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10年に1度改定されるスウェーデンナショナルガイドラインの責任者 ピーター・リングストロム教授をはじめ、時代を変えていく8名の講師による講演は大盛況でした。
Dentwaveでは、ピーター・リングストロム 教授、ステファン・レンバート 教授、Kim Hyun Jeong 教授のインタビューと各先生の講演についてご紹介します。
スウェデンティスト認定講習会2025 参加レポート
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講演スケジュール
当日は、以下のスケジュールで進行いたしました。
| 時間 | プログラム |
|---|---|
| 9:40 | 開会式・マスタースウェデンティスト授与 |
| 10:00-11:00 | 講演① AI・スマート材料で実現する次世代医療 一般財団法人日本スウェーデン歯科学会 会長 ピーター・リングストロム 教授 |
| 11:00-11:10 | 休憩 | 11:10-11:40 | 講演② 再生医療×インプラント 医療法人社団善歯会グループ 理事長、日本スウェーデン歯科学会 理事 谷口 善成 先生 |
| 11:40-12:10 | 講演③ カリソルブ療法/ペリソルブ療法 ハンズオン |
| 12:10-13:10 | お昼休憩 |
| 13:10-14:00 | 講演④ AIが変える患者セルフケア最前線 一般財団法人日本スウェーデン歯科学会 理事、医療法人社団 栄昴会 理事長 中原 維浩 先生 |
| 14:00-14:30 | 講演⑤ AIとIOT 口腔洗浄器の臨床的効果 ハーバード大学医学部 麻酔科学 博士後期研究員、ソウル大学校 歯学部 大学院 教授 代表理事 Kim Hyun Jeong 教授 |
| 14:30-14:40 | 休憩 |
| 14:40-15:15 | 講演⑥ 爆変する歯科 IT×AI×光×GF 一般財団法人日本スウェーデン歯科学会 事務局長、医療法人財団興学会 代表理事 小野 芳司 |
| 15:15-15:40 | 講演⑦ クリニック運営を革新する会員サービスの活用 一般財団法人日本スウェーデン歯科学会 評議員、ブルージラフ株式会社 代表取締役社長 小林 孝至 |
| 15:40-16:10 | 講演⑧ 再石灰化から強石灰化へ 株式会社NISHIO 代表取締役社長 西尾 秀俊 |
| 16:10-17:10 | 講演⑨ AI×ペリオの最前線 AIは歯周病治療にどう役立つのか 一般財団法人日本スウェーデン歯科学会 副会長 ステファン・レンバート 教授 |
| 17:10 | 終了 |
インタビュー
開演前にまずは、ピーター・リングストロム教授、ステファン・レンバート教授にインタビューが行われました。
▼2023年以来の今回の開催にどのような点に注目してほしいですか?
ピーター教授:従来の科学的なオペレーションはもちろんのこと、今回はAIと新しいテクノロジーを駆使して、現代の歯科の病に対してどのようにアプローチできるかについて話していきたいです。
ステファン教授:高齢化社会において、高齢者の方たちのケアにフォーカスしてお話ししていきます。
特に、AIで搭載した電動歯ブラシや、認知症が出ている患者さんたちに医師がどう対応できるか、そしてオーラルケアによって認知症の障害も引き下げていくことができるといった点に注目して話を進めたいと思っています。

▼スウェーデンでは、歯磨きした後うがいをしないという話を聞きましたが、実際のところどうなのですか?
ピーター教授:スウェーデンでは、フッ化物(フロライド)の使用から最適な効果を得るという側面に重点を置いています。
そのため、フッ化物の効果を長く持続させるために、1日2回歯磨きをし、毎回2cmの歯磨き粉を使用し、2分間磨き、その後は限られた量の水でのみすすぐべきであるとされています。

▼講演の主要なトピックと、特に高齢者ケアに関してどのような点に注目してお話しされるか教えてください。
ステファン教授:主要なトピックとして、AIを搭載した電動歯ブラシの使用方法と、高齢者が増え認知症の症状も出てくる患者さんたちに対し、医師たちがどう対応していけるかに注目しています。
オーラルケアを実施することで、認知症の障害を引き下げていくことができるという点に注目してお話しを進めます。

