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広島大学大学院医系科学研究科(脳神経内科学)の山村隆客員教授、石井良和助教、および国立精神・神経医療研究センター(NCNP)らの共同研究グループは、歯周病の主要な病原菌の一つであるFusobacterium nucleatumが、多発性硬化症(MS)患者の身体障害の重症度と密接に相関していることを明らかにしました。
歯科介入が難病治療の新戦略に? 多発性硬化症の障害進行に口腔内ディスバイオーシスが関与
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舌苔におけるF. nucleatumの占有率が身体障害(EDSS)と正の相関
本研究では、NCNP病院等を受診した多発性硬化症患者と健常者を対象に、次世代シーケンサーを用いた16S rRNA解析を実施。
MS患者の舌苔(舌背細菌叢)においてF. nucleatumが有意に増加していることを特定しました。
特筆すべきは、同菌の相対的な占有率が高いほど、MSの身体障害度を示す指標であるEDSS(総合障害度評価尺度)スコアが高いという強い相関関係が認められた点です。
これは、口腔内のディスバイオーシスが中枢神経系の病態進行を反映、あるいは助長している可能性を示唆しています。
口腔・腸内細菌叢のクロストークと神経炎症の増幅機序
F. nucleatumは、高いバイオフィルム形成能や細胞侵入能を持つだけでなく、血液脳関門(BBB)の透過性亢進にも関与するとされる、極めて侵襲性の高い細菌です。
今回の研究では、口腔内での同菌の増加が腸内細菌叢の変化や全身的な免疫応答(特に自己免疫性炎症に関わるTh17細胞の誘導など)を介して、中枢神経系の脱髄病変を悪化させる一因となっている可能性が示されました。
歯科疾患が単なる局所炎症に留まらず、難病の増悪因子(Environmental Factor)として機能している実態が浮き彫りになっています。
歯科介入が難病管理の「第3の選択肢」となる可能性
本研究成果は、従来の薬物療法に加え、「口腔内の菌叢制御」がMSの新たな治療ターゲットになり得ることを提示しました。
舌苔の清掃や専門的口腔清掃によるF. nucleatumの定量的コントロールが、MS患者の神経症状の進行抑制やQOL維持に寄与する可能性が期待されています。
今後歯科医師には、神経内科医と連携した「予防的口腔管理」という、より高度な全身管理への参画が求められることになるのではないでしょうか。
まとめ
広島大学やNCNPらの研究により、舌苔中のF. nucleatumが多発性硬化症の重症化に関与していることが判明しました。口腔環境を整えることが神経難病の進行抑制に寄与する可能性を示した今回の成果は、歯科医療の価値をさらに高めるものです。
予防歯科が全身の健康管理に果たす役割について、Dentwaveでは今後のさらなる進展を注視してまいります。




