BIO tech2018 第17回バイオ・ライフサイエンス研究展 レポート
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6月27日~29日に東京ビックサイトでBIO tech 2018 第17回バイオ・ライフサイエンス研究展(主催:リード エクシビション ジャパン株式会社)が開催された。BIO tech2018は、バイオ・ライフサイエンスに特化した専門技術展/国際会議で創薬・再生医療・ゲノム・診断機器などのバイオ研究・技術を支える【研究機器】【試薬】【分析装置】【受託サービス】【創薬シーズ】などが一堂に出展されており、【iPS創薬】【がんゲノム医療】【人工知能(AI)】などをテーマとする全180講演のセミナーを同時開催していた。
同時に4つの展示会「バイオ医薬EXPO」「インターフェックス ジャパン」「医薬品原料 国際展」「ドリンク ジャパン」が開催されていたが、本研究展では約350社が出展し、大学・企業の研究者・技術者56,000名が参加。
数多くあるテーマの中から今回開催のアカデミックフォーラム セミナーにて、下記の講演内容に注目した。
岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授 高柴正悟 氏
口腔感染症と全身の健康の関係に注目が集まりつつある昨今、超高齢社会の到来に伴う口腔感染症の予防は非常に重要視されている。 現時点での主な口腔感染症の予防法は、感染源となっているバイオフィルム(デンタルプラーク)の機械的除去であり、要介護高齢者などには十分に対応できていない。応用されている化学的予防法としては抗菌剤が用いられているが、人体への副作用などの問題点も多いため、生体に安全で抗菌作用を持つ物質のニーズが高まっている。この実態を踏まえて日常の食事から口腔細菌感染症を制御し得るパウダー形態という前提条件で機能性食品を探索し、その特性を調べた。 この結果、タイムやショウガでは終濃度が10mg/mL以上で口腔バイオフィルム形成の初期に係るストレプトコッカスミュータンス菌の増殖を抑制する効果が得られたが、大豆発酵物では終濃度が1mg/mLという低濃度で菌の増殖抑制効果があることがわかり、大豆発酵パウダーは、口腔細菌感染症を制御する機能性食品となる可能性が示唆された。 抗菌作用をもつ複数の食材から検証した今回の結果は、現在、問題視されている人体への副作用、細菌の薬剤耐性、などによる長期使用の困難さという側面からみても、利点は大きいものと思われる。
高知大学 医学部先端医療学推進センター 特任教授 株式会社ナノカム代表取締役 城武昇一 氏
今回注目した「抗菌性ナノ粒子」は、耐性菌を生み出さず、環境にやさしい。手のひらでは水で手を洗っても最長6時間以上、モノに対して1週間以上の抗菌効果を持続できる検証ができており、in vitro安全性試験において目や口に入っても安全という特徴をもつ。
さらに黄色ブドウ球菌や大腸菌などの細菌に加えて、多剤耐性菌に対して抗菌活性を示す。
この「抗菌ナノ粒子」は、細胞壁の糖鎖ペプチド表層と親和性が高く、「抗菌ナノ粒子」が吸着した局所部分に対して細胞壁の合成を阻害する。吸着していない面で細胞壁は成長するが、吸着面(接合局所)とのアンバランスな成長により、内圧を保持できず、菌が自己融解を起こす。薬剤耐性菌も破裂するため、耐性菌を生み出さない。
汗などに含まれる分解酵素で分解されるまで何度でも融菌作用が継続するため、水で洗っても手のひらで最長6時間以上、抗菌効果が持続できてしまう。保存に関しても室温で3年半、抗菌活性が変わらず取り扱いしやすい。既に購入できる製品もあるが、生体・環境に対する安全性の高さからもネイルの防菌、化粧ローションのオールフリー化商品が新発売され、幅広い用途の商品開発が進んでいる。詳細な関連情報は、こちら
骨や歯の主要な無機成分(ミネラル)であるハイドロキシアパタイトの生体分子吸着性に着目し、ハイドロキシアパタイトをナノオーダーで人工合成した材料「ナノアパタイト」を基盤とした新しいタイプの生体組織用接着材を開発した。
この「ナノアパタイト」は、ハイドロキシアパタイトの粒子形態や粒子隙間の大きさをナノオーダーで制御したものであり、軟組織と即時的に接着できる特性を示し、医療現場での利用されているフィブリン系接着材と比べて2倍以上の高い接着力を示す。この接着メカニズムの中では、生体分子の吸着、吸水による濃縮、液架橋の形成などがポイントになる。
「ナノアパタイト」をコーティングした生体吸収性高分子フィルムも開発されており、生体組織との接触面積を増やすためにナノアパタイトはブラシ状の形状となっている。このコーティング法は従来法よりも低温で可能であり、広範囲の基材に「ナノアパタイト」はコーティングが可能である。 既にハイドロキシアパタイトは歯磨剤や人工骨、基礎化粧品などで使われているが、今後、想定される用途としては、口腔粘膜用デバイス(センサー、薬物徐放、唾液回収など)、合成ハイドロゲル用接着材(シーリング材や吸湿材の固定など)などがあげられる。 従来、外科手術などでは、傷を処置するために縫合糸が使用されていることが多い。一方で迅速かつ簡便に使用でき、強い接着強度と生体親和性を併せ持つ生体組織用接着材の開発が切望されている。生体軟体組織以外にも水を含むハイドロゲル全般に接着できる「ナノアパタイト」は、このニーズに応え得るものといえるであろう。
日本を含む50ヵ国以上の国で食品添加物として使用されている乳酸菌由来の抗菌ペプチドであるナイシンA。 作用機構としては、細胞膜上のlipid II(細胞壁前駆体)に付着した後、細胞膜に形成された孔(膜障害性)を通じた細胞内物質の流失によるものである。酸性領域で最大活性を示し(中~アルカリ性領域では不溶化により活性減)、グラム陽性菌のみに効果を示す。これらのことから中性pH域における効果的なナイシンの利用法として溶液にエタノールを使用することが有効であることを見出した。 このエタノール・ナイシン溶液を食肉にスプレー噴射・浸漬し、抗菌持続性および保存性を検討した結果、エタノール単独での噴射では、まったく効果がなかったが、この溶液の噴射・浸漬を実施したところ、乳酸菌、大腸菌などのグラム陽性・陰性いずれにも相乗抗菌効果をもち、食肉表面菌の低減・殺菌に有効で、食味試験においても大きな影響はないことがわかった。また、使用時に溶液として混合し、遮光、4℃以下で少なくとも4ヵ月以上、抗菌活性が持続することも確認できている。
2017年6月に「除菌剤、除菌方法及び除菌キット」(特願2017‐109215)を申請しており、家庭から食品製造現場・調理器具だけではなく、医療機器などへの活用も期待されている。
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