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近年、歯科業界を取り巻く経営環境は大きく変化している。
多くの院長は、日々の診療で自ら手を動かす「技術者」でありながら、同時に財務や労務、採用、マネジメントまで担う「経営者」でもある。経営を見直す必要性は感じていても、目の前の診療や患者対応から簡単には離れられない——そうした葛藤を抱える医院も少なくないのではないか。

そこで今回Dentwave取材チームは、数多くの歯科医院の経営支援に携わる日本クレアス税理士法人の中川氏と、院内デジタルサイネージ「e-ha TV Smart」を通じて歯科医院と患者のコミュニケーション設計に携わってきた株式会社メディネットの福田氏にインタビューを行った。

歯科経営における最大の資源である「院長の時間」を、いかに本当に向き合うべき場面に使うべきか。
今回は、患者が治療の選択肢に気づき、納得して選ぶための説明業務にフォーカスし、これからの歯科医院に求められる院内コミュニケーション設計について話を伺った。

「その説明、院長が毎回担うべきですか?」 歯科専門税理士と考える 説明業務の生産性と“院内コミュニケーション設計”

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なぜ今、「院長時間」の使い方が重要になっているのか

日本クレアス税理士法人で執行役員・税理士を務め、歯科医院を含む医療機関の経営支援に携わる中川氏は、歯科業界を取り巻く経営環境がここ5年で大きく変化していると指摘する。

日本クレアス税理士法人で執行役員・税理士を務める中川氏

「以前は5,000万〜6,000万円ほどだった新規開業時の初期投資が、今では資材高騰の影響で9,000万〜1億円へと跳ね上がることも珍しくありません」(中川氏)
また融資を受けること自体は可能だが、その返済難易度は以前とは比べものにならないほど高まっている。
「借りることも難しいですが、返すことがより難しい。これまで以上に売上をしっかりと積み上げていかなければならない、非常にシビアな状況にあります」(中川氏)

さらに、歯科医院特有の「構造」が、院長の時間をより奪いやすくしている。
「院長先生は、自ら手を動かさなければ売上が立たない『技術者』でありながら、同時にマーケティングやマネジメントを担う『経営者』でもあります。この、社長業でありながら最前線の現場に立ち続けなければならないという点が、他業種にはない大きな特徴です」(中川氏)

その中でも、限られた時間の中で経営に意識を向け、少しずつ医院のあり方を見直せるかどうかで、近年差が生まれつつあると中川氏は語る。
とはいえ、日々の診療に追われる院長が、いきなりすべてを整理するのは簡単ではない。
だからこそ、膨大な役割の中から「本来集中すべき業務」を見極め、院長が担うべきことと、医院全体で支えるべきことを分けていく視点が、これからの歯科医院経営において重要になっている。

▼歯科医院全体と医療法人の医業収入の変化歯科医院全体低迷しつつも、医療法人は右肩上がりで推移
※出典:厚生労働省「医療経済実態調査(医療機関等調査)」をもとに株式会社メディカルネットが作成

院長に多様な役割が求められる中でも、患者とのコミュニケーションは、歯科医院経営において欠かせない時間である。
単に説明を行うだけでなく、患者が治療の選択肢に気づき、納得して選ぶための接点でもあるからだ。
そこで、全国の歯科医院に院内デジタルサイネージ「e-ha TV Smart」を提供し、医院と患者のコミュニケーション設計に携わってきた株式会社メディネット e-ha事業部のセールス&パートナーシップディレクター・福田氏にも話を伺った。

株式会社メディネットe-ha事業部のセールス&パートナーシップディレクターを務める福田氏

「年商3億円規模の医院では、トリートメントコーディネーター(TC)が組織的に機能しているケースもあります。一方で、1億円規模の医院では、補綴のカウンセリングまで院長が一人で担っている医院も少なくありません。説明だけは院長が直接行いたい、という先生もいらっしゃいますし、それが悪いという話ではないんです。ただ、本当は医院全体で治療の選択肢に気づいてもらい、患者さんが納得して選べる状態をつくりたい。でも、人員や教育の問題もあって、そこまで仕組み化しきれていない医院は多いと感じています」(福田氏)

説明の「質」も変化している。

かつてのように自費診療へ強く誘導するのではなく、CT画像や口腔内写真などを用いながら複数の選択肢を示し、患者自身に納得して選んでもらうスタイルが重視されるようになった。
一方で、その丁寧な説明を院長が真正面から担おうとするほど、時間的な負担はどうしても大きくなる。

「院長が自ら手を動かして治療しなければ売上が立たない構造の中で、説明業務まで全部抱え続けるのは、やはりどこかで限界が来ると思います。とはいえ、“ではスタッフに任せましょう”と簡単に言える話でもありません。患者さんとの信頼関係もありますし、院長先生自身が直接説明した方がいい場面があるからです。ただ、それを毎回、院長先生個人の頑張りだけで続けていくと、体調面にも、説明不足によるクレームにも、少しずつ無理が出てくると思うんです」(福田氏)

