国保の「お知らせ」と領収書でズレ 医療費の額、確認を
中日新聞 2013年8月8日
国民健康保険(国保)加入者に送られてくる「医療費のお知らせ」。
ここに記載された額と医療機関で受け取った領収書の額が違うという声が、本紙生活部に届いた。
調べてみると、医療機関の裁量やミスで、実際とは違う額で領収書を出していたことがわかった。
医療費をきちんと確認し、疑問があれば問い合わせをしたい。
愛知県に住む70代の女性は、国保に加入し2カ月に一度、市役所から「医療費のお知らせ」が届く。
受診した医療機関の領収書と照らし合わせてみると、一部で額にズレがあることに気付いた。
「不正請求ではないか」と思ったが、直接医師に聞きづらいため、本紙生活部に連絡した。
女性が通う眼科と歯科について記者が書類を確認した。
眼科は領収書が800円で、一割負担のため医療費総額は8,000円。
しかし、医療費のお知らせの当該月を見ると、10,950円になっていた。
歯科では自己負担220円の治療を二回受けて医療費総額が4,400円だった月で、医療費のお知らせは5,340円だった。
そこでレセプト(診療報酬明細書)の開示請求をしてみた。
2週間後に開示決定の連絡が来たので市役所窓口で受け取った。
しかし検査や投薬の専門用語が並び、女性は「実際に受けたかどうかわからない」と話す。
眼科の医師は取材に「カルテが2ページにわたり、片方の分を見落とした。領収書は検査の一部が抜けた額だが、こちらのミスなので追加請求はしない」と説明している。
歯科では、受診ごとにレセプトの内容が違っても領収書の額は同じ220円になっていた。
この医師は「診療報酬の計算上、同じ診療内容でも点数を上乗せできる場合がある。患者さんを混乱させないように同額で領収書を出した」と話す。
レセプトの「医学管理料」という項目の中には、診療科によって月に1〜2回のみ請求できる点数がある。
患者側には非常に分かりにくい制度になっている。
開業医師、歯科医師らでつくる愛知県保険医協会の加藤真二事務局主任は「小規模の医院では電子化が進んでおらず、事務担当者が診療当日にレセプトの計算をできないところもある」と話す。
人手が足りなかったり、担当者の習熟度が追いついていなかったりして、現実的に難しいという。
医療費に疑問がある場合はレセプトの開示請求ができるが、その際、医療機関に照会がいく。今回の眼科医は「直接聞いてほしかった」と女性に電話してきた。女性は「直接聞きにくいから開示請求したのに」と話す。
ただ、領収書と医療費のお知らせで通院日数が違う、身に覚えのない手術や検査が入っている、などの場合は、不正請求の可能性がある。
愛知県医務国保課の担当者は「疑問があれば、県などに情報提供してもらい、医療機関の指導につなげたい」と話す。
領収書、医療費のお知らせは保管しておき、きちんと確認することが大切だ。
(田辺利奈)-------------------------------<レセプト>医療機関が、患者に行った診療の報酬について、市町村や健康保険組合などに請求するための明細書。保険診療の場合、処置や検査などの医療費は、国が基準を点数で決めていて、1点10円で計算する。
レセプトは月単位で作成される。患者の氏名、性別などの個人情報、療養の給付なども記載されている。
レセプトの開示請求は、国保の場合は市町村の窓口で、健康保険の場合は組合の窓口でできる。
ただ、患者に告知していない病名があるなど支障を来すことがあるため、開示請求があった旨、医療機関に照会がある。
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