平成17年通達は、日歯と日本歯科技工士会が承認

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第2回 シンポジウム歯科技工の海外委託から見えてきたもの(下) — 1主催:歯科医療を守る国民運動推進本部

(敬称略〉

総合司会:中込敏夫(東京都歯科技工士協議会副代表)

以下パネルディスカッションが行われた。

座長:歯科技工士 安藤嘉明(元日技役員、愛知県)パネラー:医療ジャーナリスト田辺功(元朝日新聞編集委員)歯科医師会 成田博之(保団連理事、青森県保険医協会歯科部長)歯科技工士 金田米秋(東京都歯科技工士協議会代表)歯科技工士 脇本征男(主催者代表)安藤 

国民の安全安心の歯科医療には何が必要かの命題に入りたい。

 月刊保団連の4月号に成田先生が「海外技工物の安全性を考える」と題する論文を発表されているが、患者の9割が海外技工物を知らない、というデータについて率直な感想を伺いたい。  海外技工物が雑貨扱いとは、知らなかった歯科医師が68.4%いらっしゃった。一歯科医師のお立場からお聞きしたい。

成田

 安全性云々というより、青森県の全市町村議会に資料をもって行って説明したところ、意見が採択された。議員たちは資料説明にまず、「ええ!」と驚く。「歯科技工物は国によって、きちんと管理されているとみんなが思っている。まさか歯科技工の海外委託のような問題が、日本で起こっているとはまったく知らない」と驚くのが現実である。「そのようなものを、自分の口の中にはとてもではないが、入れてはいられない」とみんなが思っている。これが安全の根本的な問題と思う。 歯科医療の安全性には、次のキーワードがある。材質もちろん品質上の安全性。製品がちゃんと保証されているかどうか。契約がきちんとされているかどうか。社会的姿勢がきちんと整っているいかどうか。危機管理。何か問題が起こった時には、きちんと対応できるのか。安全性のフィードバックができるかどうかである。安価であれば、金属材料の中に鉛、錫、亜鉛、カドミウムが含有される必然性もある。それは陶材の安全性についても言える。仲介業者は、「自分の取り扱っているところの製品は、ちゃんとした物を使っているから、安全だよ」という話をよく聞く。また、国や厚生労働省、マスコミは、危険な物が出てくれば取り上げるが、「何も危ないものは出ていないじゃないか」という話をする。この論理を覆すには、安全とは何かをきちんと押させて置かなければならない。 問題なのは、自主規制でいいのかである。国、厚生労働省は、自分でやって自分で責任を持てやれば、いいでなかいかといことだ。この自主規制の脆さは、食品の安全性で明らかである。 また、危機管理はどんなにシステムを作っても、問題が出てくる。最悪のことを前提に考えて、対応しなければならない。これが厚生労働省には全く抜けている。例えば薬剤では、副作用情報として副作用が出たら必ず報告しなければならない。副作用情報は集約して公表する。本来、海外委託歯科技工物も同じである。副作用が出ても公表しなければ、安全性は絵に描いた餅である。厚生労働省は、海外委託歯科技工物の輸入量も把握していない。今後も把握するつもりはない。これは、厚生労働省が安全性のいろは、をもとっていないことが明らかである。海外委託歯科技工物が、口の中で割れてしまった、実際に起こっている問題である。その再製を希望したらが断られてしまった。我々の調査では、安全性を危惧する声が圧倒的に多かった。歯科医師、歯科技工士、患者さん、自体もみんなが、海外委託歯科技工物には反対をしている。それなのに、何で国が容認しているのか。いったい何のための国なのか、を考えざるをえない事態と思う。

 

安藤

 海外委託歯科技工物の歯科医院の依頼先(取引先)が、(仲介・受託する)歯科技工士所が84.7%であるという驚くべき数字がある。歯科医師に無断で、海外委託する歯科技工士所も増えている。これは経済的に追い込まれている歯科技工士のモラル-ハザードの問題と、歯科技工指示書の趣旨が徹底されていないとも思われるが、このどのように考えるか。歯科技工物の最終的オーダー先は、患者さんであるという認識が薄らいでいるのか。

