「日の丸医療」を世界に売り出そう 安倍首相が決意

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年6千億円に及ぶ医療機器の輸入超過解消が目標だ

「医療は成長産業」と捉える"経産省流"への大転換である

第2部 官僚たちの模索(上)"経産省流"への大転換

産経新聞 2013年9月27日 09:17 

「この機械は、わが国に持ち帰れますか」。

7月1日、愛媛県新居浜市にある住友重機械工業の工場に、サウジアラビアのアブドゥルアジーズ・トルキスターニ駐日大使の姿があった。

視線の先にあるのは、がん細胞に陽子線を照射し破壊する「サイクロトロン」という大型装置。

商談成立となれば数十億円の大型契約となるだけに、担当者の説明にも熱が入る。

大使が工場視察を思い立ったのは、安倍晋三政権が医療・健康産業を成長戦略の柱に据え、日本の医療機器メーカーに興味を抱いたのがきっかけだ。

「日の丸医療」を世界に売り出そう。安倍首相がその決意を明らかにしたのは4月である。日本記者クラブの記者会見で、「日本は世界トップレベルの技術を持っている。国際医療協力を新たな成長の種にしたい」と宣言したのだ。

◆病院丸ごと輸出

安倍政権が描く医療の国際展開は、経済産業省が長年温めてきた構想である。

世界における医療機器や医薬品、医療サービスの市場規模は500兆円を超し、成長率は9%近い。「世界の成長を取り込まない手はない」(経産省幹部)。

年6千億円に及ぶ医療機器の輸入超過解消が目標だ。

これまで日本が行う国際医療といえば、政府開発援助(ODA)や医師らの個人的活動による人道支援が中心であった。

「医療は成長産業」と捉える"経産省流"への大転換である

重視するのが、病院と医療機器とをパッケージで考える「病院丸ごと輸出」だ。

同省商務情報政策局の石川正樹審議官は「まずは病院サービスを持ち込む。

『日本の病院は素晴らしい』との評価を得て初めて機器も売れる。

現地の人に使い方も教えなければ定着しない」と解説する。病院を"ショールーム"に、現地の医師たちに医療機器を知ってもらおうとの発想だ。

◆時代遅れの声も

しかし、こうした"経産省流"は「時代遅れ」「世界常識を分かっていない」との批判も少なくない。

ODAを活用して、日本政府が病院建設支援を積極展開したのは1980年代だ。

当時から国際医療支援に携わってきた国立国際医療研究センターの仲佐保国際派遣センター長は「いま求められているのは保健システム全体の構築だ。病院を建てるだけでは動かない。医療機械だけでもダメ。看護やリハビリを含め総合的取り組みが必要となる」と世界の潮流を解説する。

国際医療支援を長年続けてきた医師たちほど、医療を「成長産業」と捉える"経産省流"の国際展開に違和感を覚える。

「商業ベース」が前面に出ることへの懸念も強い。非政府組織(NGO)「アフリカ日本協議会(AJF)」の稲場雅紀プログラム・ディレクターは、「自国の企業利益の最大化を図る態度で臨めば、途上国の反発を招き、受け入れられない」と危惧する。

もちろん、経産省も「ただ金もうけすればいいわけではない。相手に喜んでもらう意識が必要だ」(幹部)と同調はしている。だが、政府内で具体策が検討された形跡はない。

◆厚労省と温度差

3月から5月にかけて開かれた官房長官や副長官、医療機器の業界関係者、学識経験者で構成する健康・医療戦略参与会合。

関係者は「産業成長の具体策が話し合われただけで、相手国の立場に立ってどう説明するかは話題に上らなかった」ことを明かす。

こうした政府の姿勢に、国立国際医療研究センターの武田康久国際医療協力部長は「医療は生きることの根幹に関わる分野。やるからには、その国の医療制度を作り上げるぐらいの思いが必要となる」と警鐘を鳴らす。

医療政策を所管する厚生労働省と経産省の温度差も大きい。

厚労省幹部からは「どうして医療の国際展開が成長力なのか分からない」との本音も漏れる。

議論が生煮えのままスタートした"経産省流"の国際医療展開は、「成長戦略」への盛り込みを優先したとの印象がぬぐえない。

途上国に寄り添うことで、世界の尊敬を集めてきた「日の丸医療」。

成長戦略の下で、長年にわたって培った信用力をどう引き継ぐのか。

安倍政権が目指す国際医療展開の真価が問われている。

   ◇

医療を成長戦略の柱に据える安倍政権。

だが、医療を「成長産業」として捉える考え方には、批判も少なくない。

日本がこれまで築きあげてきた信用を維持しながら、新たに世界に打って出るには何が必要なのか。

第2部では模索する官僚たちに焦点を当てる。

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