再診料の悪用評価は医療現場の士気を確実に奪う

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再診料の「ゴミ箱」的な悪用はやめ

医療提供に照応した経済評価を求める

神奈川県保険医協会

医療運動部会

診療報酬は医療提供に対する医療機関への対価である。

しかし、再診料は非常に理不尽、不思議きわまりない経済評価となっている。

再診料は患者の8割、圧倒的多数に関係する点数であり、医療経営に影響の大きい重要な点数である。

医療の実際といかにかけ離れているかを具体的に指摘し、関係諸氏に是正を求めたい。

そもそも、再診料は初診料とともに「基本診療料」のカテゴリーで分類され、初診、再診の際に行われる「基本的な診療行為の費用を一括して評価するもの」と公式文書で規定されている。

その上、再診料は、「外来で2回目以降の診療時に1回毎に算定する点数。基本的な診療行為を含む一連の費用を評価したもの。

簡単な検査、処置等の費用が含まれている」と同様に明示されている。

つまり、診察料でないことは明らかである。

再診料は①保険医療機関が再診を行った場合に算定する、②複数傷病を同時に再診しても再診料は1回の算定、③ある傷病で診療継続中の患者が別傷病を発症した場合に初診料の算定ではなく再診料の算定、が原則となっている。

この下で、以下のような不合理が実際に起きている。

糖尿病を継続治療している患者が、突然、甲状腺機能亢進症を発症することが、ままある。

この場合、甲状腺機能亢進症は全くの初めての診察、初診となるが、初診料2700円の算定ではなく、再診料710円の算定となる。

つまり、その発見、診察、診断の技術・労働への経済評価が何もない。

しかも、糖尿病の診療は行っており、この場合、再診の評価が一気に数分の一に縮小したに等しいこととなる。

また慢性疾患の継続治療患者へは、ガンの見落としがないよう、肺のレントゲンフィルムの複数医師による二重読影を実施するなど、診療時間以外の時間をあてて集団的に検討を行っているが、この対価は何もない。

診療時間以外の患者情報の検討・分析が診療の背景にあることは、多くの人々に意外と知られていない。

逆にガンの見落としで訴訟となった場合の補償金算定は社会的にはきちんと行われているが、このリスクへの対応は診療報酬には何も織り込まれておらず、事実上、再診料710円に含まれていると解せざるを得ない。

再診料は検査や処置のように通知で明示的に「含まれる」とされているもの以外に、先に見た、事実上、含まれていると理解せざるを得ないものが非常に多い。代表格の外来の看護師労働は、入院とは違い何も評価がない。

施設の維持管理、光熱費、衛生・清掃、事務・管理費、カルテや基本的な診察用具の費用なども、同様である。

これらは「基本診療料」と性格づけられている再診料の中で、経済評価されていることとなる。

つまり、再診料は、医療費抑制の調整弁、医療提供を正当に評価しないためのツールとして、都合よく利用されているにすぎないのである。

前回08年の診療報酬改定では、突如、100cm2未満の第1度熱傷の処置や皮膚科軟膏処置などが再診料に含まれるとされた。

まさしく財源捻出の方便である。

点数評価のない診療行為は全て再診料という、いわば「ゴミ箱」に封じ込められているのである。この中のものには、金、銀に値する珠玉の診療行為が含まれたままであり、何ら光があてられていないのである。

このような再診料の悪用評価は、医療現場の士気を確実に奪う。

再診料は、医療の再生産、医療の質の確保を保障するものとは既になってない。

この悪用手法により、診療行為の包括化、不当評価がさらに拡大していけば、地域医療の崩壊は深刻になっていく。

診療報酬は医療機関による、療養の給付、医療提供に対する対価である。これが健保法でうたわれている大原則であり、医療提供に応じて経済評価がなされるのが道理である。

再診料の不合理性に広く理解を戴き、医療の質の向上のためにも、診療の正当な評価方法に早急に改めるべきだと考える。

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