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コラム - 記事

今後の公開予定
第1回1.新人教育の仕組みづくり 編
第2回2.働きやすい職場環境づくり 編
第3回3.スタッフ定着とモチベーション管理 編【今回】
第4回4.リーダー育成と役割り分担 編
第5回5. 歯科衛生士による患者満足度・自費提案 編


歯科医院の安定経営に欠かせないのが「スタッフの定着」と「モチベーションの維持」です。どんなに設備が整っていても、日々の診療を支えるのは人です。スタッフが安心して働き続け、やりがいを感じられる職場こそが、結果として患者から信頼される医院構築につながります。しかし現実には「スタッフがすぐ辞める」「モチベーションが保てない」と悩む院長やチーフも少なくありません。今回はスタッフの定着を高めるための具体的な仕組みと、モチベーションを維持するためのマネジメントのヒントを解説します。

「医院を成長させる歯科衛生士マネジメント」 〜教育・定着・リーダー育成から未来のキャリアまで〜

著:高山 由衣 /

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1. 定着率が医院の未来を左右する

歯科医院では、1人の退職がチーム全体に大きな影響を与えることが少なくありません。人手不足による業務過多や教育の遅れで、残るスタッフの負担が増え、さらなる離職を招く悪循環に陥りがちです。一方で、定着率の高い医院では「安心感」と「信頼感」が育ちます。同じメンバーが長く働くことで、下記のような好循環が生まれます。

●患者との信頼関係が深まる
●業務の効率が上がる
●スタッフ同士のサポート意識が高まる

スタッフの定着は単なる雇用の維持ではなく、医院の文化とブランドを育てる土台となるのです。

2. 定着を支える心理的安全性と成長実感

スタッフが「この医院で働き続けたい」と感じる要素は、大きく2つあります。それは、心理的安全性と成長実感です。

心理的安全性
安心して意見を言える環境があると、スタッフは自分の存在価値を感じやすくなります。「間違えても責められない」「相談できる相手がいる」などの安心感が、職場への信頼につながります。院長やチーフはスタッフの声を受け止める姿勢を持ち「言ってくれてありがとう」と伝えることから始めてみましょう。

成長実感
日々の業務を「ただの作業」に感じてしまうと、スタッフのモチベーションは低下します。明確な育成計画やステップアップの目標があることで、スタッフは「自分が成長している」と実感できます。「以前よりできることが増えた」「任される業務が広がった」と感じられる環境は、強い定着意欲を生みます。

3. モチベーションを保つマネジメントの工夫

スタッフのモチベーションを維持するためには、下記の工夫が効果的です。

・フィードバック文化をつくる
モチベーションを保つには「認められている実感」が欠かせません。頑張っているスタッフに対して「ありがとう」「助かったよ」といった言葉を日常的に伝えることで、承認の文化が育ちます。特にチーフや主任などの中間層は、院長からの感謝や評価が次のエネルギーになります。言葉にして伝えることは、モチベーション管理の第一歩です。

・目標を共有する
医院全体としての目標(予防強化・リコール率アップ・自費率アップなど)をチームで共有すると、スタッフの意識がひとつにまとまります。ただし「ノルマ」ではなく「目的」としてポジティブに共有することが大切です。「なぜそれを目指すのか」を丁寧に説明することで、スタッフは“やらされてる感”ではなく“貢献感”を持って取り組むことができます。

・感情を整える環境をつくる
どんなにやる気があっても、疲れやストレスが蓄積するとモチベーションは下がります。
休憩スペースを整える、相談の場を設ける、定期的に面談を行うなど、感情をリセットできる環境が必要です。特に歯科衛生士は患者対応が多く、感情労働になりやすい職種です。メンタルケアの視点を持つことで、モチベーションの波を穏やかに保てます。

4. チーフ・リーダーの役割

チーフや教育担当者は、院長とスタッフをつなぐ存在です。その役割は「指示を伝える」ことではなく「気持ちを理解し、行動を支援する」ことです。新人や後輩のモチベーションを下げないためには、下記の姿勢が求められます。

●できていない部分ではなく、できるようになった点に注目する
●指摘の前に努力や過程を認める
●悩みを聞き次の行動を一緒に考える

チーフが安心を届ける存在になれば、チーム全体の心理的安全性も高まり、結果として離職防止につながります。

5. モチベーションを仕組みで支える

人のやる気に頼るだけでは限界があります。継続的にモチベーションを保つためには、次のような医院としての仕組みが必要です。

●明確なキャリアステップの提示(役職・スキルアップ研修など)
●表彰や評価制度の導入
●月ごとの振り返りミーティング
●スタッフの意見を反映する「改善提案制度」

こうした仕組みを通して「自分の意見が医院を良くしている」と感じられることが、モチベーション維持の最大の要素です。

6. 院長ができる3つのサポート

院長だからこそできるサポートを解説します。

聴く姿勢を持つ
スタッフの声を“問題”ではなく“情報”として受け取る。

ビジョンを語る
開業当初の気持ちや「どんな医院にしたいのか」「なぜこの医院で働くのか」を共有し続ける。

信頼して任せる
一歩引いてスタッフの自主性を尊重し、挑戦を支える。

院長がこの3点を意識することで、医院全体のモチベーションは自然と底上げされます。

まとめ

スタッフの定着とモチベーション管理は、歯科医院経営の永遠のテーマです。給与や待遇だけではなく、心理的安全性・成長実感・承認の文化が整っている医院ほど、人は長く働き続けます。

院長は方向性を示し、チーフは現場を支え、スタッフは互いを尊重しながら協力し合う。その連携が生まれたとき、職場は「働く場所」から「共に成長できる場所」へと変わります。スタッフが定着するチームは“信頼される医院”をつくることができます。人を育てることが、結果的に医院を育てる最良の経営戦略となるのです。

Introduction

著者紹介

高山 由衣

臨床歯科衛生士/研修講師

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