第1回:近年の歯科医師国家試験をぶった斬る!
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昨今、歯科医師国家試験の難化が叫ばれて久しい。残念ながら、その事実は認めざるをえない。また、歯科医師国家試験の難化に伴い、大学側も進級・卒業試験をより難しくする傾向にあり、低学年からの留年者が増加している。
このような話が上がっているのを耳にしたことはあれど、資格習得後に実際の試験問題を目にする機会は少ないのではないだろうか。今コラムでは、近年の実際の問題をもとに、数回にわたり昨今の国家試験事情を解説していきたい。
例題1(108D-18)
2歳1か月の男児。外傷により歯が折れたことを主訴として来院した。1時間前に居間で転倒したという。患児はDown 症候群で心疾患はなく、アレルギーの既往もないという。初診時の口腔内写真(写真A)とエックス線写真(別冊No.18B)を別に示す。治療の際、行うべきなのはどれか。1つ選べ。
- 頸部の過後屈防止
- 抗菌薬の術前投与
- 反射抑制体位の応用
- タイムアウト法の使用
- 血管収縮薬無添加局所麻酔薬の使用



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解答:a
ケース1:医学分野への知識の拡充
本問は、一見何の変哲も無いDown症の問題に見える。今までの国家試験でもDown症は頻出である。Down症の症状として、以下の特徴がある。
- 21トリソミー
- 両眼解離・つり眼・鞍鼻 などの特徴的顔貌
- 口蓋裂・高口蓋
- 溝状舌・巨大舌
- 精神遅滞
- 易感染性
- 手掌猿線
- 先天性心疾患
- 環椎・軸椎が不安定なことによる頚椎亜脱臼のリスク
- 高い歯周疾患リスク
- 矮小歯・円錐歯・形成不全・歯の先天欠如・萌出遅延
- 上顎劣成長とそれに伴う反対咬合
今までの国家試験では、主に口腔内領域に焦点を当てた問題が中心であり、歯科治療で注意すべきすることとして「易感染性に注意する」ということが96回国家試験で出題されている。
今回の問題の特徴として、Down症の環椎・軸椎が不安定なことが題意にされていること、そのことから注意すべきことを想起する必要のある問題となっていることである。軸椎・環椎が不安定であるという事実を知らなかった学生は、「易感染性」「先天性心疾患」より「b.術前の抗菌薬投与」を選択したものと思われる。なお、この問題は前年の医師国家試験の問題を参考にしていると推測される。
(第109回D-43)9歳の女児。歩行時の下肢痛を主訴に母親に連れられて来院した。1か月前から歩行時に両大腿から股関節部に疼痛があるため受診した。Down 症候群がある。股関節の変形障害に対し手術予定となった。術前検査として撮影した頸椎エックス線写真(写真は割愛)を別に示す。所見として正しいのはどれか。
解答:b
- 頸椎椎間板ヘルニア
- 環軸関節亜脱臼
- 後縦靱帯骨化症
- 黄色靱帯骨化症
- 頸椎症
今回の問題をまとめると、
- 歯科的知識だけではなく、医学的知識も要求されつつある
- 単純想起型問題の割合が減少し、思考型の問題へシフトしつつある
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