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歯科医師のためのストレスマネジメント
- 著:nishiyama /
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歯科医師が感じやすいストレスの種類
歯科医師が感じやすいストレスをよくあるものから並べると、以下のようになります。
● 経営に関するストレス
● スタッフに関するストレス
● 患者に関するストレス
● 院内環境に関するストレス
● スケジュール管理に関するストレス
スタッフに関するストレス
スタッフの採用、研修、維持は容易ではありません。求人倍率20倍以上とされる歯科衛生士は、就職・転職市場において引く手数多であり、医院側としては競争率が高いため、人手不足に陥ることも少なくありません。また歯科衛生士の求人倍率が高いという状況は、逆に捉えると彼女らは「いつでも転職できる」という状況にあります。多額の費用をかけてやっと1人採用しても、すぐに転職されてしまうことも多々あるのです。
加えて彼女らには女性社会独特の問題もあり、スタッフ同士の対立やコミュニケーションに問題が生じることもしばしばあります。
患者に関するストレス
歯科医師としては使い慣れているものや見慣れている光景であっても、患者にとっては歯科が恐怖を感じやすい場であることを忘れてはいけません。歯科に対して強い不安と恐怖心を抱いており、対応する上で常に注意を要するような患者と日々関わるのは、歯科医師にとってストレスになることがあります。
加えて情報社会である今、患者はしばしばインターネット上で独自の情報を仕入れてきます。そのため「このサイトにはこう書かれていた」「テレビではこう言っていた」等と、歯科医師の提案に同意を示さないことがあります。これにより繰り返し説明が必要になり、ストレスにつながることもあります。
院内環境に関するストレス
院内環境に起因するストレスは、しばしば見過ごされます。例えば狭い作業空間について考えてみましょう。日本の開業歯科医院は小規模で作業スペースが狭いことがほとんどです。これにより物理的な制約感を感じ、ストレスが増大します。勤務医でいくつもの勤務先を持っていたり、複数の医院での経験があるほど、それぞれを比較することでさらに不満が増してしまうことがあります。
スケジュール管理に関するストレス
勤務先や歯科医師によっては、朝の診療開始時間から夕方の終了時間まで、1日の診療スケジュールがみっちり詰まっていることも少なくありません。特に非常勤で週に1回のみ診療を担当している場合は、担当の患者はその曜日にしか予約を取ることができないため、過密なスケジュールになりがちです。またこういった非常勤先が複数あると、毎日過密な診療スケジュールとなり、疲労とストレスが蓄積してしまいます。これはプライベートにも直結します。
ストレスマネジメントの方法
歯科医師が感じやすいストレスの緩和法はいくつかありますが、それぞれがどういったストレス・悩みに対して効果的であるか解説します。
コミュニケーションスキルを向上させる
歯科医師が感じやすいストレスの多くは、適切なコミュニケーションスキルの習得によって大幅に軽減させることができます。スタッフや患者はもちろん、医院を経営する上で関わる業者・メーカーの担当者、他院の院長・スタッフ等、高いコミュニケーション力があることでどの場面でも良い結果を得ることができます。
「高いコミュニケーション力」というと、上手く話す力、上手く表現する力を想像しがちですが、コミュニケーションの基本は相手の話を聞くことから始まります。具体的には、相手の言葉をそのまま受け取るだけでなく、非言語的なメッセージや感情も理解しようとする姿勢が重要です。これにより日々患者やスタッフからの情報を正確に受け取り、適切な反応や対応を行うことができます。これを続けていくことで対人関係のトラブルを未然に防ぎ、スムーズで効率の良いやり取りが可能になり、意見を求められた際も正確に応えることができ、さらには彼女らからの信頼を得ることにもつながります。
セルフケア
「適度な運動でストレス解消」というのはよく聞くフレーズでしょう。しかし日常的なストレスの解消だけでなく、一日中座りっぱなしで上半身に疲労の溜まる姿勢になりやすい歯科医師にとっては、特に効果的です。ただジムで汗を流すだけでなく、運動をセルフケアの一環として組み込むことで、心身の健康を保ちより充実した日々を送ることができるかもしれません。
例えばマインドフルネス(瞑想)は、ストレス軽減に非常に効果的であるとされています。ヨガや森林浴をしながらのウォーキングなど、意識的に呼吸と身体の動きを調和させることは、精神面で日常の忙しさから離れるのに役立ちます。自然光の下で行う運動は、ビタミンDの生成を助け、睡眠の質を向上させる効果もあります。
また時間が限られている歯科医師にとって、HIIT(高強度インターバルトレーニング)は、短時間で高い運動効果を得られるため効率的です。数分間の高強度運動と短い休息を交互に繰り返すことで、心肺機能を向上させ、カロリーを大量に消費することができます。この種のトレーニングは、幸福感を高めるホルモンであるエンドルフィンの放出を促し、気分を明るくさせる効果もあります。
タスク・時間管理方法を見直す
朝出勤したらまず、その日のタスクを優先度順にリストアップします。優先度が低いものは明日以降に回す等、1週間のスケジュールを考慮しながら時間の管理方法を見直してみるのも一つの方法です。特に重要なのは、他の予定を考慮しながら、初めに一つひとつのタスクに取り組む時間を決めてしまうことです。「30分」と決めて始めたら、タスクが終わらなくても30分が経過したら手を止めます。終わらなかった分は明日以降のタスクに時間を決めて組み込み、別のタスクに取りかかります。このように時間を管理しつつ、取り組む作業も切り替えていくことで、集中力を維持し効率を高めることができます。
専門家への相談
自身でさまざまな工夫をしたにも関わらずストレスの改善が難しい場合は、迷わず専門家へ相談しましょう。カウンセラーや心療内科の医師等の専門家に相談することで、新たな視点でストレスへの対処法を考えることができます。精神的なストレスは顕在化しにくく、自覚が難しいことも多いため、自身にとって大きな負担となる前にためらわずに相談することが重要です。
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