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小児歯科における低年齢児の診療アプローチ:泣かせないための工夫とは?

著:nishiyama /

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1.診療室の工夫

診療室の環境は子どもの心を落ち着かせるために重要です。医療機関ということを忘れさせるためにも、壁や床に様々な装飾を施すことで、子どもにとって親しみやすい空間を作ります。
特に小児歯科専門クリニックだと、キャラクターのシールや季節のイベントに合わせた装飾を行っているところも多いかと思います。
子どもたちには「歯医者に治療をしにいく」のではなく「遊びに行く感覚」「習い事に行く感覚」で通ってもらえることが大切です。

また、待合室には絵本やおもちゃを置き、診療を待つ間にリラックスできるようにします。院内BGMも効果的で、子ども向けの穏やかなメロディを流すことで、診療室全体の雰囲気を和らげることができます。

2.診療器具の工夫

診療器具は子どもにとって怖いものと思われがちです。そこで、器具の見せ方にも工夫が必要です。
例えば、器具にカラフルなカバーを付けたり、使う前に子どもに優しく説明し、触れさせてみることで恐怖心を和らげます。
子どもにとって身近な器具となるよう、ミラーやピンセットなどをご自宅で使っていただくのも良いと思います。

3.初診カウンセリングの重要性

3-1.コミュニケーションの確立

初診カウンセリングは、子どもと保護者とのコミュニケーションを確立するための重要です。
カウンセリングでは、子どもの性格、保護者の歯科治療に対する姿勢、主訴、生活スタイルなどを詳しく聞き取ります。
これは子どもにとって最適な診療計画を立てることにも繋がりますが、術者と保護者との信頼関係を確立するために非常に重要です。

特に、ご自身の幼少期を思い返してみるとこんな経験、ありませんでしたか?

・自分の親とその親(祖父母)と電話している姿がなんとなく好き
・自分の親が親戚、友達の親と話している姿が好き

これは、自分にとって大切な親が楽しそうに話している姿が子どもにとって安心材料になるためです。
子どもは、親が楽しそう話している姿を見ると自分自身も幸せを感じるため、初診カウンセリングの際はとにかく術者と子どもの保護者と仲良くなることが、今後の子どもの歯科医院へのイメージに繋がるのです。

3-2.不安の軽減

初診カウンセリングを通じて、子どもが感じている不安を軽減します。例えば、子どもが診療に対して恐怖を抱いている場合は、その感情をしっかりと受け止め、優しく説明することで安心感を与えます。
「今日は⚪⚪ちゃんの歯の数を一緒に数えてみよう」
「⚪⚪ちゃんが上手に歯磨きできるところ見せて欲しいな」
などと、簡単な言葉で説明することが大切です。

また、保護者にも治療の流れや効果を説明し、協力を得ることで子どもの不安をさらに減らすことができます。

4.サブカルテの活用法

4-1.詳細な記録が大切

筆者の勤め先の歯科医院では、サブカルテを導入しています。サブカルテには、患者様の性格や保護者の性格、主訴、生活スタイルを細かく記載します。
これにより、診療中に必要な情報を迅速に確認でき、個々の患者様に合わせた対応が可能になります。例えば、音に敏感な子どもの場合、診療中にヘッドホンをつけていただくなどの工夫を施すことができます。

4-2.子どもの好きなことを記載しておく

子どもにとって「歯科医院が楽しい場所」へとしていくために、私は子どもの趣味や好きなキャラクターなども記載しています。

クリーニング中はその子どもの好きな話をし「歯医者さんって自分の好きな話をしていいんだ!」と思ってもらいたいからです。

4-3.継続的に改善していく

サブカルテを活用することで、診療のたびに改善点を見つけ、次回の診療に活かすことができます。
患者様の反応や治療後の状態を記録し、診療方法の改善を図ることで、より良い診療を提供することが可能になります。

おわりに

小児歯科における低年齢児の診療は、子どもの不安を取り除くための工夫が求められます。診療室の環境づくりや器具の工夫、初診カウンセリングの重要性を理解し、サブカルテを活用することで、子どもたちが安心して診療を受けられる環境を提供することができます。

これらのアプローチを通じて、泣かせない診療を実現し、子どもの健康な歯科ライフをサポートしていきましょう。

Introduction

著者紹介

nishiyama

歯科大学歯科衛生士学科卒業後、小児患者や障害者の歯科診療体制や、歯科恐怖症患者について学ぶため歯科大学付属の専攻科へ進学し口腔保健学学士を取得。その後は小児歯科専門歯科医院にて勤務。歯科衛生士ライターは「歯科に苦手意識を持っている人が媒体を通して理解し、歯科を身近に感じることで歯医者に行ってみよう」という気持ちになることを後押ししたいという思いから学生時代に始めた。