PMTCで有名な内山茂先生の66歳からの挑戦 歯科医師引退後のライフスタイル 歯周治療器具を使う「切り絵」を取材!
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みなさんこんにちは、Dentwave編集部です。
みなさんは、歯科医師としてのキャリアを引退した後、どのようなライフスタイルを想像されていますか?
日々の臨床業務に追われて、趣味に時間を費やすことや、将来について考えることをつい後回しにしてしまっている先生も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、歯科医師を引退され、「切り絵」という新たな趣味への挑戦をされている内山茂先生に、早期リタイアをされたきっかけや、趣味の見つけ方、引退後のライフスタイルについてインタビューさせていただききました。普段聞けない歯科医師を引退された後のライフスタイルについても知ることができる記事となっておりますので、是非ご一読下さい。
Dentwave編集部:自己紹介をお願いいたします。
内山茂先生:昭和52年に、東京医科歯科大学を卒業しました。
その後数年して所沢で開業をしまして、30年診療室を経営し、ちょうど60歳になった時に事業継承しました。その後は、大学関係の臨床研修医の指導や、業者さんや歯科医師会に依頼されて講演活動を数年行っていました。それが一段落したのが65、66歳ですね。
Dentwave編集部:60歳までご自身でクリニックを開業されていたとのことですが、歯科医師としてはどのような活動をされてきたのでしょうか。
内山茂先生:最初は補綴を中心とした歯科治療を極めたくて、有名な先生のところへ研修に出かけたりしていたのですが、ある時点から予防ケアの大切さに目覚めました。幸い優秀な歯科衛生士さんと一緒に仕事ができたのでそれを本にすることができたんですね。
その本が好評を得て、一種のクリーニングブームのようなものが日本に来たんです。それが1998年ぐらいの話です。
それから色々な場所で講演を行ったり、何冊かの本を書いたりということで、予防ケアの分野では一応第一人者ということになってしまいました(笑)。もちろん私以外にも優秀な先生が多くいらっしゃって、そのような先生方と一緒に今の予防ケア部門を作り上げたというところでしょうか。
現在は当時と違って歯科医院はメインテナンスをしに行くところだ、という一つの流れができていますが、当時は歯科医院といえば治療に行くところでしたから、私はちょうど時代の過渡期に学術活動に入ったということです。
Dentwave編集部:なぜ早めに歯科医師としてのキャリアをリタイアしようと思われたのでしょうか?
内山茂先生:理由は大きく3つあります。
まず私の場合、50代の後半ぐらいから体調に少し自信がなくなってきてしまいました。ですがなかなか診療の予約が多く入っているため休めないんです。それで患者さんにご迷惑をかけてはいけないな、ということが1つです。
それから2つ目は、私は患者さんへ「生涯メインテナンスに来てください。」と言い続けてきたんです。でも自分にもし万が一のことがあれば、そこでメインテナンスが切れてしまうわけですよ。その際に、患者さんやスタッフに苦労をかけてしまうだろうと考えました。
具体的にどのような苦労があるかというと、診療室をどうするかなんです。誰か代診の方にやっていただく、というのが一つの選択なのですが、優秀な先生が早々と見つかるわけではない。それからスタッフをどうするか。私がいつ治るか分からない病気を抱えていても、スタッフにお給料を支払わなくてはいけません。
一般的な個人開業医の場合は奥様がそれをやるわけです。ですが病気を抱えたご主人を心配しながら、診療室を回していかなくてはいけないという大変な苦労ですよね。
