▶新規会員登録
  • HOME
  • 記事
  • Monthly column
  • 第14回 歯の再生‐マウス歯胚組織と細胞を組み合わせた歯の再生‐その2‐

記事

2013/10/24

第14回 歯の再生‐マウス歯胚組織と細胞を組み合わせた歯の再生‐その2‐

 シャープ教授らが考案した歯の再生方法は、胎生期の自然に起きる歯の初期発生をヒントにしています。マウスにおいて、胎生期10日目の初期歯胚は、上皮組織が歯の誘導能を持っています。この上皮組織を使って歯の再生への可能性を示しました。

 初期の歯胚上皮組織は胎生10日目の胎児の下顎から第1臼歯を取り出します。この初期歯胚から間葉組織をはずして間葉組織をはずして破棄することで上皮組織だけにします。破棄した歯胚の間葉組織の代わりにES細胞、成体の骨髄間葉系幹細胞、そして、神経幹細胞をそれぞれ必要な細胞数を集めて、高回転で細胞群を遠心させて、小さな細胞塊にします。これで、ES細胞塊、骨間葉系幹細胞塊と神経幹細胞塊ができます。これらの細胞塊をそれぞれ、先ほど残した歯胚上皮組織と組み合わせて、擬似歯胚を作ります (図1)。この擬似歯胚を数日間培養皿上で培養すると、歯の発生初期に発現する遺伝子が発現してきました。この結果は、ES細胞、骨髄間葉系幹細胞そして神経幹細胞が初期歯胚の上皮組織からの信号によって、歯胚中に存在するような間葉系細胞に分化したことが推測されます。

(図1)

 この推測から、初期歯胚上皮組織と細胞塊を組み合わせた擬似歯胚から歯が再生すると考えて、この擬似歯胚を免疫不全マウスの腎臓の皮膜下に移植しました。移植後12日に取り出すと、予想通り、この組織と細胞を組み合わせた擬似歯胚から歯牙が再生しました。この再生歯の歯冠の形態は天然歯と類似していました[1]。この結果から、歯胚上皮組織に相対する間葉細胞は歯胚の細胞でなくても、歯が再生することがわかりました。つまり、胎生期の初期歯胚の上皮組織には、歯胚を形成するための必要な多くの信号が含まれ、初期の歯胚上皮組織さえ手に入れることが可能となれば、歯胚の間葉細胞は必要ないことがわかりました。これは、新しい細胞源を見つけたことになり、歯の再生の可能性の幅が増えたといえますが、どのようにして、胎児から初期歯胚を得るかは、今後の課題と思われます。

 さらに、シャープ教授らはこの擬似歯胚を成体のマウスの口腔に移植しました。マウスには、通常、歯の無い部位が切歯と臼歯の間にあり、この部位をディアステーマと呼んでいます。このディアステーマにこの擬似歯胚を移植すると、移植後3週にて、歯が再生していましたが、再生歯の形態は天然の歯の形態と少し異なっていました [2]。ヒトの歯は、部位によって形が異なります。再生歯の形態をどのように決定するかについては、まだ、わかっていません。

参考文献

(1)
Ohazama A, Modino SA, Miletich I, Sharpe PT. Stem-cell-based tissue  engineering of murine teeth. J Dent Res l2004;83: 518-22.

(2)
Sharpe PT, Young CS. Test-tube teeth. Sci Am l2005;293: 34-41.

