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2025年9月23日に開催された株式会社ヨシダ主催の「3D Next in JAPAN」は、200名を超える歯科医療従事者が集う盛大なイベントとなりました。
本イベントでは、国内外の著名な専門家による最新の知見や臨床事例が共有され、総勢16名が登壇しました。
Dentwaveではこの多岐にわたる講演の中から、特に注目すべきセッションを実施した登壇者に焦点を当てご紹介します。

3D Next in JAPAN 参加レポート

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世界の歯科医院でのデジタル化の潮流 / 山中 一剛 社長(株式会社ヨシダ)

本イベントは、赤坂インターシティAIRにて開催され、山中社長による「世界の歯科医院でのデジタル化の潮流とヨシダのSprintRayとの出会い」からスタートいたしました。
3Dプリンタ会社SprintRay社との出会いから、欧米の教育機関や専門医での普及状況を紹介。歯科に特化した、機械、材料、IT、AIをすべて内製化している同社の強みを解説。
また、日本市場への適合性を確認するため、国内の大学や学会との連携による研究準備を進めていると述べられました。

グローバル戦略展開説明 / エリック・クライドラー社長(SprintRay社)

続いて「Biomaterial Age」の到来と歯科医療の未来というテーマでSprintRay社のエリック・クライドラー社長が登壇。
SprintRayは、創業以来歯科装置の3Dプリンタの販売実績を急速に伸ばし90カ国で展開しており、シンプルで知的な技術、およびハード・ソフトウェア・マテリアルの統合開発を強みとしています。AI活用によるワークフローの高速化や、適切なスマイルを提供する歯科界の変革の必要性が提唱され、多くの歯科医師が関心を持っていました。その中で、日本市場はヨシダとの連携で進められていることが強く訴求され、今後もグローバルな展開を見込んでいるようです。

アメリカでの 3Dプリンター臨床活用状況 / スティーブン・シャオ先生

次に、スティーブン・シャオ先生より「デジタル歯科の新時代と日本の役割」についてご講演。
NTD*とデジタル技術により不可能を必然に変えるというビジョンを提示し、院内3Dプリンティングで製作時間の短縮・コストの抑制が可能であると解説されました。また、日本がデジタル歯科の法整備で世界をリードしていることが強調され、SprintRayの最新技術・日本の文化から得た審美性のインスピレーションについても紹介されました。
 *NTD…New Type dentist(ただ最新のデジタル技術を使うだけでなく、デジタル技術を用いて効率と革新を追及する医師)

インプラント治療における 3D プリンターの活用 / 梅田 和徳 先生

3名のご登壇が終了後は、3つのセミナールームに分かれ、座長によって講演が進行いたしました。
セミナールーム「the AIR 1」にて最初に登壇されたのは、梅田和徳先生。「インプラント治療における3Dプリンターの活用」について解説されました。
歯科デジタル化が進む中、低侵襲補綴のため形成量を抑える必要性を強調し、スキャナー活用には、アナログ時代のコンセプト変更が必須と指摘。
ジルコニアのリスクを踏まえ、除去を前提とした3Dプリントクラウンに期待を寄せました。抜歯即時埋入時のカスタムアバットメントの重要性を示し、デジタル時代に合わせた治療法の見直しを促しています。

3Dプリンティングの 臨床応用と口腔内スキャナーとの 統合ワークフロー / 北道 敏行 先生

次に、セミナールーム「the Amphitheater」では「3Dプリンティングの臨床応用と口腔内スキャナーの統合ワークフロー」について北道先生が解説。
講演では、院内3Dプリンティングは即日修復や患者満足度向上に有用で、インレーやスプリント製作で高い適合性を示し、高精度造形は385nmの短波長LED光源が有利である旨を強調されました。また、積層造形特有の「ステアステップ効果」対策として、造形物の設置角度(ネスティング)の工夫が重要だと解説します。接着プロトコルについては、グラスセラミックスと同様でアドヒシブデザインの形成も重要とのことでした。

デジタルの入り口としてのIOS、出口としての3Dプリンター / 白﨑 俊 先生

セミナールーム「the Green 1」では、白﨑先生が「デジタルワークフローと3Dプリンターの活用法」を講演。
コンサルの質と意思決定のスピード向上のため、情報共有の重要性を強調しました。購買行動の心理学の変遷を引き合いに出し、3Dプリンターの価値は単なる模型代替ではなく、「共感と拡散」を得る活用にあると主張。
具体的な症例やスポーツ分野での活用を提示し、デジタル技術の導入は「産業革命」として不可避であると語られました。

3D プリントが拓く補綴の未来 / 草間 幸夫 先生

後半戦では、草間先生が「3Dプリンターが開く補綴の未来」をテーマに、デジタル化のトレンドとしてミリングからプリンティングへの転換を解説されました。
特に、院内での即日修復に特化した「スプリントレイ Pro2/マイダス」の優位性、高強度ハイブリッド素材「セラミックレジン」や「OnX」といった新素材の臨床応用について詳しく紹介。
さらに、ワンビジットトリートメントの重要性を強調され、3Dプリンターによる修復物の優位性を具体的な症例を交えて説明されました。

前歯部審美領域における 3Dプリンター活用による即時埋入 / 鈴木 仙一 先生

講演のトリを飾ったのは、「3Dプリンターを活用したデジタル歯科ワークフロー」を講演された鈴木先生。
歯科医師不足や歯科技工士不足といった課題に対し、デジタル機器の導入が解決策となると主張されています。特に3Dプリンターを用いた院内技工により、作業効率と生産性が向上し、コスト削減や治療スピード向上につながることを強調されました。
模型、サージカルガイド、最終補綴物など、様々な臨床での活用例と、ミリングマシンとの比較も紹介されました。

パネルディスカッション

最後に、セミナールーム「the AIR 2」にてパネルディスカッションが展開。
デジタル歯科の現状と未来・アメリカの歯科市場における機器の導入率・3Dプリンターの活用イメージ等が紹介されました。
参加者からの質問もあり、SprintRayの製品開発の方向性・AIの医療機器承認におけるハードル・チタン・ジルコニアなどの材料開発等、多岐にわたって質疑応答がなされ、活発な意見交換が行われました。

編集部まとめ

このイベントは、歯科医療全般におけるデジタル化の浸透と、それに伴うワークフローの劇的な効率化を実感させるものでした。
デジタル3D技術は診断から補綴物作製まで不可欠であり、技術革新の波が臨床と技工の両面で進む中、教育や技工士との連携の重要性も、今後さらに加速していくのではないでしょうか。
Dentwaveでは引き続き歯科業界のトレンドを追い、皆様に展開してまいります。