中医協答申の歯科的評価:在宅・地域医療に貢献・期待として一定の評価
中医協総会が2月7日に開催され、2018年度の診療報酬改定の諮問に対し、厚労大臣に答申した。医科では、在宅医療、遠隔医療の推進、地域医療の充実化として病診・診診連携の強化、病院機能の明確化などに重点をおいて点数反映がされた。答申後に、日医・日歯・日薬の三師会合同記者会見が開催され、堀憲郎・日歯会長は、「改定率の時点では60点という評価で、限られた財源の中では、70~75点という評価ができたと思う。“口腔の機能の維持、向上に資する歯科医療”と“国際的に見て低く抑えられている歯科医療への対応”という二つの主張が重点課題であった。かかりつけ歯科医機能について整理がされたが、今後も引き続き具体的な方向性の検討が必要であり、段階的な対応を求めていく」とコメントを残した。その他、歯科の立場から懸念している“医科歯科連携”にも言及し、患者の診療情報を共有する「診療情報連携共有料」の新設などを評価した。
歯科におけるその方向性を示唆するものとして、“治療管理連携型等の追加”“周術期と医科の加算等の対象疾病の整合性の確保”“医科歯科連携促進として医科への照会を評価する歯科医療機関連携加算にある対象を歯援診から拡充”などがあり、特に“か強診”の施設基準の見直しが一目を置いた。“外来環より点数が低いが基本診療料に加算する感染症対策の施設基準を作成”“上記施設基準を届出できない医療機関の基本診療料を引き下げる”“歯管の対象に小児や高齢者などの口腔管理を含める”などが新たに見直された。
地域包括ケアシステムの理解や浸透を図る上で、在宅復帰の機能をより推進するために必要とされる医科と歯科の連携推進の観点から、以下の内容が追加された。診療情報提供料として歯科医療機関連携加算を算定できる歯科医療機関に、在宅療養支援歯科診療所以外の歯科訪問診療を実施する歯科医療機関を追加するとともに、対象患者に摂食機能障害の患者を追加する。歯科診療を行う上で必要な診療情報や処方内容等の診療情報をかかりつけ歯科医とかかりつけ医との間で共有した場合の評価をそれぞれ新設(120点)した。
さらに質の高い在宅歯科医療の提供体制を確保するため、以下のような見直しを行う。 ① 歯科訪問診療料及び在宅患者等急性歯科疾患対応加算等の加算について、実態に合わせた評価となるよう見直す。②在宅歯科医療における関係者との連携を推進する観点から、地域の医療や介護関係者との連携実績を施設基準に追加する等、在宅療養支援歯科診療所等の評価を見直す。具体的に、歯科訪問診療移行加算(150点)、在宅療養患者専門的口腔衛生処置(120点)、小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導加算(450点)などが新設された。また、検査関係では、咀嚼能力検査(140点)、咬合圧検査(130点)、精密触感機能検査(450点)等が新設され、今後の推移に注目されそうだ。なお、『答申書附帯意見』として、歯科に関係するものとして以下のことが明記された。
外来医療、在宅医療、かかりつけ機能:外来医療の在り方に係る今後の方向性を踏まえ、紹介状なしで大病院を受診した場合の定額負担の対象医療機関の範囲拡大、地域包括診療料等の見直し、かかりつけ医機能を有する医療機関の新たな評価等の影響を調査し、かかりつけ医機能を有する医療機関と専門医療機関との機能分化・連携強化に資する評価の在り方について引き続き検討すること。かかりつけ医機能を有する医療機関を含む在宅医療の提供体制の確保や、個々の患者の特性に応じた質の高い在宅医療と訪問看護の推進に資する評価の在り方について、歯科訪問診療や在宅薬学管理を含め、引き続き検討すること。
歯科診療報酬:かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の評価の見直しによる影響や、歯科疾患管理料に係る加算の新設の影響及び継続的管理の実施状況等を調査し、かかりつけ歯科医の機能の評価や口腔疾患の継続的な管理の在り方について引き続き検討すること。院内感染対策に係る初診料・再診料の見直しの影響を把握し、院内感染対策の推進に資する評価の在り方について引き続き検討すること。
歯科診療所・歯科医師として、“か強診”が歯科全体の中でどのような位置付けになるのか既に議論されているが、その“算定要件”に議論が集中してくるだろう。
病院関連事項も以下に付言しておく。
① 脳血管疾患等の手術を実施した患者で、術後の誤嚥性肺炎のリスクが高い患者や低栄養状態等の患者について、術後早期に口腔機能管理を開始した場合は周術期口腔機能管理計画策定料及び周術期口腔機能管理料の対象となるように見直し。 ② 周術期口腔機能管理後手術加算の対象手術に造血幹細胞移植等の追加。 ③地域歯科診療支援病院歯科初診料の施設基準について、周術期口腔機能管理の実績が選択可能な要件の一つとなった。この分野の日本口腔外科学会役員の一人は、「病院歯科としての機能があるが、病診・医科歯科連携の窓口という意識は有している。地域歯科医療の展開では開業歯科医師の機能を展開しながら病院・口腔外科との意思疎通は確保していきたい」とコメントしている。
今後、日歯・日歯学会が今回の改定評価を報告していくのか注目される。改定の背景とその意味などの情報を含め、会員各位への理解が問われてくる。かつて、厚労省歯科保健課が意欲的に取り込んだ改定項目の反応が意外に鈍いことで、日歯と厚労省の間で険悪な関係になったケースがあった。将来を見据えた診療報酬改定の布石を打った改定であると期待している。
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