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2013/10/24

第5回 組織工学的手法による歯の再生-その1-

今回からは、わたしが初めて取り組んだ歯の再生研究についてのお話しです。

 組織工学的手法とは、1980年代後期、ハーバード大学医学部教授のバカンティ先生と(Joseph P. Vacanti)とマサチューセッツ工科大学教授のランガー先生(Robert S. Langer)らが考案した方法で、生分解吸収性材料の担体(細胞の足場)と細胞とを組み合わせて移植組織を作るというものです。生分解吸収性材料は、吸収性の縫合糸をイメージしてください。つまり、吸収性の縫合糸に細胞が接着し、生体に移植すると、縫合糸は順次吸収してなくなり、その空間に細胞から組織が再生するという仕組みです。

 この組織工学的手法による歯の再生研究を米国のボストンにあるフォーサイス研究所にて、イェーリック(Pamela C. Yelick)先生を中心にバカンティ先生と共に始めました。これが2000年のことです。

写真1
写真2
写真3

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写真1:生後約6ヶ月のブタの顎骨
写真2:ブタの顎骨から取り出した埋伏大臼歯
写真3:取り出した歯胚をメスにて小片に細切する

 まずは、細胞の採取です。われわれが食用としているブタの下顎骨には(写真1)、埋伏している第3大臼歯があり、この歯の発生段階は歯冠形成期の前期 (写真2)。この時期の歯胚には歯胚上皮細胞と歯胚間葉細胞が存在しています。この歯胚を無菌的に下顎骨から取り出し、メスにて小片に細切します(写真3)。次に、細胞と細胞をつないでいる細胞外マトリックスを破壊するために、酵素を用いて、細胞と細胞を分離させて、細胞だけを回収します。次に、この採取した細胞だけを生分解吸収性ポリマーで作られたメッシュ状の担体(写真4)に蒔いて細胞がポリマーに接着するのを待ちます。細胞がポリマーに接着するには、細胞に栄養を与えながら、およそ2時間が必要です。

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写真4:
採取した細胞を播種する担体
(ポリグリコール酸で作られたメッシュ)

 

 そして、移植です。ブタの細胞を用いていることから、免疫拒絶を受けないために歯を取り出したブタに移植する必要がありますが、これはできません。そこで、免疫拒絶を受けない、胸腺を持たないマウスを用いました。このラットを用いると移植した細胞は免疫拒絶を受けずに生存できます。移植場所は腸を取り巻く血管に富んだ脂肪性の組織、大網です。この大網に担体を包み縫合します。あとは、歯ができることを祈るだけです。

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