products - Article

製品情報 - 記事


前回の記事では、歯科医院のデジタル化は段階的に進行するものであることが確認されました。また、先行している医院に共通して経営に注力している傾向が見られました。
本記事では、フェーズ①(レセコン導入)・フェーズ②(+予約システム導入)・フェーズ③(+サブカルテシステム導入)と段階的に進むデジタル化のフェーズにおいて、先行してフェーズ③まで到達している医院について分析していきます。

歯科医院の効果的なDX化の進め方
第1回あなたの医院はどの段階にいる? 歯科医院のデジタル化の実態調査から見えた“先を行く医院の共通点”
第2回【今回はこちら】サブカルテを経営基盤に変えた医院たち デジタル化フェーズ③の多様な実践
第3回2026年5月末公開予定
第4回2026年6月末公開予定
第5回2026年7月末公開予定
第6回2026年8月末公開予定

サブカルテを経営基盤に変えた医院たち デジタル化フェーズ③の多様な実践

著: /

関連タグ:

デジタル化フェーズ③の医院は、何が違うのか

前回の記事では、Dentwave会員224名へのアンケート調査をもとに、歯科医院のデジタル化が段階的に進行する実態を確認しました。調査の結果、デジタル化フェーズ①(レセコン導入)が49.6%、フェーズ②(+予約システム導入)が28.1%、フェーズ③(+サブカルテシステム導入)までデジタル化を進めている歯科医院は11.6%になります。

▼フェーズ別で医院の分布(N=224)

※第1回記事にて掲載したグラフを改変:https://www.dentwave.com/metamoji_series_fulldx_01

また、フェーズ③(サブカルテのデジタル化)まで進んでいる医院には明確な共通点がありました。本部機能を持つ割合がフェーズ②の25%から46%へ上昇し、採用活動を行う割合も46%から65%へ上昇。組織的に経営に注力し、人材への投資も積極的に行っている傾向が確認されました。

▼フェーズ②とフェーズ③の差:本部機能・採用活動の有無を比較
【本部機能の有無】

【採用活動の有無】

 ※フェーズ②:N=63
 ※フェーズ③:N=26
 ※第1回記事にて掲載したグラフを改変:https://www.dentwave.com/metamoji_series_fulldx_01

これらを踏まえて、前回は「デジタル化の先にある経営を見据えた医院が動き始めている」という結論で締めくくっています。社会・業界トレンドである少子高齢化や人口減少の進行/人手不足の深刻化/材料費・人件費の高騰等が影響し歯科医院の経営難易度が高まっていくと、業界で生き残っていくため、今後デジタル化によって経営課題を解決しようとする医院は増加傾向になるでしょう。したがって、今フェーズ③のような業界でもデジタル化を先行して動いている歯科医院の動向を知ることは、将来の自院存続につながる重要な情報となります。
では、フェーズ③の歯科医院は、デジタル化を経営にどう活かそうとしているのでしょうか。

「デジタル経営」という考え方

今フェーズ③まで進んでいる歯科医院に共通するのは、「デジタル経営」の視点を持っている、ということです。
歯科医院においてデジタル化を「虫の目」で見てしまうと、デジタルツールを利用して目の前の業務の効率化にとどまり、デジタル化は「今ある業務を便利にする手段」のみになってしまいます。
「デジタル経営」を実践している歯科医院は、デジタルツールを利用して目の前業務を効率化するだけではなく、歯科医院全体を「鳥の目」で観察し、デジタル化という手段を用いて新たなサービスの提携に取り組んだり、業務の大改革を行います。つまり、デジタル化を経営の手段として位置づけているのです。
次に、デジタル化でどのように経営方針を実現するのか「デジタル経営」の視点で具体的な取り組みをパターンごとに整理していきます。

「デジタル経営」の取り組みパターン

「デジタル経営」をさらに具体化するために、経営資源の観点から整理してみましょう。伝統的に「経営資源」として挙げられるのは、「ヒト・モノ・カネ」の3つです(近年では「情報」を加えた4つとされています)。この考え方に沿って「デジタル経営」の取り組みを具体的に定義すると、以下のようになります。

「カネ」をデジタル化に投資し、「ヒト(=スタッフ)」や「モノ(=医療サービス)」のあり方を改善し、高効率・高収益・高満足度の医院経営を実現すること」

この定義に基づいて、実際にフェーズ③の歯科医院が取り組んでいるデジタル経営を見てみると、大きく2つのパターンに分けられます。

  • パターン①「ヒト」の改善:デジタル化によってスタッフの働き方を改善し、残業ゼロや時短営業、非生産的な業務からの解放を実現する。その結果、従業員満足度が高まる。
  • パターン②「モノ」の改善:デジタル化によって提供する医療サービスを改善する。これには2つのアプローチがあります。
    ②-Aは「従来やっていなかった診療メニューを本格導入して新たな収益源をつくる」
    ②-Bは「既存の診療サービスを効率化して、診療数の拡大や患者満足度の向上につなげる」