金田 モラル-ハザードは、道徳的な問題であるが、最終的には患者さんの満足度になると思う。歯科医師は知らないところで、また、患者さんの知らないところで歯科技工の海外委託が行われている。メリットは日本の歯科技工料金よりもさらい安い。また、歯科技工料金をなるべく安くするという体質が、歯科界には昔からあり、その延長として海外委託問題があると思われる。一方では、いい物を求めて高い歯科技工料を払う歯科医師もおられる。若い歯科医師は、税理士の指導もあってか歯科技工料をなるべく、10%〜15%に押させたいと考えているようである。このような構造を変えない限りは、歯科医療の技術評価が低い中で、利益が出しにくい状況となっている。歯科技工士の顔が見えない。歯科技工士の存在を、患者さんにアピールしていければいいと思う。最終的に患者さんが選択する形、構造に変える必要があるのか考えている。

安藤

 患者さんの立場で、何を一番の望むのか。国内法で数々の規制があるが、海外委託技工物で安全、安心が薄れてきていると思うが、報道するメディアの立場で何かアドバイスをお願いしたい。

田辺

 歯科技工士物は長い間、口の中に入れる物なので、安全性が一番問われている。これまで、金属が口の中に溶け出してアレルギーが起こるなどのいくつかの事件も起きている。そこできちんとした材質のものでないと、安全は図られないと思う。歯科補綴物が雑貨である、ということがおかしい。これは厚生労働省が、突然出してきたものと思われる。もし石鹸と同じような雑貨であるとするなら、石鹸の扱いには国家資格などはいらない。私はやはり、歯科補綴物は人工臓器だと考えている。薬事法の規制下に医療器材があり、歯科補綴物は人工臓器あるはずであることは、よく調べはいないが、過去に遡れば答弁でもされているはずだと思う。あるいはそのように定義されているものは、どこかにあるはずである。私は40年くらい朝日新聞社で、医療担当の記者をやってきて、歯科の記事も何遍も書いてきた。入れ歯の材料は、雑貨なので誰が売ってもいい、入れ歯は誰が作ってもいいなどという話は、今回の訴訟までは聞いたことがない。厚生労働省は過去にも、突然変な通達を出したり、変なことをしている。それを通すかどうかは、国民の判断かみなさんの専門家の判断となる。つまり追認されるかどうかが、一番の問題だと思う。いずれにしても、中国で製作された歯科補綴物は、誰にもチェックできないわけなので、やはり国が大きな役割を放棄していると言わざるをえない。はっきり言って、言語道断である。呆れ返ってものが言えない、というようなレベルの話だと思う。

安藤

 歯科補綴物は人工臓器として常時、患者さん口腔内に装着されているが、歯科補綴物の安全、安心を保持するために、国内法では数々の規制がされている。しかし、その反面海外委託歯科技工物には何らも規制がない。法規制についての腹案はないか。

脇本

 本来、法案は趣旨、目的をもって国会で作られる。一方、行政はその法律に従って行政指導をするのが、行政の仕事とされている。しかし、今回の海外委託の場合は、平成17年通達では、歯科技工士の立場からは考えられない内容で行政指導をした。つまり、歯科医師が全部責任を持てば可能だという、海外委託である。ある意味で、これは行政権の乱用だと思っている。ところが、ごく一部の人たちは、厚生労働省がやることだから、仕方がないんだという諦めもあるようだ。問題なのは、平成17年通達は、日本歯科医師会と日本歯科技工士会が承認したのだという事実があったことである。これに、驚いている。 なるほど、日歯、日技も我々が訴訟以外で、何とかみんなのことを考えてもらいたい、進行協議で提案された協議のテーブルについてほしい、とお願いしても、時間が取れないという返事であった。日本歯科技工士会は、何のための組織なのだろうかと、我々は怒っている。隔靴掻痒である。靴の外から痒いとことをかく、というこの思いを、みなさんはお分かりになるだろうか。それだ、今の組織の実態とするならば、我々は我々の目指すところで、きちんと歯科技工士の業権の確立を目指していくしか、方法はないのかと思っている。歯科技工士法は誰が、何の目的で、誰のためにつくったのか。この法律は、我々の先輩たちが、作ってほしいと申請をして、国の責任できたのである。あくまで、国会でできた法律である。これを、国自らが違法行為と思われる平成17年通達を出した。それを定着させようとする。まさに本末転倒であろうと、私は考えている。腹案はないが、現行法を守っていくことが、国民歯科医療の安全、安心が守られるのである。我々は、国民を含めて協議の場を設けてみんなで、国の法の抜け穴について、もきちんと論議していきたいと思っている。

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