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2018/05/16

次の世代の歯科医師たちが夢を持ち、夢を語りあえるように その②

次の世代の歯科医師たちが夢を持ち、夢を語りあえるように その②
―Doing:これからの歯科医療はどのように変化すべきか?―

前回のこのコラムでは、歯科大学の卒業直前の学生たちが、自分の歯科医師という職業の将来に夢をもてない、語れないというショッキングな話をいたしました。今回からはその対策として歯科大生や若い歯科医師たちが、夢を持ち将来を語ることができるようになるためにはどのような方略が必要なのか、何を変えなければならないのかをシリーズで考えてみたいと思います。
歯科医療は現在大きな変革点を迎えています。従来の歯科医療は、う蝕や歯周病を「みつけて治す」ことに集中し、咀嚼ができることを歯科医療の最終目標としていました。しかし近年、口腔の環境や機能の改善が、要介護状態の発生を抑制し、認知症の予防につながることなどが証明されたことにより、口腔機能(摂食、嚥下、発音、咀嚼)を健全に保つために「予測して予防する」歯科医療を確立し、口腔の健康から全身の健康と健康長寿をめざすことが歯科医療の最大の目標となりました。つまり、歯科医療の目的が「咀嚼」という局所的なものから「全身の健康、健康長寿」という全身的なものへと切り替わったわけです。この目標はまさに的を得ており、ピカピカに輝いています。しかし、多くの歯科医師にとって、具体的な対応や個人としてどんなステップアップを必要とするのかについては、全く見えてこないのが現状でしょう。「総論賛成でも各論不明」という状況だと感じます。いわば、「クラス一番をめざしましょう」と言われていた中学生が、突然、明日から「世界で一番を目指しなさい」と変更され、目標が気の遠くなるほど拡大してしまったわけですから、何から手を付けてよいのかがわからない状態だと考えます。したがって、ここからは以下の2点に絞って若い歯科医師が夢を持ち、将来を語ることができる方略を検討してみようと思います。そう、DoingとBeingです。
  • これからの歯科医療はどのように変化すべきか?(どうしたら、現在の閉塞感から抜け出せるのか?)
  • これからの歯科医師はどうあるべきか?

1.これからの歯科医療はどのように変化すべきか?(どうしたら、現在の閉塞感から抜け出せるのか?)

歯科界の現在の閉塞感は、「歯科医師過剰、需給バランスの悪化」が大きな原因であるといわれています。歯科医師の適正数は、人口10万人に対して歯科医師数50人といわれています。2010年の統計では福井県以外は、すべての都道府県で適正数である50人をはるかに超えてしまっています。東京では、人口10万人に対して歯科医師は120人であり過飽和の状態だとされています。2014年、日本歯科医師会は文部科学大臣に「歯科医師需給問題に対する日本歯科医師会の見解」を提出しています。これによれば、現状では歯科医師数が約10万人おり、新規参入歯科医師数(国家試験合格者)は年間約2,000人。適正歯科医師数は82,000人が上限であり、今後、新規参入歯科医師数は1,500人を上限とし、これが実現することにより20年後、人口10万人に対して歯科医師数71名になると報告をしています。また、厚生労働省が開催している「歯科医師の資質向上等に関する検討会(日本歯科医師会や日本歯科医学会から何名かの歯科医師も委員として参加しています)」(この検討会の名前も失礼だとは思いますが・・・)の資料では、歯科医師数はこの20年間で2万人増加しており、2029年には14,000人が過剰となるとし、歯学部定員の削減、国家試験合格基準の引き上げを提案しています。
日本歯科医師会も厚生労働省も歯科医師過剰問題の解決には、歯科医師を減らすことのみを対策としているわけです。それでよいのでしょうか。仲間の首を切ることで、既得権のある者たちだけが生き延びようとしている構図にみえてしまいます。民主主義の世の中で、仲間の数は力なのではなかったのでしょうか。私達が治療した大切な患者を引き継いでくれる若き歯科医師たちを苦しめる対策が正しいのでしょうか。現在歯科界は、小さなピザを皆で分け合って食べているので、各人のおなかがすいてしまいます(図1)。当然、食べる人を減らせば良いのですが、これでは孤独な寂しい食卓です。何の会話もない冷たい食卓です。それではどうすればよいのか。会話を楽しみ、明るい食卓を囲み、皆がおなかいっぱい食べられるように、大きなピザに変えればよいのです。つまり、歯科医療のパイを拡大すればよいのです。人口10万人に対して歯科医師数が200人も300人も必要となるほど、歯科医療の守備範囲を拡大することが最重要課題であると考えます。仲間の首を差し出す前に、大きなピザを作ることに知恵を出し合うべきでしょう。
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政府は「健康寿命」を健康日本21および第2次健康日本21の目標キーワードとして用いています。ご存知の通り、わが国は高齢化率26.7%を超え世界一の超高齢社会を形成しています。平均寿命は延びましたが、その分、健康寿命との差が大きくなり、日常生活において男性は9年間、女性は12年間もの間、誰かの世話にならなければ死ねないのが現状です(図2)。平均寿命と健康寿命の差が縮まれば、元気な高齢者が増加し、だれもが望むピンピンころりが実現できるのです。健康寿命を伸ばし、健康長寿を達成するために、歯科医療が大きなカギを握っているということが様々な報告から証明され始めています。
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具体的なエビデンスの紹介や今後の歯科のありかた等は、紙面の関係から次回のコラムに回すことにいたします。ご期待ください。
矢島 安朝(やじま・やすとも)
  • 東京歯科大学水道橋病院 病院長

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