「歯科医師の需給問題をどうする?」
東京歯科保険医協会主催の「歯科医師の需給問題をどうする?」これからの歯科医療を考えるシンポジウムが4月18日、東京・千代田区平河町の砂防会館別館で開かれた。
南條芳久理事の基調講演を踏まえ、シンポジウムが開かれた。
南條理事は、歯科への投資は、国民の健康の維持を通じて、医療費の自然増の抑制に効果を発揮する。
WHOの提言のように、歯科医師の数でなく、疾病構造や人口構造、そして、技術構造の変化と歯科衛生士等の歯科医師に偏らないマンパワーを生かした、新たな歯科の制度を目指すべきとした。
また、「予防歯科、高齢者の口腔ケアが当面の政策ポイントだ」と指摘した。
ある研究では、誤嚥性肺炎によって入院した場合、平均55日の入院となり、170万円の医療費が必要となる。
これを口腔ケアで予防することで、医療費の削減効果が期待できると強調した。
治療偏重から口腔機能の維持・予防重視へ。
より侵襲性の少ない技術の普及など、歯科医師供給の再検討は、長期的視点に立てば、日本の歯科医療の展望は開かれる。
歯科のマンパワーの政策の見直しこそ緊急の課題とした。
コーディネーターは、田辺功さん(医療ジャーナリスト 元朝日新聞社編集委員(医学・医療担当。東京大学工学部航空学科卒)が務めた。
田辺功
南條先生の基調報告を踏まえ、シンポジウムを行うが、内容も分かりやすかったし、スライドも素晴らしかったと思う。
まず、歯科医師で参議院議員の大久保潔重さんから。
大久保潔重参議院議員
長崎県選出の大久保潔重であり、所属は民主党だ。
私自身、歯科医師であり、東京、神奈川で約3年間勤務し、その後約6年、福岡市博多区で町医者として地域歯科医療に携わってきた。
今から約7年前、歯だけではなく、政治を直すために政治の世界へ入り、地元の長崎の県会議員を一期させていただいた。
そして、3年前に逆転の夏と言われた参議院議員選挙で初当選させていただいた(小沢政治塾の1期塾生)。
歯科医療のあり方で小委員会を作ったが、その座長が桜井充参議院議員で、歯科に対する基本法がないと、歯科保健法の取りまとめをさせていただいた。
政治情勢は難しく、それを成立させることはできなかった。
民主党は政権交代後、再び歯科保健法に取り組んでいるが、川口浩さんと水野智彦さんが衆議院議員として加わり島田参議院議員を含め4名の歯科医師がいるので、これから精力的に理念法の歯科保健法の成立に向け頑張っていきたい。
その後、労働衛生安全法を含め、生活を支える歯科医療を国民にピーアールし、歯科医療に携わる方々の経営を確りと支えるためにこれから頑張っていきたいと思っている。
田辺
南條先生の基調報告に対する感想は?
大久保
資料を見て、改めて歯科医師が過剰なのかと思い、どうすべきたについて私自身も考えている。
供給過多であれば、需要を増やしていくしかない。
数も抑制していかなければならないので、今日の議論の中で突っ込んだ話になると思われる。
田辺
同じく民主党の初鹿衆議院議員の発言を。
初鹿明博衆議院議員
昨年の衆議院議員選挙で、東京・江戸川区から初当選させていただいた初鹿だ。
その前は、2期8年、36歳で都議会議員を務めさせていただいたが、その前は鳩山由紀夫(首相)の秘書を務めていた。
平井駅(総武線)が地元であるが、駅の周辺に6軒の歯科医院がある。
私は雑居ビルに住んでいるが、そのビルの中にも歯科医院がある。
今回のテーマの歯科医師需給問題であるが、二つの観点から問題点が考えられる。
絶対数が多くなっていることが一点。
もう一つは、歯科医師国家試験を難しくしている。
合格しない人がたくさん出ている。
お金をかけて6年間勉強したのに、国家資格が取れない。
これは、弁護士も同じである。
法科大学院をたくさん作ったが、合格できない人がたくさんいる。
資料、その他をみても、極端に歯科医師国家試験の合格率が低い大学がある。
これは非常に問題だ。
せっかく歯医者になろうと心がけ学校へ行ったのに、何年も何年も歯科医師国家試験に不合格となり、人生の敗者となってしまうようでは、わたしはこれは問題だと思う。
田辺
次に自由民主党の平将明衆議院議員。
平将明衆議院議員
私は東京4区の大田区から出ている。