早期リタイアの3つ目の理由は、後継者を探し始めてすぐに立派な先生が見つかったことです。後継者探しには、5年ほどかかると考えていたのですが、その方は私のセミナーを受講してくれていた先生で、その後の懇親会で非常に鋭い質問をなさって、その後も時々私の医院に見学に来てくださっていたんです。そこで私が、「そろそろ次の先生に譲りたい」のような話をしたところ、その先生がたまたま「開業したい」という意向があったんですね。
内山茂先生:昭和52年に、東京医科歯科大学を卒業しました。
その後数年して所沢で開業をしまして、30年診療室を経営し、ちょうど60歳になった時に事業継承しました。その後は、大学関係の臨床研修医の指導や、業者さんや歯科医師会に依頼されて講演活動を数年行っていました。それが一段落したのが65、66歳ですね。
Dentwave編集部:60歳までご自身でクリニックを開業されていたとのことですが、歯科医師としてはどのような活動をされてきたのでしょうか。
内山茂先生:最初は補綴を中心とした歯科治療を極めたくて、有名な先生のところへ研修に出かけたりしていたのですが、ある時点から予防ケアの大切さに目覚めました。幸い優秀な歯科衛生士さんと一緒に仕事ができたのでそれを本にすることができたんですね。
その本が好評を得て、一種のクリーニングブームのようなものが日本に来たんです。それが1998年ぐらいの話です。
それから色々な場所で講演を行ったり、何冊かの本を書いたりということで、予防ケアの分野では一応第一人者ということになってしまいました(笑)。もちろん私以外にも優秀な先生が多くいらっしゃって、そのような先生方と一緒に今の予防ケア部門を作り上げたというところでしょうか。
現在は当時と違って歯科医院はメインテナンスをしに行くところだ、という一つの流れができていますが、当時は歯科医院といえば治療に行くところでしたから、私はちょうど時代の過渡期に学術活動に入ったということです。
Dentwave編集部:なぜ早めに歯科医師としてのキャリアをリタイアしようと思われたのでしょうか?
内山茂先生:理由は大きく3つあります。
まず私の場合、50代の後半ぐらいから体調に少し自信がなくなってきてしまいました。ですがなかなか診療の予約が多く入っているため休めないんです。それで患者さんにご迷惑をかけてはいけないな、ということが1つです。
それから2つ目は、私は患者さんへ「生涯メインテナンスに来てください。」と言い続けてきたんです。でも自分にもし万が一のことがあれば、そこでメインテナンスが切れてしまうわけですよ。その際に、患者さんやスタッフに苦労をかけてしまうだろうと考えました。
具体的にどのような苦労があるかというと、診療室をどうするかなんです。誰か代診の方にやっていただく、というのが一つの選択なのですが、優秀な先生が早々と見つかるわけではない。それからスタッフをどうするか。私がいつ治るか分からない病気を抱えていても、スタッフにお給料を支払わなくてはいけません。
一般的な個人開業医の場合は奥様がそれをやるわけです。ですが病気を抱えたご主人を心配しながら、診療室を回していかなくてはいけないという大変な苦労ですよね。
早期リタイアの3つ目の理由は、後継者を探し始めてすぐに立派な先生が見つかったことです。後継者探しには、5年ほどかかると考えていたのですが、その方は私のセミナーを受講してくれていた先生で、その後の懇親会で非常に鋭い質問をなさって、その後も時々私の医院に見学に来てくださっていたんです。そこで私が、「そろそろ次の先生に譲りたい」のような話をしたところ、その先生がたまたま「開業したい」という意向があったんですね。
Dentwave編集部:本来であれば5年ぐらい後継者探しの期間としてお考えされていたのが少し早まったということですが、70歳ぐらいまでは現役で診察しようと思われていたという事でしょうか?
