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2013/10/24

第5回 数字を読もう

経営関連コラム

第5回「数字を読もう」
渡辺慶明 氏

前号までのあらすじ

開業後、経常的な経営低迷をしてきたB歯科医院では、どうして自分の医院が低迷しているのか分析できずにいた。コンサルティングを引き受けた私は、B歯科医院の院長と話をしていくうちに、院長が全く計数的な管理をしていないため、何が問題であるかを発見できずにいることがわかった。

そこで医院の実態を調べるために、アポイント帳と日計表を新たに作成しなおし、把握すべき数値を織り込むことにした。(アポイント帳と日計表は前号を参照して欲しい)

また、この2つの帳票から得られる数字をコンピュータに入力することにより、実践的な対応策を示せるようになることをアドバイスした。

データの入力

「先生ようやくソフトができあがりました。」
「楽しみですね!」私はコンピュータの電源を入れ、Windowsを立ち上げた。
「ソフトは表計算ソフトで作成しましたから、Excelを起動してください。」
「あまり、コンピュータになれていない私でも入力できますかねえ」
「大丈夫だと思いますよ。データ入力は日計表を見て数字を打ち込むだけですから。」
おさらいになるが、作成した日計表には次の項目が盛り込まれるようになっている。

「まず、該当する日付のところにカーソルをあわせてっと…」 私はEXCELを利用したソフトのデータ入力を院長先生にお教えした。みなさんにも簡単ではあるが入力例を紹介しよう。

図1が入力する画面である。入力する項目は横並びになっているので、該当する日付の右の欄にカーソルをあわせ、まず社保本人の点数、人数といった順に入力をしてゆけば良いようになっている。

「カーソルの移動は矢印キーでもtabキーでもできますから好きな方法で入力してください。」
「結構、簡単に入力できるんだね。」 私は、入力方法を教える一方、過去8ヶ月分のデータの入力を手伝うことにした。
「先生ようやく8ヶ月分の日計情報を入れ終わりましたね。」
私は、これらの数値から医院が現在どのような状況にあるのかを院長先生に説明した。

数字が読めてくる

「先生過去8ヶ月の日計表は年計に示されるような結果になっています。」
「これは、入力した日計のデータが自動的に集計された結果ですね。」

読者の皆さんは図2、図3を見ていただきたい。図2に示される平均点は表計算ソフト(EXCEL)で自動的に集計させたものである。

「数字が多くて何がなんだかよくわからないなあ」
「そうですね、数字を見慣れていないとわかりにくいですよね。でもご心配なく。グラフでわかりやすく表示できますから。」

私は大ざっぱに年計の数値を説明したあと、個別の分析に入ることにした。

治療実態がわかる平均点数

「では、具体的な中身を検討することにしましょう。まず、平均点数を見てみましょうか?」 私は平均点の推移グラフを画面に表示した。(図3を参照)

「へえ、何にも考えずに診療してたけど、平均点数って結構同じようなものなんですねえ。」
「ええ。これは、患者さん1回あたりの平均点数ですから、月末の保険点数をのべ人数で割ることにより算出できます。先生の医院で、今の診療システムやアポイントの入れ方を変えずに、先生が負担無く診療している時の平均点数は何点なのかみてみましょうか。」

読者の皆さんは図4を見ていただきたい。1月度には521点で473人を診療したことがわかる。次に3月度をみると、延べ患者数は616人に増えたが、平均点数は477点に下がってしまっている。これがB院長の治療の実態である。

次に平均点数線と延べ患者数の交差する点に注意してみよう。5月の交点に目を向けると、その点数はおおよそ510点である。この交差する点数が現在のB院長の技量(治療技術+スタッフ全員の働き)において、治療時間と治療内容とが最もバランスがとれていると推測できる点数なのである。そこでB院長に尋ねてみた。