近年の資材高騰等によって経営の難易度が増す中、歯科医院にとって患者とのコミュニケーション時間、すなわち説明時間の重要性はより高まっている。
治療内容や選択肢を患者に正しく伝え、納得して選んでもらうことは、信頼関係を築くうえで欠かせない。
同時に、自費診療の相談やリコール率といった医院経営の持続性にも関わる。
では、歯科医院経営において、説明時間はどのような意味を持つのだろうか。

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歯科医院経営における「説明時間」の重要性

改めて、歯科医院における「説明時間」の位置づけについて中川氏に話を伺った。
中川氏は、説明業務は診療上欠かせない一方で、診療と経営のバランスにおいて葛藤を生みやすい時間でもあると語る。

「医療は患者さんの身体に直接影響を及ぼすサービスです。その前提で考えれば、説明時間は、患者さんに診療内容を正しく理解していただく重要な時間です。また、その時間で自費診療を案内するのであれば、歯科医院の売上の柱を作る、経営インパクトの大きな時間ともなります」(中川氏)

「1人に対して10分以上の説明を院長先生が毎回続けてしまうのは、経営的には見直しが必要な状態です。本来の臨床時間が削られて売上が立たなくなるだけでなく、待ち時間が発生することでGoogleマップでの低評価など、思わぬクレームを招くリスクもあります」(中川氏)

説明業務は、患者の理解を支えるうえでも、医院経営の観点からも重要な時間である。だからこそ、単に削るのではなく、誰がどの場面で担うべきかを見直す必要がある。

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説明時間を“短縮”ではなく“役割分担”で見直す

続いて福田氏に、説明業務の実態と、院長一人に集中しがちな説明を医院全体でどう支えていくべきかについて話を伺った。

「説明業務とは、単に情報を伝えることではなく、治療の選択肢を提示することだと思っています。もちろん医院として勧めたい治療がある場面もありますが、無理に誘導するのではなく、患者さんが“自分に必要な選択肢”として理解できることが大切です。そのプロセスが、結果として信頼関係につながっていくのだと思います」(福田氏)

一方で、実際の現場では、誰がどの説明を担うのか、どのタイミングで患者に情報を届けるのかが曖昧になり、結果として院長に説明が集中してしまう医院も少なくない。
こうした状況を見直すうえで鍵となるのが、「誰が、何を使って、どのタイミングで伝えるか」という役割分担である。

とりわけ、患者が治療の選択肢に自然と気づき、自分に関係のある情報として受け取るためには、診療前後の院内接点をどう設計するかが重要になる。
動画やデジタルサイネージは、その接点づくりを支える手段の一つだ。

「待合室での動画や院内での情報発信は、いわば説明の“前さばき”のような役割だと思っています。患者さんが何も知らない状態で診療室に入るのと、あらかじめ自分に関係のある情報に少し触れた状態で入るのとでは、その後の会話の始まり方が変わってきます。いきなり説明されるよりも、“そういえば待合室で見た内容だ”と思えるだけで、患者さんも話を受け取りやすくなるんです」(福田氏)

また、この“前さばき”によって、スタッフが担える役割も明確になる。患者が事前に情報に触れていれば、歯科衛生士やTCは、基本情報の共有や選択肢の整理、院長による説明後のフォローを担いやすくなる。
院長はすべてを一から説明するのではなく、不安への対応や重要な提案、最終的な意思決定を支える場面に時間を使いやすくなる。

診療成約までのステップ

さらに、こうした役割分担は、スタッフ側の心理的負担の軽減にもつながる。
役割や情報接点が曖昧なままでは、スタッフが患者に治療の選択肢を説明する際に、「押し売りしているように受け取られないか」という不安を抱きやすい。しかし、患者が事前に情報に触れ、自分に関係のある選択肢として受け取っていれば、その後の説明は一方的な売り込みではなく、判断を支える対話へと変わっていく。

「患者さんが事前に情報に触れていて、“自分にも関係があるかもしれない”と思った状態で会話に入ってくれると、衛生士さんたちも説明しやすくなります。スタッフ側も、売り込みたいわけではなく、必要な選択肢を知ってほしいだけなんです。そこが伝わると、説明は押し売りではなく、患者さんの判断を支える会話になります。結果として、コミュニケーションの質も高まると思います」(福田氏)

院長一人で抱える説明から、医院全体で支える説明へ。その設計が、これからの説明業務の質を左右する。

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e-ha TV Smartが支える院内コミュニケーション設計