内山茂先生:そうですね。65歳から70歳ぐらいでと思っていたのですが、思いのほか早くリタイアできました。ですが、後継の医師は見つかったとしても、スタッフの問題はあるわけです。私は、できるだけ後継の医師の方には、自分の診療室のスタッフを引き継いでいただきたかったんです。
というのは、長いこと私の医院でメインテナンスしている患者さんが多いので、スタッフまで変わってしまうと、患者さんにも負担がかかってしまうと思ったからです。だから歯科衛生士たちがそのまま働ける環境をお願いしました。新しい先生がそれらを万事了解してくれたので、とても良かったなと思っています。
内山茂先生:そうですね。65歳から70歳ぐらいでと思っていたのですが、思いのほか早くリタイアできました。ですが、後継の医師は見つかったとしても、スタッフの問題はあるわけです。私は、できるだけ後継の医師の方には、自分の診療室のスタッフを引き継いでいただきたかったんです。
というのは、長いこと私の医院でメインテナンスしている患者さんが多いので、スタッフまで変わってしまうと、患者さんにも負担がかかってしまうと思ったからです。だから歯科衛生士たちがそのまま働ける環境をお願いしました。新しい先生がそれらを万事了解してくれたので、とても良かったなと思っています。
Dentwave編集部:では、ご趣味についてお伺いさせていただきます。多彩な趣味をお持ちの内山先生ですが、なぜ切り絵をはじめようと思われたのでしょうか?
内山茂先生:私はずっとギターを弾きながら歌を歌うことを昔から趣味にしていたのですが、その関係でたまたま出会った方のお店に切り絵が飾ってあったんです。それがビートルズの『Let It Be』のジャケットだったんです。「いいですね。」と言ったら、「内山先生なら手術得意でしょ。手術用のメスでこういうのを切ってみたらとてもいいのを切れるんじゃないですか?」と言われて。
冗談だとは思ったのですが、それを間に受けて実際やってみたんです。そしたら思いのほか綺麗に切れるんですよ。そして周りの評判もとても良かったんですね。それからすっかりハマってしまいました。
内山茂先生:私はずっとギターを弾きながら歌を歌うことを昔から趣味にしていたのですが、その関係でたまたま出会った方のお店に切り絵が飾ってあったんです。それがビートルズの『Let It Be』のジャケットだったんです。「いいですね。」と言ったら、「内山先生なら手術得意でしょ。手術用のメスでこういうのを切ってみたらとてもいいのを切れるんじゃないですか?」と言われて。
冗談だとは思ったのですが、それを間に受けて実際やってみたんです。そしたら思いのほか綺麗に切れるんですよ。そして周りの評判もとても良かったんですね。それからすっかりハマってしまいました。
Dentwave編集部:もともと美術関係の素質がおありになったのでしょうか?
内山茂先生:若い時に絵画のデッサン教室に通っていたのですが、仕事をしていると、なかなか時間的にも精神的にも余裕がなくなりますよね。仕事をしている時に芸術的な趣味というのは難しいです。やはりはまり込まないとなかなか…。それでも美術展にはよく行っていましたし、あとは外国に行っても、必ず美術館は訪れていましたね。
そんなこんなで私の切り絵のなかには、昔からの美術に対する思いが生きているのかなと思っています。
Dentwave編集部:実際に一つの作品を仕上げる時はどのくらいの制作期間を要するのでしょうか?
内山茂先生:もちろん作品によりますが、一般的には2日から3日ですね。同じ作品をずっとやっていると飽きちゃうんですね。
もっとも展覧会用の作品というのがありまして、それはとにかく大きいんですよ。特に賞を狙ったりする場合はとにかく大きくてなんぼの世界なので、半年がかりとかいうこともあります。
最近は小さい作品を中心に作っています。なかには超小さい作品もあって、私はそれを「極小切り絵」と名付けています。
内山茂先生:若い時に絵画のデッサン教室に通っていたのですが、仕事をしていると、なかなか時間的にも精神的にも余裕がなくなりますよね。仕事をしている時に芸術的な趣味というのは難しいです。やはりはまり込まないとなかなか…。それでも美術展にはよく行っていましたし、あとは外国に行っても、必ず美術館は訪れていましたね。
そんなこんなで私の切り絵のなかには、昔からの美術に対する思いが生きているのかなと思っています。
Dentwave編集部:実際に一つの作品を仕上げる時はどのくらいの制作期間を要するのでしょうか?