元々は大田青果市場の仲卸の3代目をしていた。
5年前、公募で出て2期目である。
現在、自由民主党では産業経済部会長として、産業経済政策の責任者の立場だ。
また、経済成長戦略の副責任者であるが、なぜ、今日、シンポジウムに呼ばれたのかよく分からない。
先ほどの会長のお話で、「普通の人は、歯科医師需給問題についてどう思うのか」そういった視点を言われたので少しホットしている。
様々問題点が基調報告に出ていた。
例えば、自分たち歯科医師の仕事を子どもたちに継がせたくない、というアンケート結果が出たが、これは歯医者の世界だけではなく、日本のすべての業種でも、こういうことが起きている。
そこで、どのような国家全体として、どのような問題認識で、本場論だけではなく、財政を無視してあれもやります、これをやりますではなく、どのような根本的な政策をやるかである。
結局は、国民のマインドなのだ。
困ったからと言っても、みんなが助けてくれるわけではない。
支える側の大切である。
そのような面から確りと議論をしていきたいと思う。
昨年、反省点として自由民主党は大惨敗をした。
それにはそれなりの理由があると思う。
2006年、骨太の方針を出し、医療費を増加分から毎年、2200億円削減をするという方針を出した。
これは経済成長と少子高齢社会の中で、増大する社会保障費をどうコントロールするのかであった。
国家の財政が破綻をしてしまうと、社会保障政策を含めて、すべての政策が水の泡となってしまう。
そこで政治家としては、責任をもってやらなければならない政策であった。
しかしながら、ダメージは大きかったのだということだと思う。
社会的変化の中で、構造改革は常に必要だ。
うまくいかなかった部分について、どのように総括し臨んでいくのか、問われていたが、衆議院議員前にそれがうまくできなかった。
だから、衆議院議員選挙に大惨敗をしたわけである。
これまでは、政権与党として霞ヶ関とやってきたが、野党になったことで外の声を聞き、できること、できないことは何故できないかをよく説明する、ここに尽きるのと思う。
歯科医師の議員が歯科の話をするのは当たり前。
私は金融、経済を担当しているが、我々のような立場の者が歯科の話をすれば注目されると思う。
田辺
期待のこもった話だ。
それでは、日本共産党の小池晃参議院議員。
小池晃参議院議員
私は医者として今日は参加をしている。
歯科は医科以上に崩壊状態にあると私は認識をしている。
是非、先生方と一緒に力を合わせて、これを確りと立て直していきたいと思っている。
歯科医師の需給問題考える前提として、どのような歯科医療が必要なのか。
今の崩壊の歯科医療を立ち直らせるためには何が必要なのか。
それなしに歯科医師の需給問題に入ってしまうと、低きに流れとしまう(質も低下する)。
歯科医療の大切さで、誤嚥性肺炎、QOLなども言われているが、歯の本数とアルツハイマーの問題もある。
また、噛み合わせがいいと平衡バランスもいわれている。
介護の方面でも、改善に役立つと、いいこと尽くめだと思っている。
メタボ健診の胴回り何センチには、エビデンスがなく迷惑な話だ。
問題点は3つある。
患者さんの数が減っている。
3割の患者負担増を境に、患者数は激減している。
経済的に困ったらまず、歯科へは行かない。
格差と貧困の広がりの中で、経済的理由で歯科に行かない方は2割を超えている。
窓口負担の軽減。
また、医科と比べて歯科は新しい技術がほとんど保険収載されない。
来るべき患者さんが来られる仕組を確りと作っていく。
診療報酬問題、これは後で細かい点が出ると思う。
この間の、あまりの削減路線をカバーする診療報酬改定になっていない。
歯科の裾野を広げる必要がある。
削る抜く埋める、というゼネコン型の歯科医療だけではなく、やはり歯科医療の予防、公衆衛生分野、あるいは介護などの分野で裾野を広げていく。
また、地域偏在も医科以上にあると思うので、これをどうしていくのか。
これらのことを実行し、なおかつ歯科医師の需給問題が出てくれば、制度的に改善していかなければならないと思う。
今日の論議の中で、我々の政策提言をやっていきたい。
記事提供
© Dentwave.com