第81回:薬事工業生産動態調査から見た歯科材料の動き

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前回の第80回コラムでは、平成23年歯科疾患実態調査の一部について平成17年の結果と比較しつつ紹介したが、今回はその間の歯科材料の動きを薬事工業生産動態調査から眺めてみることにした。結果をグラフ化したのでおもにそれを見ていただくことにして、コメントは少しにとどめる。なお、グラフが急激に変化している品目があるが、それらは分類名が以前と同じままでその内容が変更されたり、品目数が大きく変化したりした場合であり、それは2009年で目立っている。また、以下のグラフで、2011年の各品目のところに記してある数字は、出荷金額と出荷数量(質量あるいは個数)である。 う蝕関連でいえば充填材であるが、グラスアイオノマー(統計での正式表記は歯科用グラスポリアルケノエートセメントであるが、ここでは最もなじみ深い用語とした)がやはり主流である(図1)。出荷の金額と質量から計算したCRとグラスアイオノマーの質量当たり単価が約6倍という違い、それと高齢者でのう蝕の増加を考えると、順当なところであろうか。 図1 図1(クリックで拡大) 図2 図2(クリックで拡大) 歯科用金属では、近年は貴金属の値上がりの影響を受けて、大量に消費する鋳造用金銀パラジウムも陶材焼付用合金も減少傾向である(図2)。なお、陶材焼付用合金は2008年までは焼付用の金合金と貴金属合金が別分類として別々に集計されていたが、2009年からは貴金属金合金に一本化されており、ここでも2009年までのデータも同様に処理してグラフ化してある。2011年のコバルト・クロム合金の急増は品目数が2010年にくらべ大幅に増加していることが影響しているらしい。 金属焼付用陶材はかなりの増加傾向にあるが(2009年の落ち込みは品目数の極端な減少のためと思われる)、これは高齢者でのブリッジ装着者の増加と関連しているように見える。インプラントも確実に増加傾向にある(図3)。 合着材では、レジンセメントにくらべグラスアイオノマーが多用されている。リン酸亜鉛セメントも根強く使われている(図4)。 図3 図3(クリックで拡大) 図4 図4(クリックで拡大) 義歯床用材料では、アクリル系レジンが圧倒的であり、長期弾性裏装材とともに、近年かなり増加している。熱可塑性レジンは、単位質量当たりの単価がアクリルの約9倍ということもあってか近年は減少傾向となっている(図5)。なお、2009年のそれらレジンでの急激な増減は品目数の増減に対応している。 図5 図5(クリックで拡大) 図6 図6(クリックで拡大) 近年のアクリル系レジン床、長期弾性裏装材の増加と歩調を合わせるように、義歯床安定用糊材がかなり増加している(図6)、これは、テレビやその他マスメディアでの広告が大きく影響しているようにも思えるが、高齢者が義歯床で難渋していることの反映でもあろう。 根管充填ポイントが2009年まで低下し続けたのは何を意味しているのか不明である。 終りに少し付け足しておこう。2011年の出荷金額10億円以上の品目は12品目である。降順に並べると、鋳造用金銀パラジウム合金601億円、歯科用インプラント材153億円、義歯床安定用糊材85億円、陶材焼付用貴金属合金66億円、その後はずっと減少して、アルギン酸塩印象材、硬質レジン歯、コンポジットレジン用接着材料、充填用コンポジットレジン、グラスポリアルケノエートセメント第2種、接着用レジンセメント、硬質石こう、歯冠用硬質レジンが29、25、24、20、18、17、16、15億円の順で並んでいる。 その他の歯科用セラミックスという分類があるが、2009年からジルコニアセラミックスがここに仕分けられたようである。輸入品割合は年々低下して2011年には25%程度になっているが、国産品の増加により単価はかなり低下してきている。輸入品割合の話ついでにその数字が大きい品目について一言付け加えると、近年は、義歯床安定用糊材約85%、インプラント60〜70%である。 今回紹介したような統計は、臨床家にとっては多分あまり興味のないことだろうと思う。診療とはまったくかかわりのない筆者としては、臨床家の実感とどの程度関連しているのかコメントをお聞きしたいところである。 (2012年10月31日)
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