コラム - 記事
本記事では歯科医院における予約キャンセルを分析し、その背後にある患者の行動心理を考察します。そしてキャンセル率を改善させるための具体的な方法をご紹介します。
“キャンセルが多い日”には共通点がある?患者の行動心理と予約キャンセル対策
予約キャンセルが発生するメカニズム
予約データを振り返ると、キャンセルが集中している日・時間帯にパターンが見えてくることがあります。
・主訴・予約の動機が不明瞭
ネット予約等の予約取得が容易なシステムを介した、「とりあえず予約を取ってみた」というような予約はキャンセルにつながりやすいです。患者としては「とりあえず枠を確保しておこう」という保険的な行動で、自身の状態に緊急性が無かったり予約後に症状が軽快したりすると、予約の価値が低下し、他の予定を優先しやすくなります。
カウンセリングや検査、クリーニングといった、診療内容が比較的簡単な予約において起こりやすいです。
・週の始まり・終わりや連休前後の予約である
月曜日の午前中や金曜日の午後といった週の始まりと終わりは、急な仕事の予定や家族との予定が入りやすいです。また土曜日や日曜日も、休日を家族との時間や他の用事に充てたいという思いと競合します。特に午後や夕方の時間帯はキャンセルされやすいです。同じく連休前日や連休明け初日も、連休直前の仕事や私用が押し込まれたり、連休中にプライベートや仕事の予定に変更が入ったりと、受診の予定が後回しにされがちです。
医療機関の受診は、患者の私生活における優先順位の問題であるため、特に休日の前後は他の予定と天秤にかけられやすいでしょう。
・予約した日と来院日が1週間以上離れている
患者の都合によるものだけでなく、治療計画等医院側の都合により次回が2週間後、1ヶ月後と少し先になった予約も、キャンセルが起こりやすいです。
来院予約に関わらず、人間は一般的に未来の出来事に対する価値・重要性を低く見積もりがちです。そのため予約日が遠いほどその重要性を感じにくく、直前のリマインドがあっても「面倒くさい」という心理が勝りやすいです。
・予約したことで満足してしまっている
予約システム上で希望の日時を確保した時点で、患者の「課題解決に向けた行動」の一部は完了します。特に症状が軽微な場合、予約取得という行動を起こしたことに安心し、実際の来院という次の行動へのモチベーションが低下しがちです。
・治療内容に対する期待値の変化
初診や急患の患者であれば、来院前の不安や痛みがピークのときは、歯科医院に対する期待値も非常に高いです。しかし例えば初診で取り急ぎ鎮痛剤を処方され、痛みが引くと、期待値は急降下します。
再診や治療中の患者であれば、治療が進むにつれて痛みや症状が緩和し「もうほとんど治った」という自己判断や油断が生じ、通院を継続する意味を見出しにくくなります。歯科医院側からすると治療途中でも、患者にとっては「症状が無い状態」であれば、予約キャンセルの大きな要因となります。
予約キャンセルを減少させる具体的な方法
予約キャンセル対策は、単なるリマインド業務の強化ではなく、これまで述べてきた患者の行動心理に沿って対処していくことでより効果を期待できます。
・予約の質を高めるための対応を徹底
まずは予約取得時の動機付けを明確にするため、「来院の際に行うこと」「来院されないと患者にとってどういったデメリットがあるのか」を伝えるようにします。
<電話予約での例>
「〇〇様、2週間後の予約ですね。その日は虫歯治療を完了させるための、重要な工程を行う予定です。現状のままだといずれ再治療になるリスクが高まってしまうため、忘れずにお越しください。」
ネット予約であれば、例えば予約の確定メール内に来院の重要性を強調した内容を盛り込むようにします。
また初診時あるいは治療の開始時に、患者にもわかるような簡単な治療計画書を渡し、治療の全体像や通院回数、ゴールを明確に示しておくのも一つの方法です。これにより、患者の「治療完了への意欲」を維持させることができ、治療の中断を防ぐことができます。
・効果を最大化するタイミングでのリマインド送信
一律のリマインドではなく、来院日から逆算して内容を変えたリマインドを送信します。具体的には以下のような内容です。
●予約・来院日の5〜7日前
○リマインドの目的・内容:予約日を再認識させ、他の予定との競合を避ける
○リマインド方法:SMSまたはアプリ通知で簡潔に日時と場所を通知
●予約・来院日の前日
○リマインドの目的・内容:来院の最終確認を行い、キャンセルすべきか否かを本人に最終判断させる
○リマインド方法:メールまたはLINE等の双方向コミュニケーションツールを使い、「来られない場合は本メッセージに「キャンセル」と返信してください」等と患者にアクションを促す。これにより患者の主体性が高まり、これ以降のキャンセルはしづらくなる
●予約・来院日の当日朝
○リマインドの目的・内容:忘れ物防止、最後のひと押しで来院への勢いをつける
○リマインド方法:メールまたはLINE等で、持ち物の確認や医院へのアクセス方法等実用的な情報を添える
・予約キャンセルが出たらすぐ埋められるようにしておく
予約キャンセルが出てしまったときに、他の患者ですぐに埋められればダメージを最小限にすることができます。予約キャンセルをゼロにすることはほぼ不可能ですが、空いた枠を迅速に埋めるシステム構築は比較的容易に行えます。
例えば「キャンセル待ちリスト(=希望の日時が空いていない患者リスト)」を作成しておき、患者からの問い合わせ時にすぐに組み替えられるようにしておきます。本リストだけであれば、エクセルで簡単に作ることができます。
ただエクセルよりさらに効率が良いのは、ネット予約システムと連動させ、キャンセルが出た瞬間に該当患者へ自動通知が届く仕組みを導入することでしょう。医院によっては新しくシステムを導入することになり初めは負担に感じるかもしれませんが、手作業でエクセルを管理するよりかなり手間を省けるため、後々楽になるでしょう。
加えて、スタッフの対応フローを整えておくことも重要です。例えば「受付スタッフは、予約キャンセルが出たらすぐにリストの上位3名に電話連絡する」等のマニュアルを作成しておけば、スタッフは迷うことなく迅速に行動できます。
まとめ
歯科医師とスタッフ全員が、「予約キャンセル=患者の健康を遠ざける行為」と捉え、患者の行動心理を考慮したアプローチを行うことで、予約キャンセルの減少につながります。まずは自院の予約データを振り返り、本記事の「予約キャンセルが発生するメカニズム」に当てはまりそうなものがないかを確認してみてください。