▼みなさんへメッセージをお願いします。
ステファン教授:今回の私の講演では、特に高齢者の方たちのケアについてフォーカスしてお話ししていくんですけれども、例えばAIを搭載した電動歯ブラシですね。
これは、これからこの高齢者が増えていく、そして少し認知症も出てくる患者さんたちに対して、どう医者たちが対応していけるかという点に注目します。
そして、オーラルケアをすることによって、認知症の障害も引き下げていくことができるといったことに注目して、お話をしていきたいと思っています。
ピーター教授:進歩したAIというのは、非常に素晴らしいものです。
現在の歯科医療において、例えば診断に使ったりですとか、また、患者さんの教育と言いますか、『このようにケアをしていれば、もっともっと口腔内が良くなりますよ』といったことにも非常に使っていけるため、非常に良いと考えています。

続いて、Kim Hyun Jeong 教授にもインタビューが行われました。
▼本日ご講演いただくテーマについて教えてください。
Kim教授:講演のテーマは、2000年から病院やコミュニティベースケア(地域社会を基盤としたケア)に携わってきた経験に関連しています。
私はソウル大学の教授を務めており、口腔関係の活動も行っています。
最近、「COMORAL(コモラル)」という新しい口腔ケアデバイス(口腔内洗浄機)を発明しました。このコモラルは、韓国政府の長期介護国民保険制度によって支援されており、コミュニティの設定で健康を促進するための非常に優れた手段として韓国で始まったばかりです。
私は、この製品を自分の子供のように紹介できることを非常に嬉しく思っています。
今後は、カナダやオーストラリアといった世界に向けて、この口腔内洗浄機を広めていきたいと考えています。
▼COMORAL(コモラル)の最大の魅力は何ですか?
Kim教授:COMORAL(コモラル)の最大の魅力は、特に口の中をきれいにクリーニングする機能が、一般的なフロスやうがいでは対応が難しい場面でも活用できる点です。
具体的には、障害のある患者さん等、福祉施設などでベッドサイドでも使用できる強力なメカニズムを持っているためです。これにより、口の中を一気に洗浄することができます。
このように、福祉施設や病院における患者さんに対して注目してほしい商品になっています。

▼AI技術は、具体的にどのような目的で活用されていますか?
Kim教授:AIは、特に診断や患者の歯の状態を把握することに非常に有用であると考えられています。また、コミュニティ設定での個別化された口腔ケアのために重要であり、目視で確認できる水(液体)の画像をAIアルゴリズムに適用し、口腔の状態をモニタリングするために利用されています。
AIによって、成人の慢性歯周炎のような重要な臨床的問題に対処することを目指しています。
▼みなさんにメッセージをお願いします。
Kim教授:私はCOMORAL(コモラル)を開発してきて、子供のように育て上げた製品で、皆さんにこのCOMORAL(コモラル)の良さを知っていただき、自分の毎日の口腔ケアに貢献できるかを考えていただけたらいいなという風に思っております。

