小児の口腔機能発達不全症を考察する
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新しい病名
平成30 年度歯科診療報酬改定において「口腔機能発達不全症」「口腔機能不全症」という新しい病名が収載されました。今までのう蝕といった歯牙に対する病名や歯周病、歯肉炎といった軟組織に対する器質的な変化に対する病名に対して機能不全に対する病名に保険点数が収載されたことに大変驚きました。
しかし、機能不全に対しての診断は見えないだけにどのように診断するか難しいところもあり、なかなか保険算定されていない先生も多いことと思います。
今回は、小児に対する口腔機能発達不全症を診断する一つの診断器具にフォーカスを当てて考察したいと思います。
今回は、小児に対する口腔機能発達不全症を診断する一つの診断器具にフォーカスを当てて考察したいと思います。
口腔機能発達不全症に対する診断基準
小児口腔機能管理加算の算定条件について
①15歳未満の口腔機能の発達不全を認める患者のうち「口腔機能発達不全症」の診断項目に示されているC項目において、咀嚼機能を含む3項目以上に該当するものに対して、継続的な診断および管理を実施する場合に歯菅に加算する。
②口腔機能の評価および一連の口腔機能の管理計画を策定し、患者等に対して当該管理計画に係る情報を文書により提供する。
③患者の状態に応じて口腔外または口腔内カラー写真撮影を行う。写真撮影は、当該加算の初回算定日には必ず実施し、その後は少なくとも当該加算を3回算定するに当たり1回以上行うものとし、カルテ添付またはデジタル撮影した画像を電子媒体に保存・管理する。
④文書提供は別に算定できない。
⑤15歳の誕生日より前に管理を開始し、当該加算を算定している場合は、一連の管理を継続している間に限り、18 歳未満の間は算定してもよい。
口腔機能発達不全症の特徴
疾患名 | 口腔機能発達不全症 |
病態 | 『食べる機能』、『話す機能』、その他の機能が十分に発達していないか、正常に機能獲得ができておらず、明らかな摂食機能障害の原因疾患がなく、口腔機能の定型発達において個人因子あるいは環境因子に専門的関与が必要な状態。 |
病状 | 咀嚼や嚥下がうまくできない。構音の異常、口呼吸などが認められる。患者には自覚症状があまりない場合が多い。 |
診断基準 | チェックシートの項目C-1C-12のうち2つ以上に該当するものを『口腔機能発達不全症』と診断する。(下図) |
▲(口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方 日本歯科医学会HPより)
▲製品写真 りっぷるくん (株)松風
りっぷるくんは測定時の「引っ張る方向の不一致」と「測定開始位置」のバラつきを少なくした口唇閉鎖力測定器である。
▲りっぷるくん測定方法
▲患者さんの鼻下点付近に光を照射するLEDを備えている
測定軸の上部に患者さんの鼻下点付近に光を照射するLEDを備えている。LED光を照射させることで、測定開始から最終までの力の方向を確認しながら測定ができ、測定時の「引っ張る方向」による誤差が少なくなった。
口唇閉鎖力の測定は、測定ボタンが同じ位置に装着され、毎回同じ条件で測定することが重要である。「りっぷるボタン」は特殊な形状により、歯列状態にかかわらず口唇による保持が容易で、複数回の測定でも安心して同じ位置から測定が可能である。
口輪筋トレーナー器具としてりっぷるとれーなー((株)松風)も用意されている。
りっぷるくん使用の効果
機能障害という見えない病態に対して、血液検査や歯周ポケットといった数値で評価できないことが病態評価を困難にしています。口唇の乾燥の状態や上唇の反転といった顔貌を評価することや、ペットボトルを口唇の力で持ち上げらることができるかという診査程度しか機能障害を見極める方法はありませんでした。
上記の方法は、数値評価がないために再現性がないことが欠点であり、次回の来院時になかなか再評価が難しいものでした。今回ご紹介する「りっぷるくん」は、可及的に測定軸を鼻下点付近にもっていくことができ、数値による評価が可能なので、客観的な評価を得ることができます。
数値評価ができることにより、数値目標も設定できるので患者さんのモチベーションを向上させることもでき、一石二鳥の器材です。
予防歯科へのマストアイテム
う蝕の減少に伴い歯科医院への患者さんの来院は減ったかというと、より健康になりたいという要望の患者さんは増加する一方です。当院でも予防に対する認識は高く、1日の来院する患者さんの7割以上は予防に関する来院です。患者さんの意識レベルも大変高く、予防に関する口腔ケアグッズの購買も非常に高いものとなっています。
特にう蝕が減少した口腔内で小児の保護者の関心は歯列や口腔機能へ移行してきています。質問事項も、「お口ポカーン」に代表される口唇の閉鎖不全や、歯列不正に対する質問を受けられことも多いと思います。機能障害に対しては、MFTといった筋機能訓練を行うことが教科書的ですが、治ったかどうかに関しては顔貌の変化、歯列の変化を見る程度でした。
今回ご紹介した「りっぷるくん」は、口腔機能評価を数値で行える点でも活気的であり、診断基準の数値評価はリハビリテーションの目標にもなります。まだ、算定の少ない口腔機能発達不全症という病名ですが、診査診断が確実にできれば他院との差別化にもなり、増患も期待できます。先生も口腔機能障害について考察してみませんか?
プロフィール
内田 昌德(うちだ よしのり) 医療法人鶴翔会 内田歯科医院 長崎大学大学院歯学研究科(口腔生理学専攻)卒業オススメ記事
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