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歯科医師 鹿乃さやか先生が語る 今、伝えたい子宮頸がん検診の大切さ

著:鹿乃 さやか 先生 /

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みなさんは子宮頸がんという病気について考えたことはありますか?
子宮頸がんは、その名の通り、子宮頚部にできるがんのことです。主にHPVといわれるヒトパピローマウイルスに感染して発症する病気です。
HPVは女性の多くが一生に一度は感染するといわれ、大半の人は感染後に自然消滅しますが、一部の人で感染が続き、がんに進行します。
日本では1年間に約1万人が新たに子宮頸がんと診断され、約3,000人が亡くなっています。*早期に発見すれば比較的治療しやすく予後の良いがんと言われていますが、歯周病と似て、自覚症状がなく、進行すると治療が難しいことから、早期発見が極めて重要です。
*国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」
(全国がん登録/厚生労働省人口動態統計)全国がん罹患データ(2016年~2020年)/全国がん死亡データ(1958年~2022年)

自己紹介


Dentwave編集部:鹿乃先生の自己紹介をお願い致します。

鹿乃先生:鹿乃さやかです。ドルミーレデンタルオフィス表参道の院長をしています。あとは、【君のための歯医者さん】という緒方まりことのユニットで歯科系のYouTubeをやっています。

Dentwave編集部:歯科ラップもされていましたよね?

鹿乃先生:そうなんです。歯医者が苦手だという方が、できるだけ減って欲しくて、歯医者は怖くないよというのを伝えるために歯磨きラップを歌ったりしています。AppleMusicなどで聞けるのでもしよければ聞いてみてください!
https://music.apple.com/jp/album/white-single/1653136091

開業について

Dentwave編集部:鹿乃先生はまだお若いのにご開業されて、素敵だなとInstagramを拝見していつも思っていました!開業されてどのくらい経ちますか?

鹿乃先生:今31歳で、2023年7月に開業したのでちょうど1年くらいです!

Dentwave編集部:1周年おめでとうございます!ちなみに鹿乃先生は歯科麻酔医の資格もお持ちなんですよね?

鹿乃先生:そうです。日本歯科麻酔学会の認定医と、日本口腔顔面痛学会の認定医を持っています。

Dentwave編集部:歯科麻酔の認定医ってとても少ないんですよね?

鹿乃先生:そうですね、一応計算したところ1.3%でした!

子宮頸がんに気づいたきっかけ

Dentwave編集部:それは少ない!本当にすごいです!!尊敬します。色々詳しく教えていただきありがとうございました。
それでは、本題になりますが鹿乃先生が子宮頸がんに気づいたきっかけを教えていただけますか?

鹿乃先生:気づいたきっかけは、自覚症状は全くなくて。定期健診に行って見つかった感じです。1年前に受診した時は、ポリープがあるかもって言われていて…ただ陽性が出なかったんですよね。今思えばその時から、普通にあったんでしょうね。偽陰性みたいな感じでした。細胞を採る場所で結果が違うということもあるみたいです。なので身近な人には、セカンドオピニオンで2か所の病院で診てもらってと伝えています。

Dentwave編集部:健康診断の結果が返ってきたときに、陽性ということが分かったということでしょうか?

鹿乃先生:そうです。「精密検査が必要です」となって、組織診をしました。主治医からは「細胞診で陽性が出ていても、大体大丈夫だよ。悪性のことなんてほぼほぼないから。」という感じで言われました。でも組織診をしたら子宮頸がんだったと口頭で伝えられました。

Dentwave編集部:その時どんな気持ちになったか、お聞かせいただけますか?