AI・スマート材料で実現する次世代医療
開会式・マスター認定授与式から始まり、講演はピーター・リングストロム 教授(一般財団法人日本スウェーデン歯科学会 会長)からスタートしました。
ピーター教授は「レントゲン写真や口腔内画像を分析するためのAI搭載ソフトウェアに関して」「遠隔歯科治療とAI – う蝕治療における未来のツールに関して」「う蝕予防や歯の硬組織の再石灰化に使用される、スマート歯科材料-生体活性材料に関して」をテーマに、う蝕管理における現代技術の活用と展望を解説。
従来の主観的な診断から脱却し、AI診断やデジタル画像で精密予防を目指す必要性を強調しました。
教育ではアバターが、治療では歯髄保存のためのバイオアクティブ材料や最小限の切削が重要と説明。テクノロジーは強力なアシスタントだが、最終判断は歯科医師の倫理的責任であると結びました。
再生医療×インプラント
続いて、谷口 善成 先生(医療法人社団善歯会グループ 理事長、日本スウェーデン歯科学会 理事)は「インプラント治療の新たな臨床的意義:抗加齢(アンチエイジング)の観点からの症例報告と考察」「インプラント骨造成における幹細胞培養上清の臨床応用とISQ値・埋入トルク値による定量的評価」「再生医療における多血小板血漿、血小板濃縮材料と幹細胞培養上清の比較」について講演されました。
低侵襲治療が求められる中、幹細胞培養上清を用いることで、骨再生期間の短縮、確実な骨結合、痛み・腫れの軽減が期待できると解説。
上清に含まれる因子が、抗炎症作用や骨芽細胞への分化誘導を促進します。高齢者症例での早期回復とQOL向上事例を紹介し、再生医療が今後の歯科医療に不可欠な分野であると強調されました。
カリソルブ療法/ペリソルブ療法 ハンズオン
昼休憩の前のハンズオンでは、ピーター・リングストロム 教授(一般財団法人日本スウェーデン歯科学会 会長)とステファン・レンバート 教授(一般財団法人日本スウェーデン歯科学会 副会長)により回転器具やレーザーと同等の効率を持ちながら、歯牙に優しく作用する革新的なソリューションを用いた技術が実演されました。
この方法は溶液を窩洞に滴下し、少なくとも30秒待って組織へ浸透させてから、器具で表面を優しく擦り取るという手順が基本です。
出血が製品の作用を妨げるため、深いポケットやインプラント周囲への適用においては、底部から溶液を確実に充填し、適切な浸透時間を確保することの重要性を強調。
このテクノロジーは「攻撃的ではない(not as aggressive)」ため、患者が従来の治療法と同じような痛みを伴わない、穏やかな処置を可能にする点も説明されました。
AIが変える患者セルフケア最前線
午後は中原先生からスタートしました。
中原 維浩 先生(一般財団法人日本スウェーデン歯科学会 理事、医療法人社団 栄昴会 理事長)は、「AIが変える〈患者セルフケア〉最前線― スウェーデン・ナショナルガイドラインを臨床と経営にどう活かすか―」をテーマに講演しました。
医療分野でAIに任せる潮流が始まり、歯科でも2020年代からAIが本格化し、パノラマや口腔内写真のAI画像解析は、異常検出や診断アシスト、経時変化の追跡に有効で、AIとの協働で新しい仕事が生まれると主張。
スウェーデンの例から、AIが多面的なデータに基づき総合的なリスク評価を行う重要性を強調しました。
これにより、リコール間隔の個別化や医院効率化に貢献。また、AIとスマートデバイス連携によるセルフケア支援(AIコーチング)で、シームレスな予防医療の実現を展望しました。
AIとIOT 口腔洗浄器の臨床的効果
続いてKim Hyun Jeong 教授(ハーバード大学医学部 麻酔科学 博士後期研究員、ソウル大学校 歯学部 大学院 教授 代表理事)は、「AIとIoT基盤のカスタマイズされた密閉型多チャンネル口腔洗浄機の臨床的効果」について解説されました。
口腔疾患の主原因であるバイオフィルムを毎日完全に除去する「ゼロ次予防」戦略の重要性を強調されました。
しかし、高齢者の多剤服用(Polypharmacy)による口腔乾燥やセルフケア能力の限界が、効果的な口腔衛生の維持を困難にしている現状を指摘。
講演では、従来のケアで除去困難なバイオフィルムを多方向の加圧水と同時吸引で効率的に除去する密閉型マルチチャンネルデバイス「COMORAL(コモラル)」を紹介しました。
このデバイスは、複数の臨床研究で有効性が示され、フレイル予防・管理への有望な手段として、韓国の長期介護保険制度の承認福祉用具として在宅ケアで活用が進んでいる現状が示されました。
AI×ペリオの最前線 AIは歯周病治療にどう役立つのか
学会のトリはステファン・レンバート 教授(一般財団法人日本スウェーデン歯科学会 副会長)が務められました。
ステファン先生は、EFPの指針に基づく歯周病の段階的治療を解説し、行動変容や再評価の重要性を強調されました。
高齢化に伴うインプラント周囲炎や認知機能低下患者の管理に対し、電動歯ブラシによる口腔衛生改善の有効性を提示。
また、AI技術の活用例として、スマート歯ブラシによる動機付けやX線画像解析による高精度診断を紹介し、AIは診断精度を向上させますが、最終的な治療方針は臨床家の判断に委ねられると締めくくられました。
まとめ
本講習会は、「AIで変わる未来の歯科医療」をテーマに、スウェーデンナショナルガイドラインに基づいた最先端の知見を提供しました。
ピーター先生のAI/スマートテクノロジー活用、ステファン先生の高齢者ケア、谷口先生の幹細胞応用インプラント、Kim先生のAI/IoT洗浄機「COMORAL(コモラル)」、中原先生のAIリスク評価など、精密予防と倫理的判断の重要性を中心に歯科医療の進化を実感できる濃密な学びの場となりました。
今後はウェブ受講も予定されています。
直接参加が難しかった先生も参加していただきやすくなりますので、《日本スウェーデン歯科学会サイト》にて詳細の決定をお待ちください。
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