内山茂先生:もちろん作品によりますが、一般的には2日から3日ですね。同じ作品をずっとやっていると飽きちゃうんですね。
もっとも展覧会用の作品というのがありまして、それはとにかく大きいんですよ。特に賞を狙ったりする場合はとにかく大きくてなんぼの世界なので、半年がかりとかいうこともあります。
最近は小さい作品を中心に作っています。なかには超小さい作品もあって、私はそれを「極小切り絵」と名付けています。
Dentwave編集部:とても小さいですね!このサイズに挑戦してみようと思ったきっかけがあったのでしょうか?
内山茂先生:大きいと自宅に飾ることもできないし、保管場所にも困るんですね。子供たちから「それなら小さいものを作ってみたら?」と言われて作り始めました(笑)。
Dentwave編集部:切り絵のモチーフを決める時はどのように考えられているのでしょうか?
内山茂先生:切り絵の良さは一から全部自分でデッサンをしなくても、写真があればその写真を処理することで成り立つことなんです。
つまり写真がきちんと撮れれば、それを切り絵用に加工するソフトをうまく使えばそれに沿ってただただ切ればいい。私はデッサンが苦手でしたから…。
何を自分の生涯の趣味にするかというのは、自分の適性をまず見極めること。それから何でもやってみることです。絵画でも書道でも、もちろんスポーツでも。今回の切り絵にしても、やってみたらたまたま才能があったということです。だから、何でもやってみることが大事かなと思います。
あとは診療している時は、皆さん忙しくて余裕がないと思うんですけど、やはり50代ぐらいからは早めにアンテナを立てることですね。趣味はリタイアした後に慌てて見つけようとしても見つかりませんからね。
だから、50代ぐらいからどんな風に老後を生きていきたいか?ということも考えておかれると良いのかなという気がします。
Dentwave編集部:先ほどご友人に勧められて切り絵を始めて、その時に歯周外科用器具を使ってみたら?とのことでしたが、その後は継続して使っていらっしゃるのか、または切り絵専用の器具を使っていらっしゃるのかどちらでしょうか?
内山茂先生:やはり歯科外科用器具は単価が高いので継続的には使えませんでした。切り絵は切っているとすぐ刃がダメになるんですね。
現在は切り絵用のナイフを使用しています。とても安価ですが優れた日本製品があります。
内山茂先生:大きいと自宅に飾ることもできないし、保管場所にも困るんですね。子供たちから「それなら小さいものを作ってみたら?」と言われて作り始めました(笑)。
Dentwave編集部:切り絵のモチーフを決める時はどのように考えられているのでしょうか?
内山茂先生:切り絵の良さは一から全部自分でデッサンをしなくても、写真があればその写真を処理することで成り立つことなんです。
つまり写真がきちんと撮れれば、それを切り絵用に加工するソフトをうまく使えばそれに沿ってただただ切ればいい。私はデッサンが苦手でしたから…。
何を自分の生涯の趣味にするかというのは、自分の適性をまず見極めること。それから何でもやってみることです。絵画でも書道でも、もちろんスポーツでも。今回の切り絵にしても、やってみたらたまたま才能があったということです。だから、何でもやってみることが大事かなと思います。
あとは診療している時は、皆さん忙しくて余裕がないと思うんですけど、やはり50代ぐらいからは早めにアンテナを立てることですね。趣味はリタイアした後に慌てて見つけようとしても見つかりませんからね。
だから、50代ぐらいからどんな風に老後を生きていきたいか?ということも考えておかれると良いのかなという気がします。
Dentwave編集部:先ほどご友人に勧められて切り絵を始めて、その時に歯周外科用器具を使ってみたら?とのことでしたが、その後は継続して使っていらっしゃるのか、または切り絵専用の器具を使っていらっしゃるのかどちらでしょうか?
