conference - Article

学会・イベント - 記事

2025年10月8日・9日(水)(木)、東京で開催された日本口腔筋機能療法(MFT)学会では、全国から多くの歯科医師・歯科衛生士が集まり、「MFTの臨床定着と多職種連携」をテーマに熱い議論が交わされた。

その中でも特に印象的だったのは、
・福増矯正歯科による「MFTの成功のために〜ゴール設定とは〜」
・「MFTに於ける歯科医師・歯科衛生士の5W1H」
の2つの講演だ。

どちらも、“技術論”よりも“継続とチーム力”に焦点を当て、臨床現場に直結するヒントを多く残した。

【学会レポート】MFTの現在地と未来―継続と連携が生む「機能の育成」― 日本口腔筋機能療法(MFT)学会2025より

著: /

関連タグ:

1.MFTの成功のために〜ゴール設定とは〜(福増矯正歯科)

30年以上にわたりMFTを実践してきた福増矯正歯科が語ったのは、「成功の鍵はゴール設定にある」という明確なメッセージだった。
継続が難しいMFTを“習慣化”へ導く工夫が、体系的に紹介された。

ゴール設定の進化と全患者へのMFT導入
当初、MFTは「舌癖や口唇癖など明確な問題を持つ患者だけ」に行うものとされていた。
しかし福増矯正歯科では、リテーナー使用の協力度向上や治療後の安定性を実感したことをきっかけに、「全患者を対象にMFTをシステム化」することに。
今では初診から保定期まで、歯科医師と歯科衛生士が機能面の情報を共有し、段階的に指導を行う体制を確立している。

実践的な継続支援
・6ヶ月ごとに成果資料を作成して患者に手渡す(担当歯科衛生士による記録)
・自宅練習用のMFT動画を独自制作
・姿勢・鼻呼吸・あいうべ体操を全員に指導

特に、成果資料のフィードバックが患者のモチベーション維持に効果的で、
「見える成果」が“やる気”を支える仕組みとして好評だという。

さらに、月1回のスタッフ症例検討会を実施し、歯科衛生士同士が指導経過を共有。
全スタッフが「MFTは全患者に必要」という共通認識を持つ文化を育てている。

2. MFTに於ける歯科医師・歯科衛生士の5W1H

もう一つ印象に残ったのが、歯科医師と歯科衛生士の“共通観察”を重視する講演。
舌・姿勢・発音・呼吸――。一つひとつの「気づき」をチームで共有することで、MFTの精度と再現性を高めている。

2-1.「全員で舌を見る」文化をつくる
演者はこう語った。
「DrもDHも、全患者の舌を“毎回”見る習慣を持つこと。これがMFT成功の第一歩です。」
初診時には問診・口腔内写真・動画(発音・滑舌)・姿勢写真を必ず撮影。
また、ブラッシング時に患者自身の歯ブラシを使わせ、
舌でブラシを押す動作を観察することで、舌癖の有無(特に低位舌)を判断するユニークな方法も紹介された。

このように、「日常診療の中にMFT評価を組み込む」ことで、機能の異常を早期に把握できる体制を作っている。

2-2.チームで見て、チームで治す
講演の中で最も印象的だったのは、「誰か一人のMFTではなく、チームMFTであるべき」という考え方だ。
歯科医師、歯科衛生士、受付スタッフまでもが、患者の表情や姿勢を観察し、情報共有する。
患者の生活背景に寄り添いながら、“機能の育成”を医院全体で支えていく姿勢が強調された。
舌や口だけでなく、“その人の全体の動き”を見る。それが真のMFTと言えるだろう。

3.学会を通して見えたMFTの新しい方向性

2つの講演に共通していたのは、「MFTを特別な指導ではなく、日常診療の一部にする」という考え方だった。
MFTは“練習”ではなく、“習慣化支援”。そして“医院チーム全体で行う医療”。
ゴール設定を患者と共有し、データで見せること。
そして、歯科医師と歯科衛生士が同じ目線で舌や姿勢を評価すること。

これら3つのアプローチは、今後のMFT臨床を進化させる重要なヒントになるだろう。
MFTの本質は、単なる筋トレでも、矯正補助でもない。
それは「機能の再教育」と「生活の再構築」であり、患者のQOLを変える予防医療そのものである。

4.今後の展望とMFT学会のゆくえ

今回の学会を通じて見えてきたのは、MFTが「個人の技術」から「チームで育てる医療」へと進化しているという流れである。
今後の学会は、臨床現場での再現性と教育体制の強化を柱に、より体系的なMFTの標準化を進めていくことが期待される。
また、これからのMFT学会では、歯科医師・歯科衛生士だけでなく、耳鼻科医や言語聴覚士などとの連携がさらに重要になるだろう。

また、デジタルツールの活用(動画指導・姿勢計測・AIによる舌位分析など)も進み、指導の質を見える化する時代が到来している。
MFTは、もはや矯正治療の“補助”ではなく、予防医療・成長支援の中核的プログラムとして進化のステージに入ったと言っても過言ではないだろう。

まとめ

・MFT成功の鍵は“実現可能なゴール設定”と“継続支援の仕組み化”。
・「成果資料」「動画」「スタッフ症例検討会」が継続の原動力。
・歯科医師と歯科衛生士が共通の観察基準を持つことで、MFTの精度が上がる。
・MFTは医院全体で行う「チーム医療」であり、習慣化支援の時代へ。

Popular Article

よく読まれている記事