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歯科医院の経営において、業務効率化やデジタル化への関心は年々高まっています。しかし、「デジタル化」と一口に言っても、その対象は多岐にわたります。今回、Dentwave会員を対象に実施したアンケート調査では、歯科医師が実際にどの業務領域のデジタル化に関心を持っているのか、その実態を明らかにしました。

【歯科医院のデジタル化最前線】 Dentwave会員調査で見えた「紙カルテ問題」の実態と解決策

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デジタル化への関心領域:4つの優先順位が明確に

調査の結果、歯科医院においてデジタル化したい業務は、次のグラフのように4つのグループに分かれました。また、この4つのグループの順番を踏まえると、歯科医師の「デジタル化の優先順位」が浮かび上がってきます。

第1段階:保険請求や会計に関わる業務

  • 患者の医療データ管理(47.2%)
  • 受付・会計(45.7%)

第2段階:集患や診療に関わる業務

  • 患者予約(35.5%)
  • 紙のカルテ(サブカルテ*)(35.5%)

第3段階:バックオフィス業務

  • 技工指示書(26.9%)
  • 経理や労務(19.3%)

第4段階:スタッフの採用・教育

  • スタッフ採用(3.0%)
  • 研修(1.5%)

第1段階のデジタル化は、レセプトコンピュータや電子カルテの普及に伴い、すでに多くの医院で進んでいる領域のため、実質いま注目すべきは「第2段階」と考えられます。第2段階においては、患者予約は、近年多くの企業がサービス提供を開始しており、一部のレセプトコンピュータには標準搭載されるなど、すでに解決策が整いつつある領域です。一方、紙のカルテ(サブカルテ*)のデジタル化はまだ十分に進んでいない領域です。本レポートでは、歯科医院にとっての紙のカルテ(サブカルテ)の現状にフォーカスし、解決の糸口を紐解いていきます。

*サブカルテとは、保険診療の電子カルテとは別に、自費診療の記録や技工指示書、患者とのコミュニケーション記録などを管理する紙の補助カルテのことを指します。

▼歯科医院において、デジタル化により利便性を高めたい・効率化したいと思う業務を教えてください。
※N=197

意識調査:サブカルテのデジタル化は「待ったなし」の認識

では、歯科医師はサブカルテのデジタル化についてどのような意識を持っているのでしょうか。
調査の結果、サブカルテのデジタル化について「必須だと思う」、「進めたほうがよいと思う」、「どちらかというと進めたほうがよいと思う」と回答した歯科医師は、合計で74.1%に達しました。
この数字は、歯科業界においてサブカルテのデジタル化が「あれば便利」という段階から「必要不可欠」という認識へと移行しつつあることを明確に示しています。もはや「紙のままでいい」と考えている層は全体の約4分の1に過ぎず、業界全体の意識は確実にデジタルへと向かっていると考えられます。

▼紙のカルテ(サブカルテ)のデジタル化についてどう思っていますか。
※N=197

30代~40代が牽引するデジタル化

さらに興味深いのは、年代による意識差です。回答結果を年代別に分析すると、若手層(20代〜40代)はベテラン層(50代〜70代以上)と比較して、デジタル化への意向が顕著に高いことがわかります。
特に注目すべきは、30代~40代の積極性です。30代では「デジタル化は必須だと思う」33.3%、「デジタル化を進めたほうがよいと思う」29.2%と、合計62.5%が積極的にデジタル化を推進する立場を示しています。40代でも「必須」29.2%、「進めたほうがよい」31.3%と、合計60.5%が同様の姿勢です。
一方、50代以上になると「どちらかというと進めたほうがよいと思う」という、やや消極的な肯定回答の割合が増えます。50代38.3%、60代32.6%、70代以上42.9%がこの選択肢を選んでおり、デジタル化の必要性は感じつつも、積極的に推進するまでには至っていない様子がうかがえます。
30~40代は開業を検討中、あるいは開業から間もない年代であり、子どもの頃からデジタルツールを使いこなしてきた世代でもあります。長年、紙のカルテでの運用を続けてきたであろう50代以上の先生方と、デジタル化推進の意欲に大きな差があることは明らかです。

