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2013/10/24

第2回 インプラント治療における患者さんへの説明

どんな歯科治療であっても、治療方針や概要の説明なしに治療を始めるということはまずないでしょう。日常の臨床においては、治療について患者さんが理解し、納得して、さらに互いに同意するというインフォームド・コンセントに基づいて、初めて治療がスタートします。医療者側が一方的に「説明」するだけではなく、患者さん自身が「理解」し「納得」したうえで、治療を受けますという「同意」が成立し、こうして初めて治療がスタートできるのです。

インプラント治療は現在の日本においては自費の治療であり、患者さんにとっては高額の負担となる医療です。それだけに通常の治療以上のていねいな説明や、患者さんとの信頼関係を土台にしたコミュニケーションが必要になります。また、治療期間も1、2度の来院で終了するものではなく、術前の診査、埋入手術、補綴処置、メインテナンスに至る長い治療期間と相応の通院回数を要します。もしも医療者側の説明不足が原因で、治療の途中で患者さんが不信感を抱いたり、トラブルが発生したりすると、治療を最後までスムーズに進めることもできなくなってしまいます。

また最近多く見られるのは、インターネットの普及により患者さんが来院前にインプラントについて詳しく調べてくるケースです。けれど、インターネット上の様々な情報の中には「正しいもの」と「間違っているもの」があり、患者さんは情報を整理しきれずに混乱している場合も少なくありません。私たち医療者側は、まず「正しい情報」を患者さんに提供しなくてはなりません。「インプラント治療を行う以前の説明」が重要なのです。

インプラント治療についての説明は、歯科医師だけではなく、私たち歯科衛生士が十分な時間をかけて行うことによって、患者さんにとってはより深い理解につながっていくでしょう。患者さんとの間に強い信頼関係を築くきっかけにもつながります。歯科医師が別の患者さんの診療をしている間に歯科衛生士がインプラントの説明を行えば、医院の診療の効率もあがります。最近では、医院の歯科衛生士にインプラント治療の説明の仕方を教育し、歯科衛生士に説明をゆだねる医院が増えています。その場合は、予め患者さんに説明の時間をとっていただくこと(アポイントメント)も必要です。

患者さんが理解、納得、同意する

患者さんが理解、納得、同意する

説明するコーナーを設けている歯科医院

説明するコーナーを設けている歯科医院 (藤沢ぺリオインプラントセンター 雨宮啓先生より)

それでは、患者さんへのインプラントの説明内容について具体的にあげていきましょう。

①患者さんがインプラント治療を希望している場合、あるいは医療者側から治療を行うことを推奨する場合であっても、患者さんの「治療の選択」が必要です。歯のないところを何かしらの方法で修復することについて、その治療の必要性(対合歯の挺出や、隣在歯の傾斜、将来的な噛み合わせの不具合など)を十分に説明し、義歯、ブリッジ、インプラントの選択肢の中から、患者さんとの相談によって治療方法を選択していきます。 説明にあたっては、画像、模型、資料なども活用します。義歯の場合はインプラントと比較すると咬合力は数分の1になることや、顎骨退縮の問題を、ブリッジの場合は隣在歯を削る必要性や、支える歯に負担がかかることなどを説明し、それぞれの費用についてもわかりやすく伝えます。

②インプラント治療のメリット、デメリットについての説明も必要です。よいことばかりをお話しするのではなく、リスクやデメリットもはっきりとお話ししたうえで患者さんに治療を選択してもらう必要があります。

メリット

デメリット

③患者さんがインプラント治療を選択されたら、診査診断や治療に要する期間、治療の流れ、埋入手術、補綴処置、メインテナンスの必要性などについて説明します。まずは、模型、CT撮影、血液検査などで診査診断を行い、インプラントの適応症であるか、どんな処置が必要なのかを説明します。場合によっては、インプラント治療不適応の場合があることも伝えておきます。患者さんが治療に対して協力的でないことが予想される場合は、「適応ではない」と判断することもあります。事前に歯周病治療や残存歯の処置が必要な場合は、その旨も伝えます。患者さんが「いつになったら上部が入るの?」「手術はどうなるの?」と治療に対して不安を抱くことのないように、治療全体の流れは必ず説明します。インプラント治療の流れを患者さんと医療者双方が理解できるような、手帳のようなものを作成するとよいでしょう。

