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2016/03/01

第117回:レジン修復と二次う蝕

第106回で臼歯のコンポジットレジン(CR)修復物の寿命についてのレビューを紹介し、失敗の主たる原因はう蝕(発生率:221/2,816、7.8%)であることを記した。二次う蝕(Secondary Caries, SCと略)の発生がレジン修復の最も大きな懸念となっており、今回は、CR修復におけるSCに焦点を当てることにした。

106回では、CR修復と伝統的なアマルガム修復をくらべると、それらの年平均失敗率(%)はそれぞれ2.2と3.0となり、CR修復でより失敗率が低い結果となっている。ところが、SC発生に関してはその関係が逆転することを表1は示している。CR修復とアマルガム修復の比較臨床試験結果であるが、いずれの場合でもCRでのSC発生率は高くなっている。しかし、12年追跡の2010年のJ Dent Resの論文をみると、患者のう蝕リスクにもよることを示すデータがある。SC発生率は、CRとアマルガムでそれぞれ、全リスクでは6.6%と5.7%、高リスクでは19.0%と14.0%、低リスクでは1.8%と3.6%となっており、低リスク患者ではCRでの発生率はかなり低くなっている。SCには患者のリスク因子を考慮することが必要であることを示唆している。

t1

Dent Materの2015年11月号にNedeljkovicらによるCRのSCに関するレビューがあり、論文末尾には1999年~2014年の論文241、0.5~17年のSC発生率のデータ252を収録した一覧表がある。SC発生率は0~44.4%となっているが、この最高値は18名すべて口腔乾燥症患者の歯頸部のものであり、この特異例を除くと、臼歯部、歯頸部、前歯部におけるSC発生率はそれぞれ0~13.7%、0~9.4%、0~8.1%となっている。SCは経時的に増加するが、5年を経過すると顕著となり、臼歯部では発生率の中央値が1.7%である。また、臼歯部、歯頸部、前歯部における、SC発生率が0%であったデータ数の割合はそれぞれ、53.9%(69/128)、81.2%(91/112)、58.3%(7/12)であり、歯頸部でのSCは少ない。1級窩洞にくらべ2級窩洞はSC発生率が高い。SC発生率の違いには、一般歯科診療所あるいは大学という研究条件が影響しているように思われ、SC発生率の中央値はそれぞれ0.83%と0%となっている。このような差は、多くの大学での研究が低う蝕リスク患者対象であること、それに大学では技術依存性の高いCR充填法を術者は修得できることが影響している可能性があるとしている。

SC発生のメカニズムは不明であり、多くの因子が関与していると考えられる。CRと歯質界面の微小ギャップおよび細菌の微小漏洩がSCの原因であると長年考えられてきた。しかし、文献的には、CRに隣接するう蝕の発生における微小漏洩の役割についてのコンセンサスはない。歯科医は一般的には依然として微小漏洩がSCの原因と考えているが、一部のう蝕学者はそれはまったく無関係と主張している。約60μmのギャップが界面の脱灰を引き起こしてう蝕に至らしめるという説もある。そうしたギャップはレジンの重合収縮および接着不良から生ずると考えられる。いろいろな議論があるとしても、SCを防ぐには修復物で窩洞をよく封鎖することが重要である。CRはアマルガムにくらべ初期の封鎖性にすぐれ、微小漏洩と窩壁病変を防げるが、アマルガムの場合には経時的に歯とアマルガム界面に腐食物が沈着して封鎖性がよくなるが、CRでは良好な封鎖を維持するのが難しくなる。

CRのSC発生抑制の戦略として次の3項目が挙げられている。(1)抗菌剤ないしは再石灰化剤の利用、(2)CR修復の封鎖性を良好に保つ工夫、(3)CRの表面性状を変える。(1)については、フッ化物利用が最も一般的であり、フッ化物含有ガラス、ストロンチウムやイッテルビウムのフッ化物のフィラーへの添加が試みられている。抗菌剤では、最もよく研究されているのは抗菌性モノマーの12-メタクリロイルオキシデシルピリジニウム臭化物(MDPB)であるが、そのSC抑制効果についての臨床での検証はできていない。(2)については、SC発生における微小漏洩の役割が疑問視されてはいるが、この目的に沿った多くの研究が行われてきている。その課題解決のため、重合収縮を減らすことおよび界面での加水分解を防ぐことが検討されている。(3)はバイオフィルム付着抑制策であるが、良好な研磨性と表面の平滑性が要点であり、おもにフィラーの工夫である。

SC発生の経時的推移を示したのが表2である。経年的にSCが増加しているがその発生率は論文でかなり異なっている。このなかでとくに注目したいのは好成績を示している30年追跡したDent Mater 2015年10月号のPallesen論文である。その術式を見ると結果には納得できるところがある。そのおよその手順は次のようである。2級窩洞形成、エナメルマージンをリン酸エッチング、水洗、エタノール乾燥、エナメルボンディング剤のScotchbond(3M)塗布、CRとして化学重合型のP10(3M)とMiradapt(J&J)を一括充填、光重合型のP30(3M)を積層充填。窩洞マージン封鎖のため、リン酸エッチング、水洗、エタノール乾燥後、Concise Enamel Bond(3M)を塗布、硬化させた。この臨床試験は1984年に開始されており、象牙質の接着はまだ初期段階にあり、リン酸エッチングを利用してエナメル質をレジンで封鎖することに徹し、それが功を奏しているように思われる。

t2

ついでに、この論文の概要を紹介しておこう。患者30人に3種のCRを33修復ずつの合計99修復を行った。結果は、30年成功率66.7%。失敗例数は、SC11、CRの破折・咬合面磨耗10、歯破折4、その他3の合計28であり、SCは失敗の39.2%を占めた。SCの64%は7人の高う蝕リスク患者であった。SCが経年的に増加するのに対し、CR破損は10例中8例が10年以内と対照的であった。30年でのP10、P30、Miradapt の失敗率はそれぞれ、32.1%、42.9%、25.0%であり、光重合型CRの成績は劣る傾向にあった。

Pallesenの論文を読んで感じたことがある。現在の臨床でのCR充填は、セルフエッチングタイプのボンディング剤と光重合レジンの利用が主流であるように思われるが、それで上記の1984年のCR充填で得られたような成績を残せるだろうかということである。やはり手間ひまかけた治療でないとムリな気がする。エナメル質にはセルフエッチングはリン酸エッチングと同等という訳にはいかず、また光重合レジンの重合にも懸念がある。

(2016年2月29日)

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