<年代別:デジタル化に対する意識>
▼【年代別】紙のカルテ(サブカルテ)のデジタル化についてどう思っていますか。
●%…年代別の回答数が多かった選択肢

年商規模が大きいほど「必須」の認識

また、年商別に見ると、年商規模が大きくなるほどデジタル化を「必須」と捉える傾向が見て取れます。デジタル化に肯定的な回答(「必須だと思う」、「進めたほうがよいと思う」、「どちらかというと進めたほうがよいと思う」の合計)と否定的な回答(「メリットがわからない」、「今は進める必要はない」、「進めないほうがよいと思う」の合計)で分類すると、明確な傾向が見えてきます。
年商3,000万円未満~6,000万円未満の層では、デジタル化に否定的な回答*が約3割強見られますが、年商6,000万円以上になると否定的な回答は2割以下に減少し、年商2億円以上に至っては100%がデジタル化に肯定的となります。
年商規模が大きければ大きいほど、患者数やカルテは増加し、それに伴うスタッフの業務負荷や院内のオペレーションは複雑性も増していくことが想定されます。そのような背景から、年商規模が大きくなるほど、デジタル化を「必須」と捉える傾向があると考えられます。

*「デジタル化を進めるメリットがわからない」「今はデジタル化を進める必要はない」「デジタル化を進めない方がよいと思う」を否定的な回答としています

<年商別:デジタル化に対する意識>
▼【年商別】紙のカルテ(サブカルテ)のデジタル化についてどう思っていますか。
●%…年商別の回答数が多かった選択肢

現場の悲鳴:喫緊の課題は「物理的なスペース」だが、経営に直結する問題をはらむ

なぜ、これほど多くの歯科医師がサブカルテのデジタル化を求めているのでしょうか。回答された内容を分類すると、紙カルテに関する問題は3つのカテゴリに分けることができます。

  • ① オペレーションの停滞に関する問題…合計56.3%
    - サブカルテの紛失、置き忘れで業務が滞る / 記入した手書き文字を他の人が読むことができない / 他の人が使っていると使い終わるまで待たなければならない
  • ② 物理的なスペースの問題…合計53.8%
    - カルテスペースが一杯になり保管場所がない
  • ③ スタッフ個人への負荷に関する問題…合計42.1%
    - 翌日のカルテの準備作業に時間(人件費)がとられている / サブカルテを持っての移動が大変

この結果を見ると、喫緊の課題としては、②物理的なスペースの問題がありますが、その他の問題も無視できない数字となります。①オペレーションの停滞に関する問題や、③スタッフ個人への負荷に関する問題は、患者をお待たせしてしまい満足度が高められない、生産性のない作業をすることでスタッフの不満につながる等、経営に直結する問題に発展する可能性をはらんでいます。

▼紙のカルテ(サブカルテ)の利用でどのようなことでお困りですか。
※N=197

実態調査:デジタル化を推進しているのは約15%

<紙のカルテ(サブカルテ)のデジタル化状況>
約7割の歯科医師がデジタル化の必要性を感じている一方で、実際にはどの程度デジタル化が進んでいるのでしょうか。
調査結果は、意識と行動の間に大きなギャップがあることを示しています。
サブカルテのデジタル化ツールを「すでに導入している」と回答したのは全体のわずか7.1%。「導入を予定し、選定を始めている(7.6%)」を合わせても、実際に動き出しているのは全体の約15%に留まっています。
約7割が「必要だ」と感じているにもかかわらず、実際に行動に移しているのは約15%。この数字のギャップは何を意味しているのでしょうか。

▼紙のカルテ(サブカルテ)のデジタル化について、医院の状況を教えてください。
※N=197

年代別にみると、ここでも若手層(20代〜40代)が先行しており、デジタル化ツールを「すでに導入している」割合、「選定を始めている」割合ともにベテラン層(50代〜70代以上)を上回っています。
これは、サブカルテのデジタル化への意識調査と同様の傾向となりますが、ベテランの先生よりも若手の先生の方がデジタル化を推進する傾向があることが明らかになっています。