「先生、1月は473人を診療していて、その平均点は521点です。でも、3月の616人を診療した時の平均点は477点に下がっています。それはなぜでしょうか?」
「それはやっぱり患者数が少ない時には、主訴の治療だけでなく、その他のちょっとした治療をおこなったりしていますが、患者数が増えれば、主訴の治療もなるべく短くし、多くの患者さんを診ようとしますから、当然1回あたりの平均点数は落ちてしまいます。」
「わかりました。それでは1月と5月に患者数と平均点が交差している点があり、その点数は510点なのですが先生が患者さんを治療する時に、ある程度満足のいく治療ができる点数と一致していますか?」
「それは難しい質問ですね。本来、私は主訴の治療だけでなく、患者さんの口腔内全体を考えた治療をしたいと思っていますので、それが510点の治療一致するとはいちがいには言えませんが、1回にその程度の治療はしたいと思いますね。」
「ということは510点以下の治療は忙しすぎてちょっと不満な治療ということですね。それでは、この510点の平均点を維持しながら延べ患者数を増やす方法を考えましょう。」

いかにして平均点数を保ちつつ、延べ患者を増やしたら良いのだろうか?

このためには、効率のよい診療を目指したシステムを作ることである。つまり当日の診療計画を立て、事前に準備できるものは準備し、スタッフと共同して重複した処置が入らないなど、同じ時間帯で最も効率的なアポイントの埋め方などを検討してゆかなくてはならない。また、無断キャンセルなどの空き時間をできるだけなくす工夫も必要になってくる。

そこで私は、いくつかの問題点を指摘した。

指摘された問題点

これらの指摘すべては、数値からわかったことである。つまり、この計数管理がおこなわれていなければ、自分の診療はどのようなもので、今後どうのようにすればよいのかがわからず、結果どうすることもできない。ことほど左様に数値は重要なものなのである。
「渡辺さんにこう言われると思い当たることが結構ありますね。うちでは確かに午前中はヒマですし、1日の診療計画などもたてていません。」
「診療計画はこのあいだ作成したアポ帳を院内に掲示するだけでいいんです。そのために、次回の処置を記入しているのですから。」
「ああ、そうか。早速明日からやってみます。」
「では次に、患者さんの動向をみてみましょうか?」

患者来院数からわかること

私は、患者来院数の推移グラフを表示した。(図5)

「まず、新患数から見てみましょう。3月が45人と多いですね、通常の月の倍くらいになっています。でも、7月・8月は少なくなっていますね。」
「ほんとですね。」
「今回は去年のデータがないから何ともいえませんが、この変動は季節的なものかもしれません。例えば、3月は入学や転勤といった大きな行事がありますからそういったものが影響しているかもしれません。でも気になるのは7・8月以降の落ち込みです。6月になにかありましたか?」
「6月ですか?えーと、スタッフが1名やめたくらいですか?」
「やめた理由は何でしょうか?」
「他のスタッフとうまくいかなかったようです。」
「すると、残ったスタッフの士気が落ちているかもしれませんねえ。それが影響しているかもしれませんが、7・8月は夏休みということもありますからもう少し様子を見た方がいいでしょう。」
「ええ。」

このように、患者来院数の推移からも多くのことが予測できる。まず第一にその医院の場所における患者さんの季節変動。第二に、再初診からみた患者の定着度。第三に医院の出来事の反映。

第一の季節変動は必ずといっていいほど同じような曲線を描く。これは患者さんが来院しやすい要素が季節に起因しているからである。したがって、医院としては新患の増える月にはそれに備えた体制を作っておく必要がある。逆に、福利厚生のための慰安旅行や院内研修で医院を休みにする必要があるならば新患数の低い月に設定すべきだ。また、新患数が増え続けていることはその開業場所マーケットの成長を意味している。どの地域でも新患は必ず生まれる。なぜなら新しい出生があるからで、その意味ではマーケットが縮小することはないといえる。しかし、高齢者の多い場所では死亡による患者の減少も避けれないし、新たな医院ができれば当然パイ(患者)の奪い合いになり、単純に考えれば、マーケットは1/2になる。つまり、常に新患数をウオッチすることでマーケットの状況を把握しておく必要があるのだ。

第二の患者定着度はとても大切で、再初診の患者さんは医院にとって最も有効な広告宣伝媒体となる。定着患者の場合は、誰かに「近くにいい歯科医院は無いか?」と聞かれたら必ず今自分が通っている医院の名をあげてくれる。こんなに力強い味方はいない。是非とも再初診数を減らさない工夫をすべきではないだろうか?

