赤ちゃんが来院されたときに気をつけたい3つのこと

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近年、0歳から赤ちゃんを対象にした歯科医院が増加していることは、多くの方が感じていることでしょう。この背景には、「口腔機能発達不全症」という病名が広まり、赤ちゃんや幼児の口腔機能の重要性が認識されつつあることが挙げられます。赤ちゃんを診察する歯科医院も増えていますが、実際にどのように赤ちゃんを診れば良いのか分からないと感じている医療従事者も多いのが現実です。
そこで、今回の講演では赤ちゃん歯科の基本的な概念と実践的な臨床方法についてなるべく簡潔にご紹介し、参加者の皆様に赤ちゃん歯科に対する理解を深めていただくはじめの一歩としていただくことを目的としています。

1.赤ちゃんの姿勢と育つ環境

赤ちゃんの姿勢は、その成長において非常に重要な要素です。抱っこや睡眠時の姿勢は、赤ちゃんの心身の発達に直接的な影響を与えます。例えば、抱っこを通じて赤ちゃんは安心感を得ることができます。そしてこれがストレスホルモンの分泌を抑え、成長における心身の健康を保つ助けとなることが分かっています。安心感があることで、赤ちゃんはリラックスし、発達を促すための環境を整えることができるのです。
また、抱っこする際の姿勢や方法も重要です。適切な抱っこは、赤ちゃんの骨格形成にも影響し、特に顎や口腔の発達においては大きな役割を果たします。さらに、この姿勢により赤ちゃんは適切な呼吸、つまり鼻呼吸を行うことができます。これにより酸素を効率よく取り入れることができ、成長に伴う口腔機能にも影響を与えます。

2.口腔と身体の調律

口腔と身体の調律は、赤ちゃんの成長過程で観察される重要な現象です。授乳時には、嚥下や開口の動作が求められ、これらは口腔機能の発達に影響します。赤ちゃんが乳首を吸う際には、舌や顎の筋肉を使い、これが後の食事の仕方や言語機能の獲得にも関与します。こうした授乳のプロセスは、赤ちゃんにとって単なる栄養補給だけでなく、心の安定や親子の絆を深める大切な時間でもあります。このように、授乳は身体的な成長だけでなく、情緒的な成長にも寄与します。
離乳食に移行する際には、手と口の協調運動が不可欠です。赤ちゃんは、手で食べ物をつかみ、口に運ぶという一連の動作を通じて、咀嚼や嚥下の基本を学びます。これは、後に多様な食事を摂るための基礎を築くものです。特に、初めて食べ物に触れる経験は、赤ちゃんの味覚や食趣向の形成にも影響を与えます。この時期には、遊びを通じた発達も重要であり、同時に遊びを通じて呼吸や体の軸、柔軟性を身につけることができます。これにより、赤ちゃんの発育において大切な身体全体の調律が図られます。

3.発達における主体性

赤ちゃんの発達において主体性は、非常に重要な概念です。子供の気質は、さまざまな要因によって形成され、個々の特性は十人十色です。気質は家庭環境や文化、親子関係など社会的な因子によって大きく左右され、これにより各家庭での子育てのスタイルが異なります。子供たちの成長を促すためには、生活の中での繰り返しが不可欠であり、これが主体性の育成につながります。
また、主体性は自己組織化の概念と密接に関連しています。子供は自らの経験を通じて主体的に学び、成長していきます。この過程で能動的な行動が重要な役割を果たします。例えば、おっぱいの飲み方、離乳食の食べ方、遊び方など、これらすべてが彼らの発達に影響を与えます。自己組織化の概念は、赤ちゃんが自分の興味や関心に基づいて自ら学び、成長する中で繰り返し行われる過程を指します。このプロセスにおいて、周囲の環境や大人のサポートが重要です。例えば、親が赤ちゃんの遊びを見守り、時には手助けをすることで、赤ちゃんは自己組織化のプロセスを円滑に進めることができます。

赤ちゃん歯科の臨床的アプローチ

赤ちゃん歯科では、これらの要素を総合的に理解し、臨床に活かすことが求められます。具体的には、赤ちゃんの口腔機能や形態について評価し、発達段階に応じた適切なアプローチを取ることが重要です。例えば、授乳時や離乳食の際には、赤ちゃんの姿勢や口腔の動きを観察し、必要に応じて指導を行います。また、赤ちゃんの口腔形態においては、印象採得を行って模型から骨格の歪みなど問題点を抽出する試みをしています。
さらに、赤ちゃん歯科の重要な側面として、保護者への子育てに寄り添うようなサポートが挙げられます。親が赤ちゃんの成長を理解し、適切な環境を整えることが赤ちゃんの健康を守るためには不可欠です。そこへ定期的な歯科検診を通じて、保護者に対して赤ちゃん口腔ケアの重要性や口腔発育についての情報を提供し、意識を高めてもらうことが求められます。

まとめ

赤ちゃん歯科の発展は、今後ますます重要になると考えられます。特に、口腔機能の発達は、幼児期だけでなく、その後の生活にも影響を与えるため、早期からのアプローチが求められます。また、ファミリー層における家族関与という意味でも、赤ちゃん歯科はその知識が深まることにより家族単位でより良い支援が可能になるでしょう。医療従事者が赤ちゃんの発達を理解し、効果的なアプローチを行うことで、子供たちの健やかな成長をサポートすることができると考えられます。

プロフィール

益子 正範 先生

益子 正範(ましこ まさのり)
ひかり歯科医院 院長

<ご略歴>
岡山大学歯学部 卒業
国立大学法人 筑波大学附属病院臨床医学系 歯科口腔外科 臨床研修修了
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 大学院博士課程修了 博士(歯学)
日本大学松戸歯学部小児歯科学講座(研究生)

<ご所属>
一社)赤ちゃん歯科ネットワーク理事
ランパ研究会理事
日本小児歯科学会会員
日本人類学会会員
日本嚥下医学会会員
日本小児耳鼻咽喉科学会会員
日本計量計測学会会員
日本行動分析学会会員
【著書】0歳からの口腔機能と歯列の育て方 クインテッセンス出版株式会社2020
ほか 雑誌掲載

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