④そもそも患者さんがインプラント治療をするに至った背景や原因は、歯を失ったことにあります。その多くは、カリエスや歯周病で歯を失ったケースです。どうしてその歯を失ってしまったのかを患者さんに十分に説明し、理解していただくことが必要です。そうして、インプラントを入れた後に、今度こそ患者さんの自己管理でインプラントを「長持ち」してもらえるように、術前の口腔衛生指導は欠かせません。この時点で患者さんが自己管理できることが、インプラント治療を始めるにあたっての大前提となります。さらに、インプラント治療によって上部構造装着後も、予後管理のために定期的に来院していただく必要性についても十分に説明しておきます。

現役の歯科衛生士の方々は、年齢的に考えて、「歯がない」という経験をされた方はきわめて少ないかと思います。たとえば抜歯や矯正の説明をするときに、その経験があれば自身の体験をもとにしてより患者さんの気持ちになってお話をすることができますが、インプラントとなるとまだ経験のない方のほうが多いでしょうから(私も未だ経験がありませんので)、患者さんへの説明に説得力が欠けてしまうこともあります。「歯がない」ことで、患者さんが社会生活や審美的・機能的な面において問題を抱えているのだということを十分に考慮しながら、患者さんが話したり、食べたり、笑ったりすることをインプラント治療が蘇らせるのだということを十分に理解しておきたいものです。実際にインプラントを入れてQOLが向上した患者さんの体験談などを聞いてみれば、患者さんへのインプラントの説明のヒントが生まれてくるはずです。

次回は、インプラント治療における歯科衛生士の役割について具体的にお話しします。

プチコラム「徒然なるままに・・」 「公園で学んだことを講演で・・」

 

イラスト KIM(アートパフォーマー)

イラスト KIM(アートパフォーマー)

 

歯科医院の評判は、とんでもないところで広まっていきます。まだ子供が小さく、公園に連れて行っていた頃、お母さんたちの会話は、なんとも恐ろしいと思ったものでした。「あそこの歯医者さん、いいわよ。よく説明してくれるし、綺麗。スタッフも笑顔で不安がないわ」「あそこは最低。電話の応対悪いし、治したところすぐかけちゃったの。すぐダメになるのよ!」「じゃ、あそこはやめようかしら・・、そっちへ行こう」

なんとも、「口コミ」がすごい影響力であることを思い知ったのです。

たとえ先生の腕が良くても、悪評の会話の中には、院内の不衛生、待ち時間が長い、スタッフの態度が悪い、嫌な顔される。やたらに自費治療を勧める。良い評判は、良く説明してくれる、不安がない、子供を連れて行っても嫌な顔をしない。治療回数が少ない、先生がイケメン?(それは違う?)それが、医院選びの鍵となっているのです。

私たち歯科医療側に立つと、客観的に自分たちの立場が見えなくなります。公園で聞いた生の声を、生かして、今後も「講演」でその事実を伝えるべく、今日も励むのです。一度、悪評が立つと、信頼を取り戻すのはいかに大変か・・そのために、日々の努力、医療のモラルとマナー、安心安全の医療の提供に、努めていきましょう!

「あんなに笑顔がすてきな方が、くわえたばこで病院を出てきて、がっかりだわ・・」 診療室を出てからも、その姿を患者さんは見ていますよ・・

「参考文献」

デンタルダイヤモンド
私の作法 (2)〜患者対応・待合室・ミーティング〜2009年4月

図1

http://www.dental-diamond.co.jp/shop/items/304

次回は、医院内のコミュニケーションについてお話していきます。

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