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2019/01/15

MTA(MAP system)を用いた直接覆髄により歯の予後が安定している症例

▲5┘ う蝕除去後の直接覆髄
歯髄のバイタリティーを維持するための直接覆髄
今回、紹介するのは、Dental Tribune Internationalのtoday (2018/11/14-11/16号)に掲載されたグアテマラの歯科医師Jeneer Arguetaの記事である。タイトルは、”Direct pulp capping as a conservative procedure to maintain pulp vitality”で、記事内ではMTA(MAP system)を使用した直接覆髄の手法により、歯髄のバイタリティーが安定している症例が紹介されている。
todayに掲載されている記事では、う蝕除去時の偶発的露髄に対し、MTAによる直接覆髄を行い、歯の予後に問題のない症例が2つ紹介されている。本記事ではその内1症例を紹介する。不可逆性歯髄炎に対しての直接覆髄の適応や、直接覆髄後の予後に関する研究報告についても後半で触れているので、ぜひ最後までご覧いただきたい。
上顎右側小臼歯部の疼痛を訴え、来院した患者

▲5┘ 二次カリエス

▲5┘ 露髄による点状出血

一過性の誘発痛の主訴を機に、クリニックを受診した35歳の患者に対して、MTAによる直接覆髄を行った症例を紹介する。X線写真を撮影すると、5┘のインレー下に二次カリエスが認められる(左上画像)。可逆性歯髄炎と診断し、ラバーダム防湿を行い、う蝕除去を行っていた所、偶発的に露髄し、最小出血が確認された(右上画像)。

▲5┘ MTAによる覆髄

▲5┘ MTA下に硬組織形成が確認

歯髄からの出血は滅菌生理食塩水を浸した綿球で10秒間圧迫することで止まり、窩洞は2.5%のNaOClで消毒された。その後、MTAで露髄部を覆髄し(左上画像)、X線不透過性の保存材料により、暫間修復を行った(右上画像)。こうすることにより、直接覆髄に使用されたMTAの厚みを容易に確認することができる。金属による最終補綴は15日後に行われたが、患者は特に症状を訴えず、パルプテストでの反応も確認された。
直接覆髄の高い成功率の鍵は「細菌感染対策」
▲硬組織形成後の最終補綴
一般的に直接覆髄の後、覆髄材料下に硬組織の形成が認められるのは約半年から9カ月後といわれている。確認しにくいが、上部X線画像でも5┘の覆髄材料下に硬組織の形成が認められる。症例の患者は特に痛みを訴えることなく、予後は良好とのことだ。
ここで注意して欲しいのは、不可逆性歯髄炎が認められる際に、直接覆髄を行うことである。直接覆髄を行う理想的な症例は可逆性歯髄炎であるため、問診を行い、可逆性か不可逆性かをしっかりと見極めることが重要である。以下は、記事内で紹介されていた不可逆性歯髄炎の典型的症状の一例である。
  • 自発痛がある
  • 夜間痛がある
  • 疼痛が長引いている
不可逆性歯髄炎の治療に抜髄ではなく、直接覆髄を行うことに抵抗を感じる読者も中にはいらっしゃるかもしれないが、不可逆性歯髄炎であっても、歯髄温存療法が奏功した症例がいくつか報告されている。また、10年間までのフォローアップ研究によると、MTAを使用した歯髄温存療法の成功率は80%以上と非常に高い。成功率が高い理由としては、治療時のラバーダム防湿やNaOClによる窩洞の消毒を行い、治療中の細菌感染を防止していることが大きく関係していると考えられる。
残念ながら、日本の現行の医療保険制度ではラバーダム防湿を保険点数として算定することができない。しかし、う窩が深くMTAによる直接覆髄が適応され得る症例に遭遇した場合、ラバーダム防湿や窩洞の消毒をしっかりと行うことが重要である。そうすれば、治療後の予後が良くなり、患者のためにもなる。本記事をお読みになり、直接覆髄の適応や手法をもう一度見直す機会になってもらえれば幸いである。
By Dental Tribune International
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