集団的個別指導の実施通知を巡る不手際が発覚
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指導監査業務等が平成20年10月に都道府県社会保険事務局から地方厚生局に移管されて以降、大阪では近畿厚生局が一方的に厚生労働省の方針を押し付け、指導体制をはじめ四十数年に及ぶ医師会との協力体制を完全に無視し続けている。
更に、近畿厚生局が主体となる初の集団的個別指導の実施(8〜9月)に際しては、該当医療機関の選定に誤りが見つかり、非該当の会員医療機関に混乱を生じさせた。
大阪府医師会(酒井國男会長)は、これまでの折衝とは別に、近畿厚生局指導監査課の担当官と府医会館で面談し、猛省を求めた。
それでも、今回のミスにより非該当となった医療機関に対して、集団的個別指導の実施日を後日に設けて行うことで国の実施要件を満たそうとする姿勢をとったため、府医は口頭注意にとどまらず、抗議文を突き付けることとした。
これまで大阪における指導の取り扱いについては、行政と府医ならびに郡市区医師会が協調の上、「大阪ルール」が適用され、医師会としての自浄作用も働くなど順調に推移していた。
ところが、近畿厚生局に業務移管後、事態は反転。府医が協力体制を示しても近畿厚生局は同調せず、国の出先機関として厚労省通知(通達)の順守を求め続けている。
このため、20年12月には酒井会長が近畿厚生局長と直接会談に臨み、地域の実情に応じた指導体制を申し入れた。
その後も、近畿厚生局は府医健保チームとの全体協議のテーブルにはつかず、国の指導大綱に基づいて実施する姿勢を崩さなかった。
そして、集団的個別指導の実施通知を巡る不手際が発覚した。
集団的個別指導該当医療機関選定「単純ミス」と経過
近畿厚生局は21年度の集団的個別指導(集団講義方式)の実施について、7月27日付で該当医療機関に通知し、府医には翌28日付で発出を知らせる文書が届いた。ところが、29日には会員医療機関から選定に対する疑問の指摘が相次ぎ、府医から近畿厚生局に問い合わせ、8月4日付で以下の回答があった。
「今回選定された医療機関643のうち、半数を超える351が本来選定の対象とならない医療機関である」。
平均点数の正確さを期するためとしながら、社保のデータに国保のデータを加味して平均点数を算定する際、事務処理上の誤りがあったと説明しているが、詳細には触れず、単純ミスとしている。
厚労省は、集団的個別指導を指導大綱に基づき「教育的観点から実施する行政指導」と位置付けているが、医療機関に通知されること自体を負担に感じる会員も少なくない。
本来、慎重にも慎重を期すべきことであるにもかかわらず、近畿厚生局への業務移管後、最初の集団的個別指導の実施にあたり、事前チェックなしに、初歩的な誤りを犯したことは、前代未聞で全くもって容認できない。
そこで、府医より厳重に抗議するとともに、今回、選定された全医療機関に誤りの原因を調査の上、お詫びの文書を発送するよう申し入れた。
ところが、近畿厚生局は非該当の351医療機関に対してのみ、訂正とお詫びの文書を8月5日付で送付するとともに、今回の事務処理の単純ミスで結果的に選定漏れとなった医療機関についても、新たに実施日を設定し、集団的個別指導を実施する意向を示した。
府医は撤回を要求している。
集団的個別指導に該当する292医療機関には、予定どおり8〜9月に実施される。
従前は、「地区医師会主催の社会保険指導講習会を受講すれば、集団的個別指導の対象に選定されたとしても、その受講が任意になる」という「大阪ルール」が社会保険事務局との間で合意されていたが、近畿厚生局への業務移管に伴い、この取り扱いが廃止され地域の実情や経緯を完全に無視したものとなった。
また、対象となる選定範囲も従来の「大阪ルール」である上位4%から厚労省・指導大綱の基準である上位8%に変更している。
府医は、選定基準自体に意味がなく、高点数というだけで即、悪いものではないこと、また、単に高点数というのみの理由で個別指導につながることはないとの姿勢で対応している。
また、教育的観点から実施する指導については、医師会がピア・レビュー形式で実施できるよう、指導大綱を見直すか、それが難しければ、医師会と行政が協力して実施するなどの運用上の見直しがなされるよう、日本医師会を通じて粘り強く働きかけている。
なお、集団的個別指導に該当したとしても、会員はプレッシャーを感じたり、萎縮診療に陥ったりすることのないよう願いたいとしている。
集団的個別指導とは
「個別指導」とは性格が異なり、教育的観点から、レセプト1件当たりの平均点数が高いことを医療機関に意識させ、保険診療に対する理解を一層深めることを主眼に実施。
講義形式で約90分間、近畿厚生局の指導医療官の講演を受講。
対象医療機関は、レセプト1件当たりの平均点数が類型区分(病院4区分、診療所11区分)ごとの都道府県の平均点数の一定割合(病院1・1倍、診療所1・2倍)を超えるもので、かつ前年度及び前々年度に集団的個別指導または個別指導を受けた保険医療機関を除き、類型区分ごとの保険医療機関の総数の上位より概ね8%の範囲に位置する保険医療機関。
近畿厚生局との交渉経過
平成20年10月1日 指導監査業務が社会保険事務局から近畿厚生局に移管
10月20日 近畿厚生局より指導監査にかかる今後の方針について申し入れ
○旧社会保険事務局と府医間で申し合わせてきた大阪独自の取り扱い(集団的個別指導の選定基準(上位8%→4%)、免除規定等)を見直す
○集団的個別指導に限らず、指導全般の取り扱いを全国的に標準化するよう厚生労働省から指示されている
12月4日 近畿厚生局長と酒井会長による会談。
従来どおりの取り扱いを継続するよう強く要望
12月19日 近畿厚生局と協議
○21年4月以降の個別指導等の実施方法のマニュアル作成(たたき台)に取り掛かっているとし、最終的には厚労省が取りまとめた上で、全国に周知する方針である
○府医は昭和29年・32年の日医・日歯・厚生省間の覚書があることを取り上げ、医師会と十分な連携、協力関係を維持すべきと強く反論。そのまま承知できる内容ではなく、引き続き協議することを確認
平成21年1月9日および21日 近畿厚生局と協議
1月30日 厚生労働省保険局医療課医療指導監察室長名文書が発出され、「地方厚生(支)局との調整にあたり、これまでの経緯に十分留意しつつ、各都道府県医師会に対して懇切丁寧な説明の上、調整を図る」旨連絡
2月7日 近畿医師会連合(近医連)で協議
2月11日 大村秀章・厚生労働副大臣を招き、これまでの経緯を含め府医の考えを伝える。現行指導大綱の問題点を指摘し、集団的個別指導や新規開設医療機関に対する個別指導の運用上の改善を要望
3月24日 近畿厚生局と協議
○近畿厚生局側より21年度指導実施方針を説明。
近畿各府県間の取り扱いを統一化。全国標準化には厚労省で調整中であり、現時点で結論は出ていない
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