内山茂先生:やはり歯科外科用器具は単価が高いので継続的には使えませんでした。切り絵は切っているとすぐ刃がダメになるんですね。
現在は切り絵用のナイフを使用しています。とても安価ですが優れた日本製品があります。
Dentwave編集部:ほかにも何か歯科用器具を切り絵で使う事はありますか?
内山茂先生:歯科用のピンセットはとても便利です。あとはハンドスケーラーです。細かいところやチリをとる時はものすごく便利ですね。短針やプローブ、歯科技工用のエバンス刀もたまに使用したりしています。
切り絵用の紙についてお話しますと、何を使ってもいいのですが、一般的には、NTラシャやケント紙などが厚みがちょうどいいように思います。A4以上大きな紙、あるいは微妙な色の紙が欲しいなという場合は、世界堂や銀座の伊東屋さんなど紙専門店にいけば売っています。上野や神保町にいけば和紙専門店もあります。なので東京というところはそういう意味では便利な場所ですよね。ただそこまでこだわらなければ大概8割9割はネットで手に入ります。
内山茂先生:歯科用のピンセットはとても便利です。あとはハンドスケーラーです。細かいところやチリをとる時はものすごく便利ですね。短針やプローブ、歯科技工用のエバンス刀もたまに使用したりしています。
切り絵用の紙についてお話しますと、何を使ってもいいのですが、一般的には、NTラシャやケント紙などが厚みがちょうどいいように思います。A4以上大きな紙、あるいは微妙な色の紙が欲しいなという場合は、世界堂や銀座の伊東屋さんなど紙専門店にいけば売っています。上野や神保町にいけば和紙専門店もあります。なので東京というところはそういう意味では便利な場所ですよね。ただそこまでこだわらなければ大概8割9割はネットで手に入ります。
Dentwave編集部:少しお話を戻しますが、先生は早期リタイアについては、どのようにお考えになっていますか?
内山茂先生:私の場合はやりたいことがありましたので、またその後も講演や執筆活動、大学の講義もありましたから早期リタイアをしましたけれども、生涯現役あるいはできるだけ長く歯科医をやりたい、という気持ちはとても尊いと思いますし、実際人のために毎日診療を行うということは、とても大事な生きがいになります。なので早期リタイアを勧めるつもりは全くないです。たまたま私の場合は色々なことが重なったということで早期リタイアとなりました。
ですが患者さんの生涯のメインテナンスを考えたときは、自分がだんだん体力的に自信がなくなってきた頃に、時間をかけて次の患者さんをお世話していただける医療機関を提供する努力をしないといけないですよね。これが「究極のメインテナンス」だと僕は思うわけです。ここが分かってもらえると早期リタイアというのがある意味必要なことなのかなと思います。
「生涯メインテナンス」の生涯とは、患者さんの生涯であって、自分の生涯ではありません。
リタイア後、即辞めるというのはやはり無責任ですからね。スタッフに対して、いきなり「来年辞めます」と言っても、スタッフの方はどうしようと思いますよね。スタッフは大体自分より若いですからね。
よくいい歯科衛生士が育たないと言う先生がいますが、そのような環境づくりをしないから育たないんだと思います。
福利厚生をはじめとする女性が安心して働ける場所を作ってあげなければダメなんですよ。そうでなければ優秀な人材が集まるはずがないんです。
Dentwave編集部:自分の体調が健康なうちに準備ができる時にしておくのが望ましいということでしょうか?
