補綴物の再製作をなくす!模型の製作を正確に行うには

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デンタルハック
印象採得後に石膏を注入することは、歯科医院では、日常の業務の一つと思います。模型の精度が補綴物の精度、完成度を高めることに異論のある先生はいらっしゃらないとことと思います。今月は、作業模型の製作、特に石膏の取り扱いについて考察したいと思います。

アルジネート印象材では、ペーストタイプを使用することによりシリコン印象材に近い精度を得ることができます。しかし、作業模型を製作する際に使用する石膏は、粉と液(水)を練和を行う必要があります。石膏に関しては、付属のスプーンを使用して石膏を計量し、水を計量カップを使用して石膏を練和することが多いと思います。しかし、付属のスプーンでは、計量したスプーン内に空洞があったり、ダマになることによって正確な計量ができません。結果として、練和後にゆるいので石膏を追加したり、逆に硬くて水を追加するという目分量による作業を経験された先生も多いと思います。
電子天秤を使用して、正確な混水比を計測する
当院では、石膏の混水比を正確に計測するために『キチリ(株)デントロニクス』を使用して毎回の作業模型を製作しています。アルジネート印象と寒天印象による連合印象では、印象採得後に直ちに石膏を注入しないと模型の変形の原因となります。印象採得後に硫酸カリウムを含む溶液でアルジネートの反応を停止させます。その後に撹拌器と計量カップの風袋を調整します。必要な石膏を採取し、水を計量します。計量ポットを用いて一滴ずつ入れて測り、混水比にぴったりの値を計測することができます。
計量した石膏と水は、真空練和器を使用して40秒間タイマーを用いて計測し、練和をします。その後、バイブレーターで気泡を丁寧に抜いたのちに印象へ石膏を注入します。石膏を注入した石膏模型は、100 %の保湿下の湿箱で石膏を完全硬化させます。
補綴物の再製作をなくすには
診療において最も経営的に無駄な項目は、補綴物の再製作と再根治ではないでしょうか。再根治は、生体の問題もありやむを得ないところもありますが、補綴物に関しては、先生の診療室で十分に対策を取ることができます。

保険診療でシリコーン印象材を使用することは、コスト的にも難しいものがあると思いますが、アルジネート印象材のペーストタイプであれば十分に費用対効果が得られます。本印象のみをペーストタイプのアルジネートと寒天印象の連合印象を使用し、対顎に関しては従来の粉タイプのアルジネートでも十分かと思います。どんなに精度の高い印象材を使用しても石膏の計量がいい加減であれば、出来上がった作業模型の精度は著しく落ちるものとなります。さらに石膏模型の表面が荒れてしまうので適当な石膏模型の攪拌は精度を落とす原因の一番に上げても良いと思います。
石膏の計量を正確に行わずに、補綴物の製作を歯科技工士の先生に依頼し、補綴物の精度にクレームを言うのはやはりおかしいと思います。印象採得と作業模型は、口腔内を近似再現する唯一のアイテムです。再製作の多い先生の作業模型の精度は、院内で確認するべきポイントと思います。

ちなみに当院では、アルジネートと寒天の連合印象に関しては院内で石膏の注入を行いますが、シリコーン印象材を用いた自費の印象やインプラントといった精密印象に関しては、歯科技工士の先生にお願いしています。
デントロニクス
撹拌器の容器と計量カップを載せ、ゼロキーを押して風袋を差し引く。
デントロニクス
印象の大きさを見て石膏を適量計測する。
デントロニクス
水を石膏メーカーの指定通りの混水比で計測する。混水比20%であれば、表示数値が120(粉100%+水20%)になるまでカップに水差しを滴下する。水の温度も23℃±2(メーカーの指定温度を厳守する)
デントロニクス
石膏がダマになり、スプーンの形がわからないような計量スプーンでは、正確な計量はできないので、毎回、重量で計測する必要がある。
デントロニクス
バイブレーター(カボデンタルシステムズジャパン(株))石膏を注入する際には、必ずバイブレーターを使用する。バイブレーターの上に石膏の入った攪拌器を長時間置くと逆い気泡の原因となるので注意が必要。
デントロニクス
模型に石膏を注入し保湿箱内で硬化させる。トレーをタワーにセットし、100%に入れて石膏を硬化させる。トレータワーを用いると、石膏を盛ったトレーを場所もとらずに石膏を硬化させることができる。また、湿箱に入れることで湿度を一定に保ち、アルジネートの乾燥変形を防止できる。硬化後は、速やかに印象材から模型を撤去する。
デントロニクス
最初は、歯科メーカーから保湿箱を購入していたが、最近は、ホームセンターで食器乾燥ケースを購入して代用している。こちらの方が、安価で前開きでトレーの挿入が容易で汚れたら再購入すれば良いので便利。

口腔内と模型を近似再現する手法は、印象と石膏模型以外ありません。模型と補綴物の適合の悪い先生は、石膏模型の製作に注目すると良いと思います。

内田昌德

プロフィール

内田 昌德(うちだ よしのり)
医療法人鶴翔会 内田歯科医院
長崎大学大学院歯学研究科(口腔生理学専攻)卒業
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