鹿乃先生:母親も子宮頸がんで円錐切除だったこともあり、そこまで大きな衝撃はなかったんです。まぁやっぱり遺伝もあると思うので。なので、「やっぱり、そっか。オペするか。」くらいです。その時は。産婦人科の先生にも「じゃあ手術しまーす!」みたいに伝えてました。
そうしたら先生に「いやいや、赤ちゃんのこととかも考えたりしないといけないし…」と言われて、「たしかに。今は別にいいやって思っていたとしても、何年か後とかに自分の赤ちゃんが欲しいと思う可能性もあるから、ちょっと考えるかとはなりました。
でもそんなテンションが下がる訳ではなく、帰り道も大丈夫で、次の日普通に出勤しました。でも、その日の診療終わりに普通に涙が出てきちゃって。「なんで?なんでなっちゃったん?」って。
子供ができないっていうのも、その時は強がってたというよりは、多分あまり実感が湧いてなかったんでしょうね。「まあどうにかなるやん。」って感じで。
そこからだんだん実感が湧き始めて、勝手に涙が出てくる日々が続きました。電車を待っている時も、家にいるときも、何かしていないと泣いちゃう。なので、とにかく仕事をばーっと入れて。考える時間をなるべくなくすために入院の前日の夜まで普通に働いていました。

治療内容について

Dentwave編集部:差し支えなければ、鹿乃先生はどんな治療をされたのか教えていただけますか?

鹿乃先生:提示されたのが【子宮全摘手術】【放射線】【放射線+抗がん剤】でしたが、放射線をあてると卵巣もダメになる可能性が高いというのが嫌なのと、ガンが残るのが怖すぎたので、子宮全摘手術+リンパ郭清で計7時間くらいのオペでした。
全身麻酔で開腹手術をしました。傷は計ったら17cmくらいありました。術後は本当に痛くて、ご飯を食べろって言われるけど食べられないし、ベッドから起きろって言われるけど起きられないし…でも私、過去に交通事故で死にかけたことがあったので、それと比べたらマシでした(笑)。

Dentwave編集部:お身体の状態としてはとにかく痛い!というのが伝わってきましたが、お気持ち的にはどうでしたか?

鹿乃先生:一番辛かったのは本当に入院するまでの間です。入院するとやるしかないっていう気持ちに切り替わるんですけど、その前までは大変でした。
オペした後も子宮がなくなったこととか、お腹に傷があることとか、私はあまり悲しいとかなくて。それよりも病院が、コロナの関係で家族以外の面会が禁止で、お見舞いが禁止。なので人と話すこともないし、何もやる気がおきなくて、一日寝てるだけで、しかも2週間くらいで退院できる予定が結局1ヶ月近く、25日間になって倍くらい入院しないといけなくなっちゃって。それが辛かったです。一日中「私何してるんだろう?」人とも話せんし、太陽光も浴びない、外に行けないから、ほんと鬱みたいになっちゃって。起きる気力もない、ご飯食べる気持ちにもなれない。本とかゲームとかもやっていたんですけど、何もやらずにただボーとしてるだけでした。それが辛かったです、一番。家族が来てくれるんですけど、面会時間も限られてるし、夕方くらいまでなんで、2時間くらいしかなくて、辛かったです。

Dentwave編集部:退院してから、すぐお仕事に復帰されていませんでしたか?

鹿乃先生:そうなんです。産婦人科の先生にはもうちょっと休んだらと言われたんですけど、さすがに私、院長だしな、みたいな。私自体、働くことが好きで、歯医者のお仕事、病院にいるのが好きなので、家にいるより全然よくて、そっちのほうが。
しかも、人間動けば動くだけ回復していくと思いますし、動くに越したことないので。家でもボーっとしているだけだったら働いたほうがいいなってことで、すぐ復帰しました。

アンケート結果を受けて

Dentwave編集部:Dentwaveで子宮頸がんについてのアンケートを行った結果を受けて、鹿乃先生が感じたことはありますか?

鹿乃先生:うちのスタッフとかもちろんそうですけど、知っていたとしても「大丈夫だろう」「自分はならないだろう」っていう人がほとんどだと思うので、そういう考えを一切なくしてもらって、定期的に検診を受けていただきたいです。何なら義務付けした方がいいんじゃないかぐらいに私は思うんですけど、それもなかなか難しいので。でも、行政とかで無料検診があるじゃないですか。ああいうのは絶対に逃さずに、せっかくの機会やから受けてほしいなって、せっかく国が提供してくれているから行った方がいいなって思います。 あとやっぱり男性の先生が担当だと、恥ずかしいとか、機械が恥ずかしいとかめっちゃわかるんですよ。診察台、足がパカンってなるから、あれは確かに恥ずかしいですよね。でも、よく歯科検診とか口の中を見られるのが恥ずかしいとか言う人もいますけど、こちらからしたら毎日見てるから全然なんとも思わないわけじゃないですか。
だからそう思っていただいて、産婦人科の先生たちは毎日見てるもんやから恥ずかしくないよって思って、検診受けてほしいなって思います。

Dentwave編集部:ワクチンについてのアンケート結果はどう感じますか?

