海外歯科技工(輸入入れ歯)に患者の86.5%反対

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 第2回 シンポジウム歯科技工の海外委託から見えてきたもの(中)主催:歯科医療を守る国民運動推進本部

(敬称略〉

総合司会:中込敏夫(東京都歯科技工士協議会副代表)

川上詩朗弁護士の基調講演についで、以下パネルディスカッションが行われた。

座長:歯科技工士 安藤嘉明(元日技役員、愛知県)パネラー:医療ジャーナリスト田辺功(元朝日新聞編集委員)歯科医師会 成田博之(保団連理事、青森県保険医協会歯科部長)歯科技工士 金田米秋(東京都歯科技工士協議会代表)歯科技工士 脇本征男(主催者代表)安藤 

  この2年間の戦いから、国の姿勢がはっきりと見えてきた。国は歯科技工の海外委託の実態を把握していない。国民の健康と安全、安心の歯科医療、生活を守る姿勢が欠如している。歯科技工士制度の形骸化、無視である。国は歯科技工の海外委託の結果責任を歯科医師おとび歯科技工士に転嫁している。歯科技工の海外委託と国内の歯科技工を並存させていく。以上のことを踏まえ、歯科技工士として何ができるのか。

1)国民の安全安心の歯科医療には何が必要か。 2)日本乃歯科医療制度を守るためには何が必要か。 3)歯科医療のグローバル化には何が必要か。

の観点からパネルディスカッションが行っていきたい。

成田

 私と歯科技工士さんとの付き合いは長く、学生時代からである。北海道で歯科医療研究会を作った。歯科医師会、歯科技工士、歯科衛生士たちと一緒に休みなどを過ごしていた。 その後、5年ほど北海道で過ごし、青森県弘前市で開業したが、歯科技工士さんとの交流も続いており、歯科技工の海外委託が起こった時には、何でそのようになったのか、と思った。歯科医療では、歯科医師がチームのリーダーの立場であるが、今でも私が付き合っている歯科技工士さんは、優れた人がたくさんいることを知っている。その方々がこのような扱いをされることは、どのようなことなのだろうか、と憤懣やるかたない思いがした。 海外歯科技工問題に取り組むきっかけは、私の妻が生協の役員をしていたが、いわゆる中国の餃子問題が出る前から、生協がコスト問題から安全より価格を優先していたために、そのことを問題として提起してきた。しかし、全然受け入れられなかった。これは海外歯科技工問題と同じではないかと私は思った。コストを優先して、一番肝心な患者さんの歯科医療の安全を無視している。ここに至るまで色々の経緯はあるかもしれないが、国民の健康と安全を国はどのように考えているのか。その本質をきちんと捉えなければならない。

金田

 歯科医師、患者さんが知らない間で、このような問題が起きている。日本の歯科技工料よりさらに安い技工料は、根本的に考えていく必要がある。歯科技工士の顔が患者さんに見えて、患者さんに日本の優れた歯科技工を選択していただくようなシステムが構築されることが期待される。そのようになれば、海外歯科技工問題の先が見えるようになるように思う。

田辺

 私はこの訴訟が起きた時には、まだ朝日新聞社にいた。早速、脇本さんにお聞きして、新聞に書いたわけであるが、残念なことに東京本社版と西部本社版に載ったが、名古屋版と大阪版には載らなかった。海外歯科技工問題に私はまず驚いた。 しかし、海外歯科技工問題が朝日新聞内では、よく理解されていなかったのかもしれないと思う。これは安全の問題であり、歯科技工士という仕事がどのようになるのかという根本の問題を含んでいる。 特に驚いたのは、日本歯科技工士会がそれを容認していたことである。一言で言えば、海外歯科技工問題はメチャクチャな話である。歯科医療に関する患者アンケートの結果(保団連)では、海外歯科技工(輸入入れ歯)に、86.5%反対していた。

脇本

 訴訟の原告の立場で発言させていただくが、今までの訴訟経緯はみなさんご存知なので、改めてここで言うべきことはない。私たちの戦いは、みなさんが現在、抱えている問題であると思っている。これは一歯科技工士のみならず、歯科医療全般の問題である。やはり国民歯科医療の立場からも、歯科技工士制度を崩壊させてはならない、ということが我々の腹の底にないとこのような運動はできない。 藪から棒に我々は訴訟を起こしたのではない。これを金儲け主義で、勝手に訴訟を起こしているのだろう、と思っている人もいるようであるが、そのように考えている方には一つ考えてもらいたい。 我々は自分の仕事を持ちながら、訴訟を起こしており、どこからもお金が入る身分ではない。自分の腕が頼りの歯科技工業である。ほとんどが一人ラボの経営者だ。もし、金がほしいなら訴訟を起こさず、自分で稼げばいい。何故、訴訟まで起こして、損害賠償を求めるのか。海外歯科技工は日本の歯科技工士の危機であり、これをそのまま放置することは、歯科技工士の恥でもあると認識してもらいたい。 我々は先輩たちの努力によって、歯科技工士になった。歯科技工士制度を作っていただいたのは、先輩たちのおかげである。その制度を現在の若い歯科技工士の将来に託したい。歯科技工士制度が危ないという時に、歯科技工士自らが戦わなくして誰が戦うのか。その考えに基づき我々は、人が何と言おうとこの歯科技工士制度を守り、確立して次世代に送りたいと思っている。10月14日に東京高裁で判決が出るが、如何なる判決が出ようとも、今後も国民の歯科医療を守る戦いを続けたい。歯科技工士制度の維持、発展に寄与していくことをここで誓いたい。

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