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本イベントのテーマは「スプリントが創造する未来 2 ―Sprint Now and Future―」。
「センシング × デジタル技工」が切り拓く歯科医療の新たな市場と共創の未来について、各分野のエキスパートによる最新の知見が共有されました。
第19回DNA特別懇談会 参加レポート
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人工冬眠が拓く医療応用 / 櫻井 武 先生(筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 副機構長)
最初の講演では、櫻井先生が睡眠のメカニズムと人工冬眠研究の最前線について解説されました。
睡眠は単なる休息ではなく「脳のメンテナンス」であると位置づけられ、ノンレム睡眠中に行われる老廃物の除去、シナプスの整理(刈り込み)、記憶の固定化など、具体的な役割が詳説されました。
さらに、入眠に重要な放熱と深部体温の低下という生理的プロセスに加え、エネルギー保存戦略である冬眠との本質的な違いについても解説。加えて、「Q神経」刺激による人工冬眠誘導の研究が紹介され、救急医療や重症患者管理への応用、さらには寿命延長への可能性といった将来展望も提示されました。
睡眠というテーマを起点に、健康管理の本質を生物学的視点から捉え直す、極めて示唆に富む内容となりました。
オーラルサーモが開く未来ー歯科からつなぐ健康の架け橋ー / 槇 宏太郎 先生(昭和医科大学 歯科病院長/特任教授)
二人目の登壇者である槇先生は、アライナー矯正の普及に伴う現状と、生体力学(バイオメカニクス)の視点から見た臨床課題を提起されました。
日本の歯科教育で不足している力学的診断の重要性が指摘され、シミュレーションと実際の挙動の乖離が招く咬合不全や歯根露出などの臨床的失敗例を具体的に提示。
併せて、客観的な装着時間や温度を計測できるセンサー「オーラルサーモ」が紹介され、口腔内から得られる生体情報を全身管理に活用する次世代の歯科の役割が提言されました。
睡眠歯科のNext Actionー睡眠改善という新たな歯科医療価値の創造ー / 奥野 健太郎 先生(大阪歯科大学 高齢者歯科学講座 講師)
続いて奥野先生は、歯科の次なるアクションとして睡眠歯科の重要性を強調されました。
約2,200万人の潜在患者が存在する睡眠時無呼吸症候群(OSA)を「ブルーオーシャン」と捉え、歯科が取り組むべき意義を解説。
気道の広がりを確認しながら顎位を決める「エアウェイ・ファースト」の手法が紹介され、自ら内視鏡を鼻腔へ挿入して気道の動きを実演された場面では、参加者のSNS投稿でも大きな反響を呼びました。
循環器内科等と連携して「食べる・眠る」の両面から全身の健康と人生を支える歯科の価値を説かれています。
Airwayを考慮した歯科治療 / 吉田 茂治 先生(パークサイドデンタルオフィス 院長)
講演の最後は吉田先生が登壇され、歯科における「気道(エアウェイ)」への配慮とOSA介入の重要性を詳述されました。
顔貌や口腔内の特徴からリスクを察知するスクリーニング法を示し、医科への積極的な紹介等による連携の必要性が強調され、3Dプリンターによる精密な装置製作やセンサーを用いた客観的な使用管理手法も提示されました。
補綴や矯正治療においても「気道を狭めない」包括的診療の在り方が提言され、歯科が全身の健康に貢献する新たな役割が具体的に示されました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、「デジタル技術とスプリントの活用」を軸に、臨床の最前線に即した議論が展開されました。
特に3Dプリンターを用いた装置製作については、デジタル化によって「トライアンドエラー」が容易になった点や、データの保持による「高い再現性」が歯科医療の質と利便性を高める大きな利点として強調されました。
また、スプリント使用に伴う咬合変化への対応として、毎朝の「リセット運動」を徹底し、患者自身が正しい咬合位置を再認識することが、安全な包括的診療を支える基盤であるとの認識が共有されています。
このほか会場からは、夢を忘れることで現実と混同しないようにする「忘却のメカニズム」や年齢別の必要睡眠時間といった生物学的側面から、矯正治療の保険制度の在り方、さらには「いびき再現のコツ」まで、多岐にわたる質問に対し活発な知見共有が行われました。
最後には、歯科が「食べる・眠る」という生命活動を支えることで、患者の人生そのものを変えうるという「歯科の価値」を再認識し、医科への積極的な紹介を含む連携を深めていくべきだという展望が示されました。
まとめ
本講演は、睡眠科学や生体力学を最新のデジタル技術と融合させることで、歯科医療が全身の健康管理で果たすべき「次なる役割」が鮮明に描かれていました。
口腔内から得られる客観的な生体情報は、全身疾患の予防に向けた医科歯科連携の新たな指標となり、生命活動の根幹である「食べる・眠る」を支える包括的診療を強力に後押しします。
患者のQOLと人生に寄り添い、全身の健康を支える歯科の社会的価値は、今後さらに高まっていくでしょう。
Dentwaveでは引き続き、歯科医療の最新トレンドを追い、皆様へ発信してまいります。