記事一覧
プロフィール 第48回 【第1回】再生医療産学官連携シンポジウムに参加して(2016/11/14)第47回 「すべての疲労は脳が原因 著者:梶本修身」を読んで(2016/11/02)第46回 リバスキュラリゼーションを再考する(2016/10/13)第45回 象牙質が痛みを感じるメカニズムについて(2016/08/03)第44回 イモリの再生 ―第二話 イモリの網膜再生―(2016/07/07)第43回 イモリの再生 ―第一話 肢の再生メカニズムについて―(2016/06/02)第42回 【後編】ヒトの頬脂肪体から脱分化脂肪細胞(DFAT)が入手可能に(2016/05/13)第42回 【前編】ヒトの頬脂肪体から脱分化脂肪細胞(DFAT)が入手可能に(2016/04/28)第41回 細胞再生医療研究会に参加して ― 糖尿病幹細胞 ―(2014/07/31)第40回 成都にてThe Second International Conference on Dental and Craniofacial Stem Cellsが開催(2014/04/25)第39回 平成24年度「国語に関する世論調査」(2014/04/01)第38回 第一回 再生医療資格認定セミナーに参加(2014/03/10)第37回 イギリス・ウェンブリーで開かれた国際学会に参加(2013/10/29)第36回:シアトルにてInternational Association for Dental Research (IADR)が開かれる(2013/10/24)第35回 コーヒーの効果と夏太りー日本経済新聞からー(2013/10/24)第34回 11th International Conference on Tooth Morphogenesis and Differentiation(TMD)に参加‐海外旅行の落とし穴‐(2013/10/24)第33回 3rd TERMIS World CongressがViennaにて開催(2013/10/24)第32回 イリノイ州立大学歯学部にて大学院講義―マラッセの上皮遺残の幹細胞―(2013/10/24)第31回 International Association for Dental Researchイグアスにて開催(2013/10/24)第30回 日本再生医療学会 横浜にて開催(2013/10/24)第29回 春の学会シーズン1―日本小児歯科学会-(2013/10/24)第28回 フォーサイス研究所にてセミナー「マラッセの上皮遺残細胞について」(2013/10/24)第27回 歯根膜組織由来および歯肉組織由来の間葉系幹細胞‐その2‐(2013/10/24)第26回 歯根膜組織由来および歯肉組織由来の間葉系幹細胞(2013/10/24)第25回 記事から引用:見捨てられる「歯科医」 特集:歯科医の「自然淘汰」を待つ厚労省"(2013/10/24)第24回 日本歯科基礎医学会 岐阜にて開催 (2013/10/24)第23回 歯科領域にもiPS研究が拡大。(2013/10/24)第22回 コラムを再び開始します。(2013/10/24)第21回 歯の上皮細胞の話 (2013/10/24)第20回 「培養皮膚」の完成(2013/10/24)第19回 「細胞培養」の話(2013/10/24)第18回 歯の再生 下顎骨内に歯胚才簿を移植すると?‐2‐(2013/10/24)第17回 歯の再生 下顎骨内に歯胚才簿を移植すると?(2013/10/24)第16回 歯の再生 胎生期歯胚細胞と担体を組み合わせた歯の再生研究2(2013/10/24)第15回 歯の再生‐胎生期歯胚細胞を担体を組み合わせた歯の再生研究‐(2013/10/24)第14回 歯の再生‐マウス歯胚組織と細胞を組み合わせた歯の再生‐その2‐(2013/10/24)第13回 マウス歯胚組織と細胞を組み合わせた歯の再生‐その1‐(2013/10/24)第12回 組織工学的手法による歯の再生 マウスの胎生期歯胚細胞を用いた歯の再生研究‐1‐(2013/10/24)第11回 組織工学的手法による歯の再生 -細胞の足場となる担体の話 第2話-(2013/10/24)第10回 組織工学的手法による歯の再生 -細胞の足場となる担体の話-(2013/10/24)第9回 組織工学的手法による歯の再生 -機械的刺激が歯胚細胞の分化を促進する-(2013/10/24)第8回 組織工学的手法による歯の再生-その4-(2013/10/24)第7回 組織工学的手法による歯の再生-その3-(2013/10/24)第6回 組織工学的手法による歯の再生-その2-(2013/10/24)第5回 組織工学的手法による歯の再生-その1-(2013/10/24)第4回 再生医学:歯の再生-1(2013/10/24)第3回 細胞の種といわれる幹細胞(2013/10/24)第2回 ティッシュエンジニアリングとは(2013/10/24)第1回 再生医学とは(2013/10/24)

新着ピックアップ


第112回歯科医師国家試験の総評と今後の展望

難易度高過ぎ!?現役歯科医師らが歯科医師国家試験に物申す

ガムを噛んで唾液を出すだけ!唾液検査用ガム

医療広告ガイドライン対策