医療に関わった人たちのコレクションを収蔵し、酒づくりの歴史を伝承する

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白鹿記念酒造博物館
江戸時代後期から酒づくりが盛んになり、全国のおよそ3割の酒を出荷している灘五郷は、西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷の5つの地域で成り立つ酒どころです。土地柄、六甲山地から流れる川が多く、米を精米するために水車が使える地形であり、海沿いの立地から樽廻船を利用するのに便利であったことが起点になっています。水は宮水、摂津や播州の米、六甲おろしが吹く酒造りに適した気候、丹波杜氏の技の融合によって旨いといわれる酒づくりの文化が育まれてきました。

灘五郷を有する兵庫県西宮市にある白鹿記念酒造博物館(通称 酒ミュージアム)は、「記念館」と「酒蔵館」の2つの建物で構成されています。

記念館

酒蔵館

「記念館」は、お酒に関する文献や美術工芸品を展示し、「酒蔵館」は明治の木造蔵を活かしています。
時代の趨勢とともに実際には見る機会が少なくなった古の酒づくり。お酒に関する昔からの資料や文献などを保存・展示し、日本の生活文化遺産である酒造りの歴史を永く後世に伝えようとしている博物館。
入口には白鹿の社員の方々が作った酒林があり、建物全体で重厚な印象を与える記念館の中では、企画に応じたさまざまな収蔵品を目にすることができます。


入口に飾ってある酒林


収蔵品の中でもおめでたい印象を与えるゑびす神をテーマにした「堀内ゑびすコレクション」は、故堀内泠氏(1924~2009年)が長年かけて収集されたものです。


堀内ゑびすコレクション

西宮で生まれ育ち、医学博士の傍ら郷土史家としても活躍された堀内氏のコレクションはえびす神をおまつりしている西宮神社の若戎会の初代会長に堀内氏が就任してから収集は始められたのですが、主に福の神であるえびす神に関するもの、郷土史、風俗風習等の資料で構成され、見ごたえがあります。
博物館では、このコレクションの寄贈を受け、毎年年末年始にコレクション展を開催しています(年末年始休館期間:12月30日~1月3日を除く)。

一方、あらゆる酒造道具を具備している酒蔵館は、1995年の阪神・淡路大震災で全壊後、現在は、敢えて震災の爪痕を残す補強を施し、1869年築造の酒蔵を使用している中で、もろみ桶の中に入ったりもろみ泡の音を聴いたり、酒造道具に等身大で直接触れる体験が可能なのです。
その一角では、宮水を詰めた水樽を大八車に積んで運んだ板石道を再現し、通る音を聴くことができる仕掛けがあります。宮水地帯といわれる近辺に流れる3つの伏流水がブレンドされ、この伏流水の合流によってミネラルが豊富で鉄分が少ない酒造りに適したバランスとなった宮水。この大八車が通るゴロゴロという音を聴いていると、この水を守っていくために制定された宮水保全条例が、現在の街づくりとの調和を図るために必要となったことを納得させられる心地になるかもしれません。

酒蔵館に展示されている幾多の盃は、滋賀県守山市内で歯科医院を運営していた故佐藤健司氏(1917~1997年)のご家族から寄贈された酒器コレクションです。
故佐藤健司氏のご家族から寄贈された酒器コレクション

このコレクションでは、持ち主が日々、好みの酒器を選び、コレクションを眺めながら日本酒を楽しむ優雅なひとときを過ごしていたような風景を思い浮かべてしまいました。 時間に余裕をもって博物館の隣りにある白鹿クラシックスとともに全体を一巡できると、より一層、現代までにお酒が辿ってきた時間変遷の流れを体感できるかもしれません。


丁寧かつわかりやすい中にも宮水の存在や所蔵している品々を伝承していこうという熱意が伝わる解説をしながら案内してくださった副館長の弾正原佐和さん

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