重要なのは、デジタル経営の形は一つではなく、自院がどちらに重きを置くかによってデジタル化の目的も使い方も変わることです。以下では、フェーズ③の医院がそれぞれのパターンでどのようにデジタルを活用しているのか、具体的な事例を見ていきましょう。

パターン①「ヒト」の改善:スタッフの働き方を改善する

このパターンでは、デジタル化の目的は「スタッフの働き方をよりよくすること」です。残業を減らし、負担の重い業務を仕組み化し、スタッフが長く働き続けられる環境をつくります。従業員満足度の向上と人材定着を目指す、人材不足が深刻化する歯科医院にとって重要なアプローチです。
スマイルデザイン吉田歯科(大阪府豊中市)は、「受付が定着しない」「育児との両立が難しく復職できない」という課題に対し、受付無人化という大胆な目標を掲げました。Dental eNoteの導入により受付業務をデジタルで再設計し、リモートで受付サポートという、場所を問わない働き方を実現。優秀なスタッフが辞めない環境づくりに成功しています。

この事例は、デジタル化のゴールが「スタッフにとっての働きやすさ」に明確に置かれている点が特徴です。受付業務の属人化を解消し、スタッフがライフステージに応じて働ける医院をつくるための手段として、サブカルテのデジタル化が位置づけられています。

パターン②-A「モノ」の改善:新しい診療メニューを本格導入する

これらを踏まえて、前回は「デジタル化の先にある経営を見据えた医院が動き始めている」という結論で締めくくっています。社会・業界トレンドである少子高齢化や人口減少の進行/人手不足の深刻化/材料費・人件費の高騰等が影響し歯科医院の経営難易度が高まっていくと、業界で生き残っていくため、今後デジタル化によって経営課題を解決しようとする医院は増加傾向になるでしょう。したがって、今フェーズ③のような業界でもデジタル化を先行して動いている歯科医院の動向を知ることは、将来の自院存続につながる重要な情報となります。
では、フェーズ③の歯科医院は、デジタル化を経営にどう活かそうとしているのでしょうか。

このパターンでは、デジタル化の目的は「医院にとって新しい診療メニューを本格的に提供できる体制をつくること」です。診療領域を拡張し、これまで取れていなかった点数を取れるようにし、患者一人あたりの単価を引き上げるアプローチです。
こはな歯科は、子どものMFT(口腔筋機能療法)に注力しています。2018年にMFTが保険適用となり管理指導料の算定が可能になったことを受け、田中院長はこう考えました。「仕組みとして加算が取りこぼされない設計ができれば、自分はノータッチでも、スタッフ主導で利益を上げられる体制がつくれるはず」。

この構想を実現するために導入されたのがDental eNoteです。4ヶ月の準備期間をかけ、診療時に確認すべき項目を一覧化したテンプレートを構築し、スタッフが患者に説明する際の「視覚的な説得力」を大幅に高めました。その結果、スタッフ主導で4,000万円の増益を実現。「自費に頼らなくても、保険診療で十分に積み上げられるようになった」と院長は語っています。

この事例では、MFTというこれまで院長先生しか提供していなかった診療メニューを、デジタル化による仕組み化により、どのスタッフも提供可能にしました。また、これまで取りこぼしのあった加算を取れるようになったことで、患者一人あたりの売上単価を引き上げることに成功しています。デジタル化が「医療サービスの拡張」の位置づけで機能している点が特徴です。

パターン②-B「モノ」の改善:既存の診療サービスを効率化する

このパターンでは、デジタル化の目的は「既存の診療サービスをより効率的に提供できるようにすること」です。診療以外に使われていた時間を削減し、その分を診療数の拡大や患者と向き合う時間に振り向けるアプローチです。
りお歯科クリニック(岐阜市)は、現在9台のチェアで、平日は160名、土曜日には200名を超える患者が来院しています。診療時間が夕方5時までであるにもかかわらず、患者数は減るどころか増加を続けています。折戸院長が着目したのは「ロスタイム」。「一人の時間を1分短縮すれば、200人で200分削減できる。その分、多くの患者を診られる」と考えられています。

Dental eNote導入によりカルテ検索が数秒で完了し、複数スタッフの同時書き込みも可能に。治療が終わる前に予約や会計の準備を整えられるようになり、患者の滞在時間が大幅に短縮されました。紙カルテ時代はカルテの出し入れに費やしていた時間を、今は患者さんとの会話に使えるようになったと受付スタッフは語っています。2026年末には隣地への23チェア規模に拡大移転を計画中です。
この事例では、デジタル化が診療以外の「ロスタイム」を削減し、同じ診療時間でより多くの患者に対応できる体制をつくり出しています。デジタル化が「医療サービスの効率化と質の向上」に効いている代表例といえます。

