、全視野の変形データが得られる。

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