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今回は、前回に引き続き高齢者歯科・在宅診療で使用される略語について解説します。
改訂水飲みテスト(Modified Water Swallowing Test)の略語です。摂食嚥下障害の簡易検査の一つであり、通常の水飲みテストに比べて飲む水の量が少ないため、誤嚥のリスクを軽減することができます。
評点 | 評価内容 |
---|---|
1a | 嚥下なし、むせなし、湿性嗄声or呼吸変化あり |
1b | 嚥下なし、むせあり |
2 | 嚥下あり、むせなし、呼吸変化あり |
3a | 嚥下あり、むせなし、湿性嗄声あり |
3b | 嚥下あり、むせあり、湿性嗄声あり |
4 | 嚥下あり、むせなし、呼吸変化・湿性嗄声なし |
5 | 4に加え、追加嚥下運動が30秒以内で2回可能 |
判定不能 | 口から出す、無反応 |
3点以下であれば嚥下機能に問題のある可能性が高いです。4点以上であれば2回繰り返し、最も悪い結果を評点として判断します。意識障害や患者の嚥下状態によってはトロミ水を使用して評価することもあります。
反復唾液嚥下テスト(Repetitive Saliva Swallowing Test)の略語です。MWST(改訂水飲みテスト)と同様、摂食嚥下障害の簡易検査として用いられていますが、対象となるのは簡単な指示に従える認知機能を有した患者となります。
患者が空嚥下を行なった際に、甲状軟骨が十分に指を乗り越えた場合のみ1回とカウントします。30秒間で嚥下の回数が3回未満であれば嚥下障害の疑いありと判定されます。ただし3回未満の患者の中に健常者が含まれることもあるため、病歴や身体所見、他の評価結果も考慮した上で判断します。
口腔内が乾燥している場合は空嚥下が難しくなるため、事前に口腔ケア等を行い適度に湿らせた状態で実施します。
嚥下造影検査(swallowing VideoFuluorography)の略語です。主に嚥下障害が疑われる患者を対象として行われ、X線透視下でバリウム入りの飲食物を摂取させて嚥下する様子を観察します。嚥下の際にどの過程で障害が起きているかの確認や、安全に食べることができる食事の形態や姿勢を検討するために行われます。
嚥下内視鏡検査(swallowing VideoEndoscopy)の略語です。嚥下障害が疑われる患者に行われる検査で、鼻腔から細い内視鏡を挿入して咽喉頭粘膜の状態や声門閉鎖機能、分泌物の貯留の有無を確認します。また内視鏡の先端を口蓋垂の下方に留めた状態で飲食物を摂取させ、気道への流入の有無を観察します。
VFと比べ患者を被ばくさせることなく観察できるのが利点ですが、嚥下の瞬間は咽頭収縮により一時的に視野が観察不能な状態(ホワイトアウト)になるため、誤嚥を見逃す可能性があります。
栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)の略語です。患者の適切な栄養管理を実施し支援するために、主に病院などで設立されている集団です。多職種で構成されており、それぞれの知識や技術を持ち寄って患者の栄養療法を支援します。参加する主な職種は以下の通りです。
●医師
●看護師
●薬剤師
●管理栄養士
●臨床検査技師
●リハビリテーションスタッフ(作業療法士・理学療法士・言語聴覚士)
●歯科医師
●歯科衛生士
●医療事務職員
NSTにおける歯科の役割は、患者の口腔内が食事を口から摂取できる状態なのかを評価することです。そして歯や義歯の治療が必要な場合は、治療を行い咬合を回復します。また口腔内の汚染がひどい場合は口腔ケアを行なったり、患者や介助者に清掃方法を指導したりし口腔内の環境を整えます。
生活の質(Quality of Life)の略語です。「生きがい」や「満足度」という意味があり、人間らしく満足して生活をしているか、自分らしい生活が送れているかを評価する概念です。特に医療や介護において、患者の望む生活を支える上で重要な考えとなっています。QOLの評価では「健康関連のQOL」「健康に関連しないQOL」「生きがい・幸福・人生の満足」と大きく分けて3つに分類されています。世界中でさまざまな評価法が用いられており、一般的に患者から聞き取るか、患者自身が評価します。
「O2(酸素)のSaturation (飽和度)をPercutaneous(経皮的)に測定する」という意味で、日本語では経皮的動脈血酸素飽和度と訳されます。SPO2の他に「サチュレーション」や「SAT(サット)」と呼ぶこともあります。
そもそも酸素飽和度とは、動脈の赤血球中のヘモグロビンが酸素と結合している割合をパーセンテージで表したものであり、呼吸状態を評価する指標として利用されています。パルスオキシメーターと呼ばれる機械を、指の先端部に装着し測定します。正常値は96~100%ですが高齢になると低下する傾向にあるため、患者の年齢や病態も考慮して判断します。正確に測定できていない場合を除き、SPO2が低下している場合は低酸素状態にあると考えられます。
重度の呼吸器疾患を持つ患者に対して口腔ケアを行う場合などは、パルスオキシメーターを装着しSPO2をモニタリングしながらケアを進めます。
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