口腔内スキャナーの義歯製作への応用 歯界展望~今月の立ち読み記事~【Vol.139 No.5 2022-5 】
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口腔内スキャニングによる直接法CAD/CAM冠の適合精度および咬合精度について,2015年に本誌にて提示したが,当
時は直接法による治療はまだまだ特別な手法で,臨床に取り入れるには現実的ではないという雰囲気があった.しかし,そ
れから6年が経過して,口腔内スキャナーを用いた治療法は多岐にわたり急速に普及してきている.特にジルコニア冠の製
作においては多くの歯科医が診療に取り入れており,またインプラントの埋入ガイドや上部構造の製作にも広がりを見せて
いる.今回は,口腔内スキャニングデータを用いた義歯製作について考えていきたい.
そこで今一度,間接法と直接法について整理しておきたい.本稿で用いる「間接法」とは,技工製作物を製作するときに 口腔内を印象採得して石膏模型を作り,その模型上もしくは副模型上でワックスアップを行い,ワックスパターンを埋没・ 鋳造してクラウンやメタルフレームを製作する方法とする.一方「直接法」は,口腔内をスキャニングしたデジタルデータ を用い(模型上でワックスアップを行わない),ソフト上でモデリング(3DCGの分野において,三次元モデルを作ること) を行ったデータで,CAD/CAM,3Dプリンター等を使って補綴装置を製作する方法とする.間接法はアナログ的手法であ るのに対して直接法はデジタル手法である.さらに,両者を組み入れて行うハイブリッドな手法もある.どちらの方法が優 れているのかという問いに結論はない.歯科医師の意向,歯科技工士との信頼関係,スキル,得意分野によって治療手法は 選択されるべきである.補綴装置の適合精度については,両手法において優れている点と劣っている点があると感じている. 日頃の臨床には得意とする工程から取り入れるのがよいと考えている.
今回,上顎にはコーヌス義歯,下顎には金属床パーシャル義歯を装着した症例を提示する.今まで直接法で経験の少ない 義歯治療へのpilot studyであるが,今後必要とされる手法である.術後経過のない症例報告ではあるが,義歯製作における 直接法の利点や問題点などを考えていきたい.
そこで今一度,間接法と直接法について整理しておきたい.本稿で用いる「間接法」とは,技工製作物を製作するときに 口腔内を印象採得して石膏模型を作り,その模型上もしくは副模型上でワックスアップを行い,ワックスパターンを埋没・ 鋳造してクラウンやメタルフレームを製作する方法とする.一方「直接法」は,口腔内をスキャニングしたデジタルデータ を用い(模型上でワックスアップを行わない),ソフト上でモデリング(3DCGの分野において,三次元モデルを作ること) を行ったデータで,CAD/CAM,3Dプリンター等を使って補綴装置を製作する方法とする.間接法はアナログ的手法であ るのに対して直接法はデジタル手法である.さらに,両者を組み入れて行うハイブリッドな手法もある.どちらの方法が優 れているのかという問いに結論はない.歯科医師の意向,歯科技工士との信頼関係,スキル,得意分野によって治療手法は 選択されるべきである.補綴装置の適合精度については,両手法において優れている点と劣っている点があると感じている. 日頃の臨床には得意とする工程から取り入れるのがよいと考えている.
今回,上顎にはコーヌス義歯,下顎には金属床パーシャル義歯を装着した症例を提示する.今まで直接法で経験の少ない 義歯治療へのpilot studyであるが,今後必要とされる手法である.術後経過のない症例報告ではあるが,義歯製作における 直接法の利点や問題点などを考えていきたい.
当医院で行っているIOSの義歯製作への応用
クラウンやブリッジなどの補綴装置やインプラントの上部構造などの製作に,デジタル
データを用いた手法は普及してきているが,義歯の製作に関するデジタルデータの活用に
ついては報告が少ない.今回,当医院で行っているデジタルデータを用いた義歯製作につ
いて報告する(図1).
- ①顔貌と咬合の診断
- ②義歯の設計
- ③メタルフレームワーク設計・製作
- ④暫間義歯,コピー義歯の製作
図1 当院で取り入れているデジタルデータを用いた義歯製作の内容
①顔貌と咬合の診断
【間接法】
Esthetics and Function を考えた治療においては,口腔内の印象採得を行い,石膏模
型を製作,咬合器上で咬合診断を行って治療を開始し,テンポラリー装置を装着後に
Panadent Kois system®を用いてフェイスボウトランスファーを行い,咬合器上で歯列
と顔貌関係の診断を行って,プロビジョナルに反映させてきた(図2).このようなシス
テマティックな間接法の治療を長い間続けてきている.直接法の治療が多くなっているが
現在も必要に応じて使用している.【直接法】
口腔内スキャニングとフェイシャルスキャニングを行って,データのマッチングを行う
ことで,印象採得や作業模型を製作することなく,咬合器に装着するためのフェイスボウ
トランスファーや咬合器の装着が必要なく,咬合平面と顔貌関係の診断が可能である
(図3).従来の方法と比べて簡便で,患者,歯科医師,歯科技工士の負担は少なく,石膏や
印象材などの使用や廃棄の頻度が減り環境にやさしく,社会的要望に合致している.
さらに今後は,デジタル技術の進歩により口腔内スキャナーとフェイシャルスキャナー
が一体化して,生体運動がバーチャルで具現化し,デジタルデータとして再現できるソフ
トが開発されてくるかもしれない
【Patient Specific Motion】
顎位の不安定な咬合採得については,口腔内においてプロビジョナルを調整して得られ
たタッピングポイントを補綴装置へ反映させることは直接法でも可能である.口腔内で印
記した接触点を確認しながら咬合スキャニングした3D接触点データを重ね合わせること
が可能で,何回でもその場でやり直しができる(図4).
また,最近の口腔内スキャナーにはPatient Specific Motion機能があり,咬合接触,滑
走運動など三次元的生体運動の具現化が可能になってきており,咬合診断の役に立つ.今
後は顎運動や咬合接触点の具現化された情報が補綴装置製作に直接反映できるような開発
が待たれる(図5)
※原則として著者の所属は雑誌掲載当時のものです。
<掲載号はこちら>
歯界展望 139巻5号 口腔内スキャナーの義歯製作への応用/医歯薬出版株式会社 (ishiyaku.co.jp)
https://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=021395
歯界展望 139巻5号 口腔内スキャナーの義歯製作への応用/医歯薬出版株式会社 (ishiyaku.co.jp)
https://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=021395