第3回 実験的歯科医院奮闘記(3) なぜ,そこに歯科クリニック?

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 スタートした私たちの歯科クリニックには美容外科,形成外科などが併設されている.いや,本当はその逆で,美容外科に歯科クリニックが併設されているといった方が正しいだろう.いずれにしろ,美容外科が一緒なので,「キレイ」がキーワードというのはまさに理想的であると思われた.美容に来院した患者さんには,歯を美しくすることのメリットを知ってもらい,また歯科クリニックの患者さんにも美容外科が存在することで,そちらにも関心が行く.いわば相乗効果を期待した.

 病院自体が1月にオープンしたが,私自身はまだ前の勤務が3月まであるため赴任できないが,歯科クリニックもとり合えず1名の常勤の歯科医でスタートした.他にスタッフは2名の歯科衛生士,受付1名である.雇用に当たっては,ツテを頼ったり,募集広告を出したりして,何とか確保できた.とくに歯科衛生士は売り手市場と言われている中,そこそこ早く決めることが出来たのは,やはり東京丸の内という場所柄,広々とした職場環境,きちんと設定された勤務時間などの影響と思われた.

 診療室は,完全個室の4室であるが,2室を治療専門の部屋,他の2室は主に歯科衛生士が使用するケアルームとした.いや,そういう計画を立てていた.こういう中途半端な言い方しか出来ないのは,いささかの説明が必要である.

 そもそも丸の内オアゾというのは,今から3年ほど前に旧国鉄本社の跡地に作られた,ホテル,レストランなどを備えたいくつかのビルディングに囲まれた商業スペースである.オアゾはオアシス・ゾーンの略,仕事に疲れたビジネス戦士達が憩う空間として設定されている.そこの1つのビル(新丸の内センタービルディング)の5階に美容外科・審美歯科を標榜する医療機関がオープン以来,営業をしていた.まあ,今の私達のクリニックもまるでホテルのロビーのようであることは前回にも説明したが,前のクリニックはさらに素晴らしい空間を持っていた.恐らく名立たる設計家がデザインしたものであろうことは,素人の私でも理解できるくらいである.

 しかし,ここはこの手のクリニックが繁盛するには,難しい環境にあったのかもしれない.路面でないのでふりの患者が期待できない,丸の内オアゾを管理する三菱地所の広告規制であまり多くの看板を出すことが出来ない,などが想像できる.本当の理由が何かは,知るすべもないが,ともかくそのクリニックが2年ほどで撤退を決め,私たちの経営母体に話が回ってきた.

 経営母体は福島県郡山市にある南東北病院(医療法人将道会)で,PET(Positron Emission Tomography)検査を日本で始めて導入した病院として知られている.東京にも多くの関連施設を展開し,「大学病院で出来ない治療を私たちが!」の意気込みで活動し,脳神経外科手術で世界的に名を知れた,ご存知神の手を持つ男の福島孝徳教授も所属している.この発展途上の機関に三菱地所から白羽の矢が当たり,1年前から準備が始められたというわけである.前置きが長いが次回からは,いよいよ本当の意味の奮戦記が始まる.

図1 丸の内オアゾ

図2  私たちの経営母体,医療法人将道会総合南東北病院

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