鹿乃先生:ちょうど私の世代はワクチンを受けてくださいっていう案内が始まったぐらいなんですよね。その時は確かに副作用も分からないし、家族に勧められても、分かんないし怖いから一応やめとくかって、私の同世代の多くはそう思ってるんじゃないかなと思います。最初の頃は本当に分からないからやめとけみたいな風潮があったんですけど、厚生労働省からワクチン接種で重篤な副反応になる確率は100万から400万接種に1回というデータが出ていますし、76人に1人が子宮頸がんになるという確率を考えたら圧倒的に利益の方が多いと思うんですよ。だって自覚症状がなくて、ここまで進んでしまう可能性があって、子どもができなくなるって可能性を考えたら、それよりワクチン打った方が全然よくない?と思います。でも自分が子宮頸がんに罹患する可能性があるって分かってないから、打とうって思わないと思うんですよね。だから自覚症状がなくても、そこまで進んじゃうよってことが広まればいいのかなって思います。例えば生理が遅れるとか、出血があるとか、痛みがあるとかもそうですけど、そういうのは全くなかったので。 ワクチンで予防できる唯一のガンってことを皆さんに知っていただいて、キャッチアップ接種対象*の方は期間中に是非接種していただきたいと思います。

メッセージ

Dentwave編集部:それでは最後に手術を乗り越えられた今だからこそ、伝えたいメッセージを最後にお願いします。

鹿乃先生:「自分が子宮頸がんになるわけない」そんな風に軽く考えている方ももちろん多いと思うんです。身近な人で罹患した経験がある人がいない方が、多いと思うんです。でも実際こうやって私みたいな人がいるわけなので、いつ誰がなってもおかしくない病気です。あとは、もしかしたら恥ずかしいっていうイメージがあるかもしれないですけど、全然恥ずかしいことではないです。ウイルスが原因での病気ではもちろんあるんですけど、性行為の経験がある人はほぼほぼみんな感染はしてるので、そこから体が排除できるかできないかそれだけの違いです。だから恥ずかしいっていう風に思わないで欲しいなと思います。やっぱりちょっとずつみんなが広めていくことが大事だと思うので、恥ずかしいと思わずに広めてほしいです。やっぱり隠しちゃうから広まりづらいっていうのは、すごくあると思うんですよね。術後の性生活とかそういうところも、記事で調べても全然出てこなくて、経験した、体験した人が話せないから記事にもなってないんですけどね。でも実際、情報を求めてる人はたくさんいるわけなので恥ずかしいって思わずに、誰かの役に立つと思って情報をどんどん出していって欲しいです。あとは今、何もない方も本当に検診へ行くだけで自分の体が守れるなら、絶対に行った方がいいと思うし、ちょっと痛いって言われてるけど、一番最初の細胞診の段階だと別に全然痛くないですよ。
この記事を読んでいただいて、1人でも多くの方が子宮頸がん検診を受けて欲しいと願っています。

Dentwave編集部:鹿乃先生ありがとうございました。本記事を読んでいただいた皆様が【子宮頸がん】を他人事だと思わずに、子宮頸がん検診に行くこと、男性であっても家族やスタッフに、検診を勧めること、そんな会話が院内で生まれることを心から願っております。

医院情報


医院名称:ドルミーレデンタルオフィス表参道
所在地 :〒107-0061 東京都港区北青山3丁目5-40 YCビルⅡ 1階
電話番号:03-6804-3228
診療時間:10:00〜18:00(最終受付17:30)
休診日 :日・祝日
アクセス:東京メトロ銀座線/半蔵門線/千代田線「表参道駅」A2出口から徒歩1分
医院HP :https://www.instagram.com/dormire_dental_office/

Introduction

著者紹介

鹿乃 さやか 先生

ドルミーレデンタルオフィス表参道 院長