NHK首都圏の特集「歯科技工士の現状」

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NHK首都圏の特集「歯科技工士の現状」が9月15日、放映された。

 

入れ歯に質の悪いものがあると指摘されている。

その実態とその背景を取材した内容である。

関東の歯科医院を訪れた患者の写真が写し出された。

歯の被せ物(クラウン)が歯の根元まで届いていなかった症例。

そのため透き間に歯垢が溜まり、再び虫歯になり歯の被せ物が3か月で取れてしま った。

歯の被せ物の裏側の透き間を埋めるために接着材のセメントを分厚く入れている。

大量にセメントを使用することで、合っていない被せ物を入れていた。

歯科医療の問題を考えるNPO法人みんなの歯科ネットワークの歯科医師の大塚勇二さんの証言。

杜撰な歯科治療の結果、患者が気づかぬうちに歯の健康が脅かされている。

「非常に小さな透き間ですから、患者さんが目で見てわからない。細菌は透き間よりもっと小さいので入り込みます」

なぜ、このような質の悪い被せ物ができるのか?

背景には歯科医院の経営難がある。

今、歯科医院は過当競争に陥っている。

東京23区以内には歯科医院は8200余り、その数はコンビの2倍近くにもなる。

「経営が苦しくて、質よりも数を優先してしまうという歯科医院が出てきても不思議ではないと思う」と大塚さんは述べる。

入れ歯は、歯科医院から注文を受けた歯科技工所で作られている。

製作をしているのは、国家資格をもった歯科技工士たちである。

歯科医療には保険と自費があるが、ほとんどの場合は保険で行われている。

製作料は歯科医師が一括して請求することになっている。

 昭和63年には、厚生大臣の告示で入れ歯などの製作料の70%が歯科技工士、残りの30%が歯科医師のものであると決められた。

しかし、実際には歯科技工士は下請けの立場から、50%程度の報酬しか受け取れない。

歯の被せ物であるが、70%なら3100円であるが、この歯科技工所2000円で納めている。

これでは45%であり、歯科医院の方が取り分は多くなる。

赤字経営であるが、一つひとつの手間を省くことはできない。

質を落とさないように必死に努力をしている。

単価が安くとも売上げを確保するために、より多くの注文をこなさなければならない。

労働時間は1日13時間以上。

夜は10時を過ぎることがほとんどだ。

こうした長時間労働に耐えられず、多くの若い歯科技工士が職場を去った。

「今は、ギリギリでやっているが、量が増えれば増えるほど、人間が作るものなので、レベルが落ちている。これはしょうがないかな。ただ質は落とさないように努力はしている」

テレビ取材では、歯科医療従事者の誇りを失わず頑張っている歯科技工所の声を反映した。

こうした現状から20代の歯科技工士の離職率は75%を超えている。

歯科技工士を辞めた歯科技工士の男性は勤めていた歯科技工所で、1日16時間以上働いていた。

そして、質より量を優先させられたと述べていた。

「明日、患者さんが来るので、間に合わせてもらいたい、と言われば、どうしても無理してやらなければならない。労働時間が長くなく、給料がそれなりにもらえて、生活できるのなら、また、歯科技工をやりたい」

元歯科技工士は述べていた。

 

 それが離職した歯科技工士たちの本音である。

 

 

都内のある歯科技工所では、歯科技工物の質を確保するために値上げをした新たな料金表を作った。

2000円でこれまで請け負っていたものを2300円に料金を設定した。

だが、この新しい料金ではまだ1軒も仕事が取れていない。

 このままでは近い将来、歯科技工士がいなくなる状況まで陥る。

値段競争にさらされている歯科技工物の製作問題。

製作技工の70%は歯科技工士のものである、という指針をしめした厚生労働省。

なぜ、歯科技工士の取り分が明確に定められないのか?

取材を申し入れた。

厚生労働省の文書による回答。

患者一人ひとりに合う歯科技工物を作る行為は、歯科医師と歯科技工士の仕事が密接する一連の行為であるため、一体化して評価する、と回答している。

しかし、歯科技工士の取り分が市場原理で決まる実態にはふれていない。

「保険歯科医療の質を確保するためにも、価格を定めるべきだ」と東京医科歯科大学大学院の川渕孝一教授は指摘している。「お医者では人工股関節ペースメーカーなど、高額なものがあるが、全部お値段が」決まっているわけだ。医者もそれを作った業者さんに一定の金額を払っている。 歯科技工士物について、むしろ値段を決めるたらどうか」

 

歯科医院の経営難から、低価格競争に陥って歯技工物の製作。

本来、医療の一部であるはずの歯科医療の質が確保されなければ、国民の健康は確保されない。

今回のテレビは、そのことを訴えていた。

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