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【R6診療報酬改定】補綴物の変更点と加算点数アップデート

2024(令和6)年度の診療報酬改定では、歯科補綴物に関して加算点数の増加や見直しが行われ、各種治療の報酬・基準がアップデートされました。本記事では、改定点や見直しが行われた項目について詳しく解説します。
令和6年度診療報酬改定のうち歯科補綴物に関するもの
令和6年度(2024年度)診療報酬改定のうち、補綴物に関するものはいくつかあります。
●加算点数が増加したもの
○支台築造
○金属歯冠修復
○根面被覆
○高強度硬質レジンブリッジ
○有床義歯
○鋳造鉤・線鉤・コンビネーション鉤
○磁性アタッチメント
○歯科技工士連携加算
●見直しが行われたもの
○大臼歯CAD/CAM冠の適用要件見直し
○クラウン・ブリッジ維持管理料の対象
これらの引き上げは、歯科医療従事者の賃上げ等を目的としています。
支台築造
●メタルコア
○大臼歯:176点→181点に
○小臼歯および前歯:150点→155点に
●ファイバーポスト
○大臼歯:196点→211点に
○小臼歯および前歯:170点→180点に
メタルコアにおいては部位に関わらず5点、ファイバーポストにおいては部位によって最大15点引き上げられました。
金属歯冠修復
●インレー
○単純なもの:190点→192点
○複雑なもの:284点→287点
●3/4冠(前歯):370点→372点
●4/5冠(小臼歯):310点→312点
●全部金属冠(小臼歯および大臼歯):454点→459点
後述しますが、今回の改定ではクラウン・ブリッジ維持管理料の見直しも行われ、3/4冠や4/5冠、全部金属冠は同管理料の対象外となっています。
根面被覆
歯根部の露出を補うための根面被覆は、患者の知覚過敏の改善や審美性の回復に寄与します。今回の改定で、根面板の加算点数が190点から195点へ5点引き上げられました。
高強度硬質レジンブリッジ
高強度硬質レジンは、一般的なレジン材料よりも高い強度を持ち、咬合力が加わる部位にも使用できます。また比較的審美性が高く金属を使用しないため、金属アレルギーのある患者にも使用することができます。
しかしセラミックや金属に比べると強度は劣るため、咬合力が比較的弱い小臼歯部で使われることが多いです。
今回の改定で、高強度硬質レジンブリッジの加算点数は2,600点から2,800点へ200点引き上げられました。
有床義歯
●部分床義歯
○1〜4歯:594点→624点
○5〜8歯:737点→767点
○9〜11歯:972点→1042点
○12〜14歯:1,402点→1,502点
●全部床義歯:2,184点→2,420点
超高齢社会が進行し義歯の需要が高まっているゆえか、最低でも30点の引き上げが行われました。
鋳造鉤・線鉤・コンビネーション鉤
鋳造鉤は金属を鋳造して作られる維持装置で、義歯の安定性を確保するために重要な部分です。形状を細かく調整でき、歯と義歯のフィット感が向上します。
それに対して線鉤は、金属線を曲げて作るシンプルな維持装置で、主に簡易的な義歯や仮義歯で使用されます。コンビネーション鉤は、鋳造鉤と線鉤の利点を組み合わせた構造の維持装置です。
●鋳造鉤
○双子鉤:255点→260点
○二腕鉤:235点→240点
●線鉤
○双子鉤:224点→227点
○二腕鉤(レスト付き):156点→159点
○レストの無いもの:132点→134点
●コンビネーション鉤:236点→246点
磁性アタッチメント
磁性アタッチメントは、義歯の安定性を高めるために使用される装置です。義歯床内に磁石を組み込み、歯根やインプラントに取り付けた金属製のキーパーと連結します。
今回の改定で、キーパー付き根面板を用いる場合、加算点数は350点から550点へ200点引き上げられました。
歯科技工士連携加算
広い意味では、歯科補綴物の製作を行う者として歯科技工士に関する加算も新設されています。
具体的には、「歯科技工士連携加算」と「光学印象歯科技工士連携加算」の2つが新設されました。これらは歯科補綴物の作製に際して、積極的に連携する歯科医師と歯科技工士を評価するためのものです。
施設基準や算定要件など、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
大臼歯CAD/CAM冠の適用要件見直し
大臼歯CAD/CAM冠においては、適用範囲拡大に伴い適用条件が変更されました。詳しくは厚生労働省のPDF資料(162〜165ページ)をご確認ください。
クラウン・ブリッジ維持管理料の対象
令和6年度診療報酬改定において、クラウン・ブリッジ維持管理料の見直しも行われ、具体的には以下が対象外となりました。
●3/4冠(前歯部の単冠)
●4/5冠(小臼歯部の単冠)
●全部金属冠(小臼歯および大臼歯の単冠)
●レジン前装金属冠(レジン前装チタン冠を除く)
なおすべてのブリッジ、HJC、CAD/CAM冠、チタン冠、レジン前装チタン冠は、引き続きクラウン・ブリッジ維持管理料の対象です。
また上記の対象外となった補綴物であっても、改定の施行(6月1日)前までであれば算定することができ、これまでと同様2年間適用されます。
クラウン・ブリッジ維持管理料とは
クラウン・ブリッジ維持管理料は略して「補管」とも呼ばれ、クラウンやブリッジといった補綴物を装着した日から2年の間に、何らかの理由により補綴物を再製作しなければならなくなった場合、その費用を保険医療機関が負担するというものです。つまり保険医療機関では「補綴物をセットしたら終わり」ではなく、その維持・管理に努める必要があるのです。
これにより、現在ほとんどのレセプトコンピューターにおいて、この管理料を算定した部位で2年経たないうちに新たに補綴物について算定しようとすると、クラウン・ブリッジ維持管理中である旨の警告メッセージが出るようになっています。
なお例外として、腫瘍や外傷等が原因で抜歯となった場合、その後の補綴処置に必要な費用は算定が可能です。
まとめ
今回の改定では、歯科補綴物に関する評価が大きく見直されました。患者にとって安心で効果的な治療を提供できるよう、改定内容やその目的を理解し、診療の質と患者満足度の向上を目指しましょう。
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