内山茂先生:そうです。準備をしておいて、幸いにずっと続けられたらそれに越したことはないと思います。 毎日人に感謝される仕事なんて、そうそうあるもんじゃないですからね。
それから、良い医院づくりの一つの基準として、歯科衛生士さんが丁寧に定期的なメインテナンスを行う歯科医院にしていくことが大切です。患者さんもそのような歯科医院を選ぶと良いかもしれませんね。
Dentwave編集部:最後にDentwave会員の先生方に向けてメッセージをお願いします。
内山茂先生:もし、リタイア後のことをお考えでしたら、まずはいろいろやってみるということが一番です。
その中に思いのほか自分の適性に合っているものが見つかることがあるので、歯科医師の業務上、臨床や研究などお忙しいとは思いますが、興味を持ち、さまざまなことに触れるということが、とても大切なことだということを伝えたいです。月並みな言葉になり恐縮ですが。
あとはできれば若いうちに外国にできるだけ行くことや、様々な分野の本を読むことです。
僕の場合は現代思想や哲学などの本に30代で触れました。それまでは理学系の知識ばかりだったので、いざ哲学書に触れると、そのような世界とは全く別な世界があるということに気づきました。それはとても新鮮でしたよね。
具体的には「美とは何か」など、そういうのは誰も教えてくれないですよね。でも歯科で「美は何か」を分からないで歯科医療をやると、ろくな前歯部補綴ができないです。矯正も同じですよね。
ということは歯科医療においても「美」は大事なわけです。でもその美について誰も教えてくれないで歯科医師になってしまうから、機能的に優秀なものは作れるかもしれないですが、それが美しいかどうかというところは、感性が磨かれてないので分からない。
「美」について学ぶことは、美に対する考え方、発想が変わってくるので歯科医療に対しても役には立つような気がします。
あとは「自分がどう生きるか」、「どういう人生が一番自分にとって充実しているか」ということを考えることです。
それは歯周病学の本を読んでも学べません。どんなに立派な論文を読み漁ってもどう生きるかは書いてないんです。どう生きるかを書いてあるのがいわゆる思想書や哲学書なんですよ。それが基本なんですよね。
歯科でもいきなりフルマウスの症例はやらないことが多くて、まずインレーや部分治療からはじめるじゃないですか。だから哲学も基本から学んでいくことが大切です。
不思議なことに、小説を読んだり映画を見たり、哲学書のような難しいものに触れれば触れるほど、自分が患者さんにアウトプットする時にはかみ砕いて表現するようになっていきます。そのような知的訓練で、心が豊かになるというところもありますから、若い歯科医師の方に伝えるとすれば、そのような訓練を是非していただくと、人生がもっと広く豊かになります。もちろん歯科臨床の研鑽も大事ですけどね。
それは歯科医師に限らず、毎夜居酒屋で飲んだくれてるおじさんたちにも言ってあげたいですね。そんな暇あったら家で小説でも読みになったらどうですか?と… (笑)。
Dentwave編集部:内山先生、ありがとうございました。
内山茂先生:私の場合はやりたいことがありましたので、またその後も講演や執筆活動、大学の講義もありましたから早期リタイアをしましたけれども、生涯現役あるいはできるだけ長く歯科医をやりたい、という気持ちはとても尊いと思いますし、実際人のために毎日診療を行うということは、とても大事な生きがいになります。なので早期リタイアを勧めるつもりは全くないです。たまたま私の場合は色々なことが重なったということで早期リタイアとなりました。
ですが患者さんの生涯のメインテナンスを考えたときは、自分がだんだん体力的に自信がなくなってきた頃に、時間をかけて次の患者さんをお世話していただける医療機関を提供する努力をしないといけないですよね。これが「究極のメインテナンス」だと僕は思うわけです。ここが分かってもらえると早期リタイアというのがある意味必要なことなのかなと思います。
「生涯メインテナンス」の生涯とは、患者さんの生涯であって、自分の生涯ではありません。
リタイア後、即辞めるというのはやはり無責任ですからね。スタッフに対して、いきなり「来年辞めます」と言っても、スタッフの方はどうしようと思いますよね。スタッフは大体自分より若いですからね。
よくいい歯科衛生士が育たないと言う先生がいますが、そのような環境づくりをしないから育たないんだと思います。
福利厚生をはじめとする女性が安心して働ける場所を作ってあげなければダメなんですよ。そうでなければ優秀な人材が集まるはずがないんです。
Dentwave編集部:自分の体調が健康なうちに準備ができる時にしておくのが望ましいということでしょうか?
