【2024】補綴物(マテリアル)の材質と特徴一覧

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補綴物の材質の決定は、歯科医師と患者の両者にとって重要なものです。技術の進歩により補綴物は多様化し、それぞれが独自の特性を持っています。本記事では、補綴物の主要な材質とその特徴を解説します。

保険適用の補綴物

保険が適用される補綴物は以下の3つです。

  • 金属インレー・クラウン
  • CAD/CAMインレー・クラウン
  • 硬質レジン前装冠

金属インレー・クラウン

「メタルインレー」「FMC」等とも呼ばれる金属インレー・クラウンは、文字通り金属を材料として作製されたものです。
メリット
保険が適用されるため、患者さんとしては費用の負担が少なくて済みます。また金属であるため強度が高く、耐久性も高いと言えます。
デメリット
見た目が銀色であるため審美性が高いとは言えません。また金属アレルギーをお持ちの方はもちろん使うことができません。セット時には金属アレルギーでなくても、長期的に口腔内に金属があることで将来的に金属アレルギーを発症する可能性があります。

加えて長期使用により金属イオンが溶け出し、歯肉の一部が黒く変色することもあります。

CAD/CAMインレー・クラウン

CAD/CAMインレー・クラウンは「CAD/CAMシステムを用いて製作したインレー・クラウン」のことで、材質や素材ではなく製作方法による分類・呼び方です。言い換えれば、同じ「CAD/CAM冠」でも、材質や素材によって大きく2つに分けられます。

1つは従来の材質で、ハイブリッドレジンと呼ばれる、レジンとセラミックを混ぜ合わせたものです。もう1つは「CAD/CAM冠用材料V」とも呼ばれる、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)という材質です。これにより製作されたCAD/CAM冠は「PEEK冠」とも呼ばれます。そのため、混同されることが多いですがCAD/CAM冠=PEEK冠ではなく、厳密には「PEEK冠はCAD/CAM冠のうちの一種」ということです。

2023年12月に、PEEK冠がすべての大臼歯において保険適用となりました。これにより、他のCAD/CAM冠用材料(I〜IV)と組み合わせることで、現状すべての歯牙において保険適用でCAD/CAM冠を入れることができます。

また比較的新しい補綴物であるエンドクラウンも、大臼歯において保険が適用されます。
メリット
保険が適用されたため、比較的安価に審美性の高い歯を入れられるようになりました。また同じく保険が適用される金属インレー・クラウンと比較して歯との適合が良いため、う蝕や歯周病のリスクが低いと言えます。
デメリット
素材としての強度が高くないため厚みを持たせる必要があり、これは歯の切削量が多いことを意味します。なおPEEK冠はこの限りではありません。金属と同じくらい薄く製作することができます。

また長期間の使用による着色・変色が起こりやすいです。加えてPEEK冠は白ですが、少し不自然であるためかえって目立つことも考えられます。

硬質レジン前装冠

舌側面やクラウンの内部は金属のまま、他人から見える唇側面にのみレジンを付与し審美性を良くしたものです。
メリット
金属とレジン両方の特長を享受できるため、強度や耐久性は高いまま審美性も確保することができます。
デメリット
メリットの逆で、金属とレジン両方のデメリットを享受してしまいます。具体的には金属アレルギーのリスクや、長期使用による着色・変色等です。またレジンが付与されているのは一部のみであるため、笑ったとき等に金属面が見えてしまうことがあります。

自費/保険適用外の補綴物

保険が適用されない、自費診療となる補綴物は以下の2つです。

  • ゴールドインレー・クラウン
  • セラミックインレー・クラウン

ゴールドインレー・クラウン

貴金属を材料として製作するもので、見た目は金色をしています。
メリット
金属であるため、保険の金属インレー・クラウンと同様強度が高く、耐久性も高いです。セラミックよりも寿命が長く、金属アレルギーは比較的生じにくいともされています。
デメリット
見た目が金色であるため、笑ったときに目立ちやすいでしょう。また保険適用外であることも、患者さんにとっては負担が大きいと言えます。

セラミックインレー・クラウン

セラミックインレー・クラウンは、その素材や材質によってさまざまな種類があります。
材質・素材 特徴
オールセラミック 文字通り100%セラミックのもの
ジルコニア歯科用セラミックの中でも非常に高い強度を有する素材であり、臼歯部やブリッジなど咬合力が強くかかる部位にも使用可能
メタルボンド 金属の周囲にセラミックを焼き付けたもの
e-max セラミックの一種であるガラスセラミックスを強化した素材
ハイブリッド セラミックとレジンを混ぜ合わせた素材
メリット
材質・素材によって異なりますが、総じて言えるのは審美性が高く、天然歯に近い透明感・ツヤ・色調を再現できるという点です。また長期的に使用しても変形や変色が起こりにくく、傷も付きにくいため、審美性の低下やう蝕・歯周病のリスクが低いと言えます。メタルボンド以外は、金属アレルギーの心配もありません。
デメリット
臼歯部など強い力のかかる部位では、瞬間的に強い力がかかったときに割れる可能性があります。そのため先述の通り、そういった部位にはジルコニア等強度の高いものを使用しましょう。また自費診療であるため、患者さんには負担がかかりやすいという点も考慮しなければいけません。

まとめ

保補綴治療において、材料の選択は患者の満足度を大きく左右します。患者さん一人ひとりのニーズに合った提案をするために、本記事を活用してみてください。
ミホ
執筆 ミホ
東京医科歯科大学卒業後、都内歯科大学病院に勤務。退職後はフリーランスの「歯科衛生士ライター」として活動し、ライターの指導や教育、ディレクションも行う。自身で制作・運営を行なっていた歯科メディアは販売を達成。大学の卒業研究では日本歯科衛生学会の学生研究賞(ライオン歯科衛生研究所賞)を受賞。現在はDentalMonitoringJapanに勤務し、2児の母でもある。
Instagram:@toothteethtokyo
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