第6回 ドイツ歯科技工士マイスターとして想う事 第6章

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☆歯科器材の変革とその影響 1. 金属アレルギーについて: 本章からは臨床編へ角度を変え、コラムを展開して行こうと思います。そこで臨床上の実際的理論、手法を解説する前に、先ず歯科器材の変革とその影響を考慮し、「金属アレルギー」、「ジルコニアを含むオールセラミックス」、「CAD/CAM普及に伴う歯科技工の行方」や「再生医療における歯科技工分野の役割」等の問題を提示しつつ考察してみましょう。
(図01:金属アレルギーを引き起こし易い金属) *東京都済生会中央病院データより

◎ヨーロッパでのアレルギー症の現状:

ヨーロッパ、とくにドイツ女性のアレルギー罹患率は80%を超え、医療関係におけるアレルギー症の認識度も当然高い。中でも金属アレルギーの患者は最も多いと言われている。ヒトの身体に異物が認識され、その次回の侵入を防御する記憶を感作(かんさ)と呼び、一度感作が生じることによって金属アレルギーはほぼ一生持続し金属アレルギー自体が完治することはないと言われている。身体には本来あってはならない物質の進入を拒否し、また細菌の侵入を防ぐ免疫反応を起こさせる働きがある。 そこで感作されるときわめて少量の原因物質(アレルギーを起こす金属)と接触するたびに皮膚炎などを引き起こす。その中で唾液を介在しガルバニ電流の電位差による口腔内における早期のイオン化傾向の高い金属溶出が大きな問題となっている(図02&03)。 (図02) (図03上:金属アレルギーの症状、図03下:感作金属撤去後の治癒) * 新潟大学歯学部HPより そこでヨーロッパにおいて「口腔内の金属アレルギー」を引き起こし易い金属物質としてパラジウム(Pd)、銅(Cu)などが浮上し、大学病院での異種合金使用(鑞着等も含む)の禁止も相まって、メーカーによるこれらの金属物質を含有しない合金のマーケティング化が促進された。その結果、より生態親和性を目指した「バイオ系」の高カラット金合金が我が国でも登場することとなる(図04)。ただし、現在の金属自体のコスト高騰により閉鎖的マーケティング感が浮き出て来ていることも事実である。 (図04) しかし、患者自身のための「一口腔内モノメタル(単一金属)」を実現できる症例は固定性補綴物では容易である(図05)が、鑞着を伴う可撤性のコンビネーション・デンチャーでは金属接着材を応用することも可能であるが、長期的予知性は低い。そのため、ドイツではレーザー溶接法を応用した、同一金属を用いた金属形成加工法が一般的になりつつある。 (図05:上:術前、下:術後) 臨床提供;東京都港区開業「宇毛玲先生 (図06) ヨーロッパ技工界においては、早くから抵抗溶接法(スポット溶接)が歯科矯正用、あるいは補綴においても鑞着用の仮着に用いられて来た。しかし、あらゆる角度からの視点を考慮したレーザー溶接の優位性、または利便性について今を遡る25年程前から議論され、1994年より歯科技工臨床への適応可能なレーザー溶接機(図06)の登場を観ることになる。それ以降、特にドイツにおいては約1,700を超える歯科技工所での導入が行われ続け、更に2003年の国際デンタルショー・ケルン(IDS)では1,290機のレーザー溶接機が購入された報告がある。現在、ドイツ国内には約6,800の歯科技工所が存在し、上記の導入数(約3,000機)を考慮すれば45%のレーザー溶接機普及率となる。下記に示す症例はその典型である言えよう(図07〜10)。 症例01: バイオモノメタルの自家製アタッチメント付きテレスコープ・コビネーションデンチャー (図07) (図08) (図09) (図10) また、もう一つの選択肢として、良好なアダプテーション、および審美性を兼ね備えたゴールド99.98%であるガルバーノ・エレクトロフォーミングとバイオメタルのイオン化傾向の極力低いコンビネーションも考慮できる(図11〜16)。

症例02:ガルバーノテクニックとセラミックス焼付用バイオメタルを応用したチャネルショルダー・アタッチメント付きテレスコープ・コンビネーションデンチャー

臨床提供:ドイツ、デュッセルドルフ市のデュッセルドルフ大学(Heinrich-Heine-Universitat)病院歯科助教授「ガブリエル・ディートリヒス先生」 (図11) (図12) (図13) (図14) (図15) (図16) さて、ゴールド99.98%のガルバーノ・エレクトロフォーミングを応用したフルメタルプレートの製作も可能であり、金属自体のアレルギー、または接触性皮膚炎患者を除けば、最もイオン化傾向の少ないケースと言えよう(図17)。

症例03:ガルバーノ・フルメタルプレート

臨床提供;神奈川歯科大学付属横浜クリニック インプラント科 歯学博士 「林 昌二」先生 (図17)   *次章では「ジルコニアを含むオールセラミックス」の実際について解説を行っていきます。
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