内山茂先生:そうです。準備をしておいて、幸いにずっと続けられたらそれに越したことはないと思います。 毎日人に感謝される仕事なんて、そうそうあるもんじゃないですからね。
それから、良い医院づくりの一つの基準として、歯科衛生士さんが丁寧に定期的なメインテナンスを行う歯科医院にしていくことが大切です。患者さんもそのような歯科医院を選ぶと良いかもしれませんね。
Dentwave編集部:最後にDentwave会員の先生方に向けてメッセージをお願いします。
内山茂先生:もし、リタイア後のことをお考えでしたら、まずはいろいろやってみるということが一番です。
その中に思いのほか自分の適性に合っているものが見つかることがあるので、歯科医師の業務上、臨床や研究などお忙しいとは思いますが、興味を持ち、さまざまなことに触れるということが、とても大切なことだということを伝えたいです。月並みな言葉になり恐縮ですが。
あとはできれば若いうちに外国にできるだけ行くことや、様々な分野の本を読むことです。
僕の場合は現代思想や哲学などの本に30代で触れました。それまでは理学系の知識ばかりだったので、いざ哲学書に触れると、そのような世界とは全く別な世界があるということに気づきました。それはとても新鮮でしたよね。
具体的には「美とは何か」など、そういうのは誰も教えてくれないですよね。でも歯科で「美は何か」を分からないで歯科医療をやると、ろくな前歯部補綴ができないです。矯正も同じですよね。
ということは歯科医療においても「美」は大事なわけです。でもその美について誰も教えてくれないで歯科医師になってしまうから、機能的に優秀なものは作れるかもしれないですが、それが美しいかどうかというところは、感性が磨かれてないので分からない。
「美」について学ぶことは、美に対する考え方、発想が変わってくるので歯科医療に対しても役には立つような気がします。
あとは「自分がどう生きるか」、「どういう人生が一番自分にとって充実しているか」ということを考えることです。
それは歯周病学の本を読んでも学べません。どんなに立派な論文を読み漁ってもどう生きるかは書いてないんです。どう生きるかを書いてあるのがいわゆる思想書や哲学書なんですよ。それが基本なんですよね。
歯科でもいきなりフルマウスの症例はやらないことが多くて、まずインレーや部分治療からはじめるじゃないですか。だから哲学も基本から学んでいくことが大切です。
不思議なことに、小説を読んだり映画を見たり、哲学書のような難しいものに触れれば触れるほど、自分が患者さんにアウトプットする時にはかみ砕いて表現するようになっていきます。そのような知的訓練で、心が豊かになるというところもありますから、若い歯科医師の方に伝えるとすれば、そのような訓練を是非していただくと、人生がもっと広く豊かになります。もちろん歯科臨床の研鑽も大事ですけどね。
それは歯科医師に限らず、毎夜居酒屋で飲んだくれてるおじさんたちにも言ってあげたいですね。そんな暇あったら家で小説でも読みになったらどうですか?と… (笑)。
Dentwave編集部:内山先生、ありがとうございました。
本記事が、引退後のライフスタイルを想像する参考となれば幸いです。また、本記事を通して新たな趣味を発見する鍵となり、日々の臨床や生活が少しでも彩り溢れるものとなれば幸いです。
内山 茂 先生のプロフィール
内山 茂
【ご略歴】
- 1984年-2013年 所沢市にて開業
- 1998年-東京医科歯科大学 臨床教授
- 2013年-東京医科歯科大学 臨床研修医指導医
【内山 茂 先生の趣味のページ】
【内山先生の切り絵作品】
本記事の取材協力先
本取材に際し、多大なるご協力を賜り誠にありがとうございました。
記事提供
© Dentwave.com