パターン①と②-Bは両立する

ここまで見てきたパターン①(ヒトの改善)とパターン②-B(モノの改善)は、見方を変えただけで、実際には同じデジタル化の取り組みが両方の効果を生むこともあります。紙カルテの出し入れの作業をなくせば、スタッフの業務負担は軽くなり(①)、同時に診療サービスの効率も上がります(②-B)。その両立を実現している事例を見ていきましょう。
クレモト歯科(大阪市浪速区)は、グループ院を含め6つの診療所、チェア37台、スタッフ90名を抱える大規模体制です。規模拡大に伴い紙カルテによる作業がボトルネックとなり、準備や片付け対応、同時書き込みの不便さ、データ管理にかかる時間などが日々の診療を圧迫していました。Dental eNote導入後は、カルテ検索・同時書き込み・画像共有がスムーズになり、スタッフ間の連携が劇的に向上した上、院長が外出中や他院にいる場合でも、最新のカルテを確認してその場で判断・指示し診療の質向上を進められています。

やまもとファミリー歯科(京都府八幡市)は、2005年の創立当初から訪問診療を外来と並ぶ柱として位置づけ、現在も月約230名の患者に対応しています。かつては患者ごとの紙カルテ一式、レントゲン画像、写真、介護・保険関連の複写様式などで、往診時の荷物は両手がふさがるほどの量になりました。iPad+Dental eNoteへの移行によりiPad1台で全患者情報にアクセス可能になり、移動中の急患にもその場で対応できるようになりました。その結果、急患の都度、歯科医院に戻る必要がなくなり、訪問スタッフの業務負荷を下げつつ、一日に訪問できる数を増やすことができています。

大久保歯科(仙台市)は、開業10年で積み上がった約4,000冊の紙サブカルテに将来リスクを感じ、デジタル移行を決断・DX検討チームを立ち上げて段階的に移行を進めました。導入初期はメモ共有から始め、その後写真貼付やスタンプ・テンプレートの活用へと広げていき、「選ぶ」「押す」動作中心の記録に切り替えていったことで、手書き時代に数分かかっていた作業が数秒へと短縮。小さな時短の積み重ねで今までの手書き時間を診療時間に充てつつ、最終的に診療時間を60分短縮しても残業ゼロを実現しています。


これらの事例は、スタッフの働き方をよくすると同時に、診療サービスもより効率的に提供できる体制をつくっている点が共通しています。パターン①と②-Bは、どちらかを選ぶものではなく、両立したうえでどちらに重きを置くかは経営者の考えによるということです。

まとめると、サブカルテのデジタル化とは…

ここまで見てきた事例は、パターン①「ヒト」の改善、パターン②「モノ」の改善、そしてその両立——というように、デジタル経営の形は医院によって様々です。
しかし、いずれの医院もその中心にあるのは、サブカルテのデジタル化でした。

  • パターン①ではスタッフが場所を問わず作業できるための環境として
  • パターン②-Aでは新しい診療メニューを誰でも均質に提供できる仕組みとして
  • パターン②-Bではロスタイムを削減しより多くの時間を患者に向けるための基盤として

それぞれ上記の通り、サブカルテが機能していました。

あなたの医院は、どの方向性に近いですか?

デジタル化の「正解」は一つではありません。スタッフの働き方を改善したいのか(ヒトの改善)、新しい診療メニューを本格導入したいのか(モノの改善)、既存の診療をもっと効率的に提供したいのか(モノの改善)。それによって、デジタル化の目的も使い方も変わります。
「うちはスタッフの働き方に課題があるのか」「新しい診療メニューに取り組める余地があるのか」「既存の診療にロスタイムが潜んでいないか」——まずは自院の課題と方向性を振り返ってみてください。そこから、自院にとってのデジタル化の意味が見えてくるはずです。
次回(第3回)では、ここまで繰り返し登場してきた「サブカルテ」そのものに焦点を当てます。そもそもサブカルテとは何なのか。アンケートデータやオープンデータをもとに、その定義と利用実態を整理していきます。

今ならDental eNote 45日間無料で体験!

デジタル化推進の第一歩として、まず情報収集していただくことも重要になるでしょう。
歯科医院向けデジタルノートMetaMoJi Dental eNote®は、500を超える歯科医院にご導入いただいております。まずは、Dental eNoteの便利さを無料体験版にてお気軽にお試しください。

その他第6回全シリーズはこちらから!

歯科医院の効果的なDX化の進め方
第1回 あなたの医院はどの段階にいる? 歯科医院のデジタル化の実態調査から見えた“先を行く医院の共通点”
第2回 【今回はこちら】サブカルテを経営基盤に変えた医院たち デジタル化フェーズ③の多様な実践
第3回 2026年5月末公開予定
第4回 2026年6月末公開予定
第5回 2026年7月末公開予定
第6回 2026年8月末公開予定
Popular Article

よく読まれている記事