<年代別:デジタル化の導入状況>
▼【年代別】紙のカルテ(サブカルテ)のデジタル化について、医院の状況を教えてください。
●%…年代別の導入済&導入意向の推移

さらに、年商別にみると顕著な差が見られ、
年商2億円以上の医院では、約半数がすでに導入済みか導入に向けて動き出しているのに対し、年商3,000万円未満の医院では「導入の予定はない」が54.9%と過半数を占めております。
規模の大きい医院ほど、患者数やカルテ量の増加に伴う業務負荷が大きく、デジタル化による効率化メリットを実感しやすいことが背景にあると考えられます。

<年商別:デジタル化の導入状況>
▼【年商別】紙のカルテ(サブカルテ)のデジタル化について、医院の状況を教えてください。
●%…年商別の導入済&導入意向の推移

導入を躊躇する理由:「情報不足」が障壁に

導入意欲が高いにもかかわらず、行動に移せない理由は何なのでしょうか。回答のトップは「金額に見合う効果があるのか分からないから(41.6%)」、次いで「導入のきっかけがないから(33.5%)」でした。
この結果は、導入を検討している層に対して「適切な情報」が届いていない可能性を示唆しています。先述の通り、紙のサブカルテを使い続けることで起きる問題は、経営に直結する問題になり得るのですが、それが十分に理解されていないことが見受けられます。もし、サブカルテのデジタル化によって解決できる問題が「物理的なスペース問題」だけと認識している場合は、費用対効果が見合わないと感じるでしょう。検討段階から一歩抜け出すには、先行して導入している層のように潜在している「経営に直結する問題」に自ら気づき、行動することが重要だと思われます。
この結果は、導入を検討している層に対して「サブカルテのデジタル化の本質的なメリット」がうまく伝わっていない可能性を示唆しています。業界としてデジタル化に関する情報のアクセシビリティを向上させ、判断材料を提供することで、歯科業界のデジタル化は一気に加速する可能性があるのではないでしょうか。

▼導入を躊躇する理由について教えてください。
※N=197

解決策:先行ユーザーが選んだ「現実解」

「導入したいが、どれを選べばいいかわからない」
そんな足踏み状態から一歩を踏み出し、サブカルテのデジタル化を果たした先行医院は、どのようなツールを選んでいるのでしょうか。
ツールの認知度と、実際の導入状況(利用率)を比較すると、興味深い結果が見えてきました。 認知度でトップだったのは、電子カルテ機能との連携で知られる株式会社メドレーの「Dentis(17.4%)」でした 。
しかし、実際に導入されているツール(シェア)を見ると順位が入れ替わります。 導入者の中で最も多く選ばれていたのは、株式会社MetaMoJiが提供する「Dental eNote(34.5%)」でした。
認知度では2番手でありながら、実際の導入率ではトップシェアを獲得している。これは、多くの医院が各ツールを比較検討した結果、最終的にDental eNoteを選んでいることを意味します。つまり、単純な「知名度」ではなく、実際のサービス価値が高く評価されている証左といえるのではないでしょうか。

<認知率>
▼サブカルテ機能をもつツールの中で知っているものをお選びください。
※N=184

<導入しているツールの割合>
▼現在使用しているサブカルテ機能をもつツールをお選びください。
※N=29

最後に

今回の調査からわかったことは、

  • いまデジタル化の関心が高まっているのは「患者予約」と「サブカルテのデジタル化」である
  • サブカルテのデジタル化で解決できるのは、物理的なスペース問題だけでなく、業務が滞ることで患者サービスが低下したり、スタッフが過負荷で離職したりといった問題、つまり経営に直結する問題である
  • サブカルテのデジタル化の本質的なメリットがうまく伝わっていないために、必要性を感じていながらも導入を躊躇する人が多い

ということでした。

「いつかやろう」と思いながら先延ばしにしている間に、競合医院はデジタル化によって経営を大幅に改善しているかもしれません。変わらないことへの安心感は、気づかないうちに「変わらないことのリスク」へと変わっていきます。
まずは、先行医院が選んでいるツールを試してみることから始めてみてはいかがでしょうか。多くのサービスが無料トライアルや資料請求に対応しています。実際に触れてみることで、デジタル化がもたらす変化を実感できるはずです。

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