第3回 レスポンデント行動
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前回の内容で行動療法は1)レスポンデント学習、2)オペラント学習、3)観察学習があるとお話ししました。今日はレスポンデント行動についてお話しします。
外的刺激に対する受動的で自動的に生じる反応をもとにして学習が成立(新しい行動の形成と消去)する場合をレスポンデント条件付け(respondent
conditioning)と呼び、後に考案されたオペラント条件付け対して古典的条件付け(classical conditioning)と言う。
パブロフの犬
古典的条件付けはパブロフによる条件付けで有名である。
犬に餌を与える直前にベルの音を聞かせることを何度も繰り返すと、やがてベルの音だけで犬は唾液を分泌するようになる。もともとは反応と関係のない刺激(条件刺激)を、反応を必ず生じる刺激(無条件刺激)と対にして反復して提示すると、次第に条件刺激のみで無条件反応が生じるものである。
I.レスポンデント条件付けの例
1:無条件反射:ある刺激が与えられると必ずある反応が起こる過程
1)犬に肉粉を与える → *無条件刺激(UCS:unconditioned
stimulus)
2)唾液が分泌される → *無条件反応(UCR:unconditioned
response)
2:条件反応:本来、その刺激を与えても起こらなかった反応を起こすような過程
1)ブザーを鳴らす → 中性刺激:ブザーで唾液反応は起こらない
2)肉粉を与える → 無条件刺激
3)唾液が分泌される→ 無条件反応
4)1)〜3)を繰り返すと
5)ブザーを鳴らす → *条件刺激(CS:conditioned
stimulus)
*反応は形成された後は、同じ刺激でも条件刺激となる
6)唾液が分泌される → *条件反応(CR:conditioned
response)
このようにこれまでになかった反応が習得(学習)されていくのである
古典的条件付けの図式化
3:レスポンデントの強化:無条件刺激と中性刺激とを対提示する操作
4:レスポンデント条件付け:レスポンデント強化の結果、中性刺激が条件刺激として条件反応を
作ること
II.レスポンデント条件付けの特徴
1:閾の法則:反応を触発するには、刺激の強度がある一定以上必要
例)子供が歯医者に行き、痛い思いをすると二度と行きたくない(条件付けされる)
2:潜時の法則:レスポンデント強化の回数が増すと条件反射は増加し、反応までの時間は徐々に短くなるが、ある一定以上の反応までに達するとそこに留まる
例)ブザーを鳴らす回数が増すと唾液は増加して反応時間が速くなる
3:反応量の法則:反応量は刺激の強度に依存し、刺激が強くなると反応量も多くなる
III.レスポンデント強化の型と特徴
無条件刺激と中性刺激とを対提示していく手続きを強化という、中性刺激と無条件刺激とを繰り返し対提示する時間を間隔と順序については次のことが言える。
1:同時強化:中性刺激提示後、5秒以内に無条件刺激が提示される
1)条件反射の形成が容易
2)実験では中性刺激と無条件刺激の間隔が0.5秒が最適
3)まったく同時では、条件反応は起きにくい
2:延滞刺激:中性刺激提示後数秒から数分間の間に無条件刺激を提示する
同時強化よりも条件反応の形成は遅いが、強化の過程で条件反応の形成が観察しやすい
3:痕跡強化:中性刺激終了後、ある時間を経過してから無条件刺激を提示する
延滞刺激と同様、観察はしやすいが、条件付けは比較的困難
このことから時間が経過すると効果がないことがわかる。
例)子供がいいことをしたらすぐに褒める、時間が経過してから褒めても効果がない、
4:時間条件付け:中性刺激を定間隔に提示する
定間隔提示の時間が条件刺激となり、条件反応を形成することがある。
例)学校に行きたくない時、朝、学校に行く時間になるとお腹が痛くなる(時間が条件付けされている)
5:逆行強化:中性刺激と無条件刺激の提示順を逆にした場合で、条件付けは起きにくい
IV.消去と自発的回復
1:レスポンデントの消去:条件付けが形成された際に、条件刺激だけを提示する、結果、形成された条件反応は次第に出現しなくなる
2:自発的回復:再び、条件刺激を提示すると条件反応が現れる
V.般 化
条件反応は、形成されると類似した別の刺激に対しての同様の反応をするようになる、これを般化という
ワトソン(Watson,J.B.)による11ヶ月児の実験は、恐怖症を人工的に作ったものとして有名である
1:子供が白いねずみに対して恐怖心は見られない
2:白いねずみを見ている時に、大きな音を鳴らす(条件付け)
3:白いねずみを恐れる
4:恐怖はひげをはやした人まで般化する
現実場面での古典的条件付けは、恐怖や不安の学習、薬、タバコ、食物といった物質や薬物への好みの形成などでみられる、古典的条件付けを利用した治療対象としては、恐怖、不安以外に薬物、アルコール依存、喫煙、夜尿症の問題などがある
パブロフの犬の実験は人間の行動を説明するための「刺激と反応のモデル」である。
受ける刺激に対して条件付けに基づき反応をしている、誰かがベルを鳴らし、そのベルの音を肉粉に連想すれば、人間も唾液を出すであろう。
用語解説
*無条件反応(UCR:unconditioned response)
無条件刺激にもともと備わった反応であり、もともと中立であった刺激への条件反応を確立するための基盤として用いられる
*無条件刺激(UCS:unconditioned stimulus)
あらかじめ条件付けをしないでも、反射などといった、自動的に反応を引き起こす刺激である
*条件反応(CR:conditioned response)
その反応をもともと引き起こされない刺激(条件刺激)に、学習され獲得された反応
*条件刺激(CS:conditioned stimulus)
無条件刺激にと関連づけられることによって、条件反応を引き起こすようになった、もともとは中立的な刺激
次回は「レスポンデント療法」についてお話しします
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