歯科衛生士としての骨粗鬆症患者との関わり方。対応で注意すべきことや口腔内に現れる症状

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歯科衛生士コラム

 歯科医院にはさまざまな全身疾患をもつ患者さんが来院します。その全身疾患のうちのひとつに骨粗鬆症があり、歯科と骨粗鬆症には深い関係のあることがわかっています。歯科衛生士として骨粗鬆症患者とどのように関わるべきなのか、注意点や骨粗鬆症のメカニズムなどと合わせて解説します。

骨粗鬆症とは

 骨粗鬆症とは、加齢やカルシウム・ビタミンDの不足などが原因で骨組織が減り、骨がもろくなった状態をいいます。骨がもろくなることで骨折しやすく、高齢の場合そのまま寝たきりの生活になる可能性も考えられます。骨粗鬆症は女性に多い疾患で、患者の約8割が女性であると言われています。なぜ女性に多いのかというと、閉経後に女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が低下することが原因と考えられています。

 骨は古いものは吸収され、新しい骨が形成されるという新陳代謝を繰り返しています。しかしエストロゲンの分泌が低下することなどにより骨吸収だけが促進すると、骨吸収に対して骨形成が追いつかなくなります。これにより骨がスカスカでもろい状態となり、骨粗鬆症を発症します。成長期の過度なダイエットによる栄養不足や、ホルモンバランスの崩れが原因で骨粗鬆症を招くこともあります。

 骨粗鬆症では骨折などをしなければ痛みのような自覚症状がないため、意識しない限り自覚しにくい病気といえるでしょう。

骨粗鬆症患者の対応で注意すべきこと

 歯科医院に骨粗鬆症を患っている方が訪れた場合、どのようなことに注意して対応するべきなのでしょうか。

服用している薬の確認

 問診票や本人からの話で骨粗鬆症を患っていることがわかった場合、まず服用している薬を確認します。お薬手帳や薬の内容が記載された用紙から、どのような種類の薬を服用しているかを確認しましょう。

骨粗鬆症患者が服用する薬で、歯科治療をする際に気をつけなければならないものは以下の通りです。
・ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)
・ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤

 いずれも製薬会社や投与方法によってさまざまな種類があり、全てが歯科治療に影響を及ぼすわけではありません。ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)やヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤は「骨吸収抑制剤」といわれており、骨が吸収されることでもろくなっていくのを防ぐ目的で使われます。この骨吸収抑制剤を服用していることで、顎骨壊死という副作用の生じる可能性があるのです。

顎骨壊死とは

 顎骨壊死とは顎骨の組織や細胞が死滅し、局所的に腐った状態のことをいいます。顎骨壊死は、歯科治療などによりできた創傷部からの細菌感染によって起こります。口腔内は常在菌を含め、う蝕や歯周病の原因になる菌などが多数存在しているため、これらの菌によって創傷部から感染が起こり顎骨壊死を引き起こします。

 顎骨壊死の発症頻度は、骨吸収抑制剤を経口投与している場合で1万人に1~3人、注射薬の場合で100人に1~2人とされています。

顎骨壊死のリスクがある治療は避ける

 骨吸収抑制剤を服用している患者の治療において、注意しなければならないのは抜歯やインプラントといった外科的処置です。また適合の悪い義歯や修復物が入っていることで、粘膜が傷ついてしまい顎骨壊死につながることもあります。

 骨粗鬆症患者にこのような治療が必要である場合は、骨吸収抑制剤を服用する前に行うと良いです。すでに骨吸収抑制剤を服用している場合は、骨粗鬆症の治療をしている医師と歯科医師が相談し、休薬や治療の方針を検討します。

骨粗鬆症の診断法と検査値

 骨粗鬆症のメカニズムがわかったところで、その診断法や検査値も確認しておきましょう。骨粗鬆症の診断では、骨密度の検査が行われます。まず20~44歳の骨量の平均(YAM値)と比較して、骨量がどの程度あるのかで骨粗鬆症を診断します。

YAM値に対する割合 診断
80%以上 正常
70~80% 骨量減少
70%以下 骨粗鬆症の疑い

 この骨密度と、転倒もしくはわずかな外力で生じた骨折の有無によって骨粗鬆症は診断されます。

 最近では歯科医院でX線フィルム画像を顎骨骨密度診断用のソフトウェアに取り込み、歯槽骨骨粗鬆症の評価ならびに骨粗鬆症の簡易スクリーニングが可能になりました。顎骨や歯槽骨の吸収がみられた場合は、顎骨壊死予防のための口腔ケアの強化を行います。また医科と連携することで、骨粗鬆症の早期治療に繋がることもあります。

骨粗鬆症患者の口腔内に現れる症状

 骨粗鬆症により骨密度が少ないと、歯槽骨の吸収が起こりやすく歯周病が進行しやすいと考えられています。歯槽骨の吸収がみられる重度の歯周病では、歯の動揺や脱落が起こりやすく、咬合が悪化することで噛む能力が低下します。骨粗鬆症患者の特徴であるエストロゲンの低下が歯周ポケットの炎症物質を増殖させることも、歯周病が進行しやすいといわれる一因です。

 また顎骨壊死が起こった場合に口腔内に現れる症状には、歯肉の腫脹、疼痛、歯の動揺、排膿などがあります。歯肉に穴が開いたような状態になり、そこから骨が露出しているのも顎骨壊死の特徴です。
患者さんから「下唇がしびれる」「舌で歯ぐきを触ると硬いもの(露出した骨)がある」「歯が自然と抜け落ちた」「抜歯した後の傷がなかなか治らない」などの訴えがあった場合には、顎骨壊死を疑い口腔内の状態と服用している薬などを確認する必要があります。

骨粗鬆症患者に歯科衛生士としてできること

 骨粗鬆症患者に対して歯科衛生士できることは、徹底的なクリーニングとブラッシング指導です。これらにより清潔な口腔内環境を維持し、細菌感染のリスクを抑えることで顎骨壊死を予防します。

 また骨粗鬆症に罹患していない患者さんに対しても、骨粗鬆症と歯科の深い関わりを知ってもらう必要があります。口腔内の健康が全身の健康に繋がり患者さんの生活が豊かになるよう、歯科衛生士としてサポートしていきましょう。

okahata

北海道の歯科衛生士専門学校を卒業後、一般歯科で勤務。現在は歯科衛生士の経験をもとにした記事を執筆するライター活動を行っている。

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