第10回 実験的歯科医院奮闘記(10) ちょっとキザですけれど,暇な頃が懐かしい

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 まるで明日にでもつぶれるかの状況でスタートしたわが実験的歯科医院は,幸いにも軌道に乗ってきた.自分ではもうこれ以上は望めないだろうという程度にも収入が伸びてきた.まさに皆様のお陰である.それでも経営者は,まだまだ満足せず,さらに何%アップをなどと言ってくる.確かにチェアは空いているし,フル稼働すればさらに50%程度はアップできそうな感じはある.でも,仕事ばかりが人生ではないし,私も60代半ばに差し掛かってきた.これ以上伸ばしても,さらにさらにと要求されるばかりであろう.

 ただ残念なのは,まだまだ私の描いた理想的な形態,「キレイ」がキーワードの歯科医院には程遠いことである.つまり,新聞記事のお陰で,それと連載中のエッセー(読売新聞夕刊隔週:歯科医つれづれ記)のお陰で,患者さんは次々といらっしゃってくれる.でも,それはそれでとてもうれしいことではあるが,患者さんの多くが私に診て貰いたいと言うのがつらいところである.

 それでは単なる「安田歯科医院」が丸の内に出来ただけの話で,国民の歯の健康を考え,同時に歯科医院への来院を促すことを目的として始めたものとは程遠い状態である.本来の予防・管理,クリーニング,ホワイトニングを中心とした歯科医院を目指して,ともかくはケア部門の充実を計らなければならない.そうしなければ,相変わらず国民は歯が痛くならなければ歯科医院に訪れないし,歯はどんどん悪くなる一方である.

 ケア部門を充実させるためには,おそらく,普通の歯科医院とは違った戦略が必要なのであろう.アメニティというか,サービスというか,こういうものを前面に打ち出した戦略が必要なのであろう.開院当初に持っていた理念を改めて実現しなくてはならない.再び,高野登著「リッツカールトンがたいせつにするサービスを越える瞬間」を皆で読み始めた.開院当初は読んでいたものの,あまりの忙しさに忘れていたのである.確かに収入は順調に伸びてはきたが,肝心の患者さんを思いやる心がおろそかになってきた,と感じる.「初心忘るべからず」である.この歳になって,皆から反対されながら取り組んだ実験的歯科医院である.何とか理想の歯科医院を目指したいと思う.

 10回にわたってお伝えした奮闘記もとりあえず中休みにしようと思う.皆さんに心配をかけたが,1年を経過した現在,お陰様で収入だけは軌道に乗っている.この歯科医院を如何に自分の理想の形態に育てるかはまた次の機会にしたいと思う.長い間,私の独りよがりのたわ言にお付き合い頂きありがとうございました.次回,半年後になるか,また1年後になるかは定かではありませんが,理想の歯科医院に近づくまでの奮闘記を是非ご期待下さい.

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