災害時、歯科医の機動性向上 ネットシステム構築へ
@S[アットエス] by 静岡新聞 2013年11月27日(水)14時8分
南海トラフ巨大地震などの広域災害を想定し、県歯科医師会が約1700人の会員歯科医を災害支援に動員できるよう、インターネット上で調整を図る「災害支援システム」の構築を進めている。
避難所での診療や遺体の身元確認に当たる歯科医が足りない地域から要請を受け、派遣可能な歯科医を直ちに把握できる仕組みだ。
県外からの応援到着に時間がかかる広域災害で、県内の歯科医をフル活用する態勢を目指す。
災害支援システムは災害発生時に会員の携帯電話などにメールを一斉送信する。
会員は自分の安否や診療所の被災状況のほか、被災地域に赴くことができる場合は期間などを登録する。
診察可能な診療所をネット上の地図に示し、市民が見られる仕組みも予定している。
一方、県内19の郡市区歯科医師会は、どの地域に何人の歯科医が必要かを入力する。
システムを通じ派遣要請と登録者を自動的に照合し、派遣可能な歯科医を選定する。
現在は試験運用中で、会員の登録を進めている段階。
県歯科医師会は毎年3、9月の防災訓練で同システムを使った訓練も行っている。
大規模災害時は外傷で歯が折れるなどして救急治療を要する患者もいる。
また東日本大震災の被災地でも、避難所の水不足で歯磨きなどができず、口の中が化膿(かのう)した患者もいた。
システムを担当する同会の栩木厳也理事は「口の中が不衛生になって病気を悪化させる人や、入れ歯や差し歯を失う人もいる。
被災地に歯科医は必要」と強調する。
診療記録DB化も検討 県歯科医師会 災害時の歯科医の重要な役割の一つが、遺体の身元確認作業だ。
地元の歯科診療所などで治療歴があれば、カルテから身元を特定できる場合もある。
県歯科医師会は郡市区歯科医師会と協力した研修を行っていて、会員全員に参加を呼び掛けている。
ただ、東日本大震災では歯科診療所のカルテが流され、身元確認が難航した地域もある。
このため県歯科医師会では、データを外部のサーバーなどに蓄積する「クラウド・コンピューティング」の技術を使い、診療記録のデータベース化も検討している。
データベース化は、これまでも日本歯科医師会が国に提案してきたが、個人情報の問題もあり、実現できていなかった。
県歯科医師会の柳川忠広会長は「来年度中にも県内で登録に同意する患者を募り、試験事業を行いたい」と意欲を見せている。
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