第三の医院の出来事の反映は、医院の人事的変動や、スタッフの士気などの要因が影響している。たとえば、職場環境が悪かったり、人間関係がキクシャクしていたりしたら、スタッフは笑顔で患者さんを迎え入れることができるだろうか?こうしたことも口コミを介して患者さんの来院に影響してしまうものなのだ。

このように、患者来院数に常に目を向け、冷静に自分の医院の置かれた状況を把握していこう。

「次に、キャンセルの状況を見てみましょうか?」

私は、マウスを操作してキャンセル状況のグラフを示した。

「キャンセル全体としては、平均値は11.5%ですから一般の医院よりも低いといえます。私の調査ではだいたい15%前後が多いようです。中には20%を越える場合もありますがそのような医院では、まず患者さんのフォローがされていませんね。」
「無断キャンセルと電話キャンセルの比率はどうですか?」
「無断キャンセルが5%以内であれば、特に問題はないと思います。過去に無断キャンセルが非常に高い医院がありましたが、その医院では患者さんに治療の説明や次回の予定などを全く話していませんでした。先生のところはこのままキャンセルの状況を見守り、特に15%を越えることがないように注意してゆけばよいと思います。」

電話キャンセルはそんなに気にする必要はないと私は思っている。なぜなら、電話をしてきた時に、次回のアポイントを約束している例がほとんどだからだ。これに対し、無断キャンセルは最終的に中断患者となってしまう場合が多い。だから、無断キャンセルの率は常に5%以内になるよう努力する必要がある。具体的には、次回の約束をとるときに次回処置の内容や、それに要する時間、期間があいてしまった時のデメリットなど患者さんの身になって説明してあげることだ。場合によっては書面にして渡してあげるのもよい。それでも来ない患者はどうしたらいいのか?それでも来ない患者さんは治療に時間がとられるよりも他にもっと重要なことがあるのであろう。そこまでケアすると患者さんにとってもよけいなお世話になってしまうのではないかと私は思う。

曜日別の把握

次に曜日別の新患来院構成比の分析に入ろう。

図6に示されるようにこのソフトでは何曜日に新患がどれくらい来院しているかを集計している。これは、曜日によってどうも新患が多い曜日があるとB院長から指摘されたためだ。

「先生の要望に答え、曜日別の新患数を把握できるようにしましたが、ご覧になっていかがですか?」
「うーん、やっぱり水曜日と木曜日に新患が多いんだなあ。実は水・木の日のスタッフの残業が多いですよ。洗い物が残っていたりして結構遅くなってる。」
「今後もこの傾向が続くようであれば、水・木のアルバイトを雇ったらどうですか?」
「そうですね、検討してみます。」

新患の多い日はどの医院も計画に狂いが生じる。確かに、新患は何時にくるかわからないし、何の処置をするのか診てみるまで検討がつかないのが普通だから。B院長は何となく感じていたことを、数値で把握することにより明確にすることができたわけだ。つまり、自分が感覚的にとらえていることに対し、仮説を立て、数値で裏づけをとったことになる。

このような思考をもてば今一番先に解決しなくてはならない問題が何であり、解決のために自分はなにができるのかがはっきりしてくる。こうした意味でも数値をきちんと管理していくことに大きな意味があるのだ。

「正直言って、最初に計数的な管理と聞いたとき、なんだか非人間的な売上至上主義のような感じがしていましたが、数字を管理することによって現在の治療の実態や患者さんの実態を、感覚でなく正確に把握することができるということがよく分かりました。」

「そうなんです。実態を正確に把握し、問題点が分かったら、患者さんのために何をすればその問題が解決できるのかを考えていけば、患者に喜ばれ、自分も納得がいく治療ができるようになり好循環が生まれます。この好循環を作っていくことが大切なんです。」

読者の皆さんも是非、計数管理に取り組んでみたらどうだろうか?そして、その数字から読みとれるものを予測し、将来に備えることを考えていただきたい。

 株式会社インサイト

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