では、その院内コミュニケーション設計において、e-ha TV Smartはどのような役割を果たすのか。
福田氏に話を伺った。

e-haTVSmartはAI搭載!その患者に適した映像配信が可能となる

e-ha TV Smartは、単なる「映像配信ツール」や「広告」と見られることもある。
しかし福田氏は、映像そのものだけでなく、それを届ける「待合室」という場所にこそ価値があると語る。
「待合室は、患者さんがこれから診療を受ける直前の場所です。その時点で、患者さんはすでに自分の歯や口の中に意識が向きやすくなっています。だからこそ、そこで銀歯の劣化や歯周病、予防に関する情報に触れると、“そういえば自分は大丈夫かな”と自分ごととして受け取りやすいんです。診療前の待合室で見る情報は、患者さんの受け取り方が変わってくると思います」(福田氏)

待合室での情報接点が変わると、診療室や受付での会話にも変化が生まれる。
導入医院からは、自費診療や予防、継続的な通院に関する話題が出やすくなったという声や、待合室の雰囲気づくりに役立っているという声も聞かれる。

「現場からは、『待合室で見た内容について患者さんから質問されることがある』『補綴やマウスピース矯正、予防について話すきっかけになっている』という声を伺います。もちろん医院によって反応はさまざまですが、患者さんとの会話が始まりやすくなること自体に、大きな意味があると思っています。また、映像が流れていることで、待合室の空気が少し明るくなったと言っていただくこともあります」(福田氏)

中川氏も、経営の観点から、待合室で情報に触れてもらう意義に触れる。
「歯科の場合、例えばセラミックの実物を見せられたとしても、患者さんにはその価値がなかなか伝わりません。しかし、サイネージを通じて口腔内の映像や情報にあらかじめ触れていれば、自分にとって必要かどうかを判断しやすくなります。先に情報を知っていることで患者さんの理解が進み、その後の院長による説明の深みも変わってくるはずです。限られた診療時間の中で、患者さんの納得と説明の生産性を両立したい医院にとって、有効な選択肢の一つになるでしょう」(中川氏)

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今後の展望

最後に、読者である院長が明日からひとつだけ着手できることがあるとしたら何か――そんな問いを投げかけながら、具体的な次の一歩について話を伺った。
中川氏は、院長がまず着手すべきこととして、「患者さん一人ひとりにかけている時間の分析」を挙げる。

「本当にこれは自分がやらなければならないのか、と問い直してみてください。院長の5分、10分には極めて高い時間単価があります。無駄や“かけすぎている時間”を特定することが、改善への第一歩になります」(中川氏)

その際は、誰がその業務を担っているのかという「人」の視点と、診療時間のうちどこまでが医療行為で、どこからが説明や情報提供なのかという「内容」の視点で分解することが重要だという。

一方、株式会社メディネットの福田氏は、院長時間の棚卸しに加えて、患者との会話がどこで始まりにくくなっているのか、どの情報が院長一人に集まりすぎているのかを見直すことが重要だと話す。

「院長先生って、最後は自分で判断しなければならない立場だと思うんです。だから、説明業務についても“自分がやるしかない”となりやすい。でも、一度立ち止まって見てみると、院長先生が直接向き合うべき場面と、スタッフが支えられる場面、仕組みで先に情報を届けられる場面は分けられるはずです。まず大切なのは、患者さんとの会話がどこで始まりにくくなっているのか、どの情報を院長先生が毎回一から説明しているのかを見てみることだと思います。そのうえで、デジタルやデザイン、AIの力も活かしながら、患者さんと医院の間にある“伝わりづらさ”をどう埋めていけるかを一緒に考えられればと思っています」(福田氏)

今後ますます経営難易度が増していく歯科業界。
その中で、説明業務は歯科医院経営において根幹となる重要な業務であり、戦略的に院長時間の確保が必要な位置づけだ。

ただし、それは院長が説明を手放すということではない。
院長が本当に向き合うべき場面に集中できるように、患者が情報に触れる接点をつくり、スタッフが理解を支え、医院全体で説明を設計していくこと。
その第一歩は、自院の説明業務がどこで院長に集中しているのかを、少し客観的に見直すことなのではないだろうか。

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編集後記

今回の取材を通じて印象的だったのは、「院長の時間」が単なる労働時間ではなく、医院の存続を左右する「最も貴重な経営資源」として再定義されていた点でした。
歯科経営においては、院長自らが手を動かして売上を作る「技術者」としての側面に意識が向きがちですが、実際にはその背中に経営者としての重圧がのしかかっています。
「忙しさ」を個人の能力不足ではなく、解決すべき「経営の構造課題」と捉え直し、限られた時間をいかに戦略的に活用するか。
その意思決定こそが、これからの歯科医院が歩むべき持続可能な経営の形といえるのではないでしょうか。

▼個人情報等の管理責任者
・会社名:株式会社メディネット
・代表者名:代表取締役 山本晴貴
・住所:〒569-0072 大阪府高槻市京口町9番5号 太陽生命高槻ビル4階

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